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ラファメア・プロテクション  作者: あおいきりん
1*メア族と旅のはじまり
4/92

いたずらモンスターの調査

翌朝。


マ「…ン~、ムニャムニャ…。」


ロ「…。」


まだ薄暗い明け方、熟睡するマオに顔を蹴られ、ロードは目を覚ました。


起き上がり、常用のメガネを掛けて辺りを見回すと、ディムアが窓の外の海を眺めていた。


ロ「おはようございます。早い起床ですね。」


ディムアの隣に座り、声を掛ける。


デ「…ほとんど眠れなかった。」


ロードに一瞬視線を向けた後、すぐ下を向き、小さく呟く。


ロ「仕方ないですよ。昨日までと環境が全く違うでしょうから。」


デ「…やっぱり、私にはこういう場所は合わないんだ。帰る。」


ロ「帰っても、常に危険が付きまとって、余計眠れない日々になると思いますよ。」


デ「…。」


ロードの言葉に、ディムアは何も返せない。


ロ「きっとすぐ慣れますよ。頑張りましょう。」


デ「…はぁ。」


ディムアはため息をつく。




マオも起き、朝食を済ませ、三人は宿を出た。


ロ「早速出発しようと思うのですが、その前に、ディムアに聞きたいことがあります。」


デ「…ん?」


ロードに声をかけられ、ディムアはきょとんとする。


ロ「闇の魔力は、メア族しか持たないものだと僕は予想しているのですが、どうですか?」


デ「…まぁ、メア族は必ず持っているようだが、メア族だけなのかはわからない。」


曖昧な回答を、ディムアはする。


マ「確かに、闇魔法なんて使ってる人、今まで見たことないよ。メア族特有の魔力なのかな?」


少し考え、マオは言う。


ロ「そうですね。そのように考えると、ディムアは極力闇魔法を使わない方が安全だと思います。」


マ「闇魔法を使わなければ、メア族だと知られないから?」


ロ「そういうことです。」


ロードは頷く。


デ「…闇魔法を使うなって…。」


二人の会話を聞き、ディムアは困惑する。


ロ「基本のマジックアローは唱えられますか?」


デ「それくらいなら出来ると思うが…。」


戸惑いながら、ディムアは頷く。


ロ「フィールドに出たら、無属性魔法だけでモンスターと戦ってみてください。」


デ「…わかった。」




3人は、コーラルビーチのインフォメーションに来た。


カバリア島の地図や、各地域のパンフレットが置いてある。


ロ「…マオ、ここにある資料を全てインプットしてもらえますか?」


マ「うん、了解!」


ロードの指示に、マオは張り切って頷き、資料を片っ端から読み込み始める。


デ「…?なんか機械音が聞こえるが…。」


ディムアは、マオを不思議そうに見つめる。


ロ「マオは小動物型のAIなんです。どんな膨大な量のデータも保存可能なんですよ。」


デ「そ、そうなのか…。」


ロードの説明を聞き、ディムアは目が点になる。


ロ「地図やパンフレットを持たなくても、マオに読み込んでもらえば、知りたい情報をすぐに教えてくれますよ。とても優秀なんです。」


デ「ふーん…。」


マオのことは、ディムアには興味がないようだった。


マ「…よし!インプット完了したよ。」


ロ「ありがとうございます。この島の都心部はどこですか?」


マ「…都心部は〝メガロポリス〟という場所みたいだよ。」


3人は地図を見る。


ロ「メガロポリスですか。ここからそれ程離れていないですね。まずはそこを目指しましょう。」


マ「オッケー!」


マオは元気よく頷いた。


「あの、すみません!財布の落し物とか届いてませんか!?」


慌てたような女性の声が聞こえ、3人は視線を向ける。


係「お財布ですか…。いつ頃落とされました?」


インフォメーションの係員は、女性に尋ねる。


「えぇっと、朝出かけてきたときは確かに持ってたから…落としてからまだ1時間も経っていないと思うんですけど…。」


係「今日はお財布は届いてないですね…。申し訳ございません。」


係員は、頭を下げた。


「…そうですか…。」


女性は落胆し、インフォメーションをトボトボと離れる。


係「…また例のモンスターが盗っていったのかしら?」


係「そうかもしれないわね…。もう、止めてもらいたいわ…。」


2人の係員は、そうひそひそと話す。


ロ「…少々よろしいですか?」


係「あ、いらっしゃいませー!どうされましたか?」


その2人に歩み寄り、ロードは声を掛ける。


ロ「その『例のモンスター』のこと、詳しく教えていただけないでしょうか?」


係「あ…えぇと…。」


係員の2人は、戸惑った様子で視線を合わせる。


マ「ロード、お姉さんたち困ってるよ。」


マオはロードに耳打ちをする。


ロ「…突然失礼しました。日常的に泥棒のような悪さをしているモンスターがいるのなら、僕たちが懲らしめに行こうと思いまして。」


ロードは言い、小さく笑う。


係「それはとても助かりますが、危険かもしれませんよ…?」


ロ「大丈夫です。自己責任で行くので、心配しないでください。」


遠慮がちに言う係員に、ロードは即答する。


係「…ありがとうございます。例のモンスターとは、コーラルビーチのフィールドに生息する〝ぬすっとモンキー〟というモンスターです。」


マ「ぬすっとモンキー?もう名前からして嫌な感じだね!」


係員が口にしたモンスターの名前を聞き、マオは苦笑いを浮かべる。


係「はい。名前の通り、盗っ人のお猿さんなんですけど、最近フィールドから街に侵入してきて、街にいる人のいろいろな物を盗んでしまうんです。」


ロ「なるほど…それは悪質ですね。わかりました。行ってきてみます。」


係員の話を聞き終えると、ロードはそう返す。


係「あ、気を付けてくださいね!」


ロ「はい、大丈夫です。」


係員に見送られ、ロードはディムアとマオとともにインフォメーションを後にした。




街を出た3人は、コーラルビーチのフィールドへ出た。


マ「カバリア島で初めてフィールドに出たよー!」


ロ「そうですね。この島にはどんなモンスターがいるのか、楽しみです。」


デ「…。」


わくわくしている様子のロードとマオの隣で、ディムアは落ち着かない様子で、フィールドを見渡している。


マ「ちなみに、オレはモンスターのデータの情報もインプットしてあるから、初めてのモンスターと遭遇したときは名前、耐性、弱点を説明するからよく聞いてね!」


ロ「助かります。よろしくお願いしますね。」


得意気に話すマオに、ロードは微笑みを見せて返す。


マ「…ほら!あそこにモンスターがいるよ!」


近くにモンスターを見つけ、マオは指をさした。


ロ「モンスターですね。…では、早速ディムアに戦ってもらいましょう。」


デ「…え?」


唐突にロードに声を掛けられ、ディムアは戸惑っている。


ロ「先程説明した通り、闇属性の魔法は使わず、無属性魔法だけで戦ってくださいね。」


デ「…わかった…。」


小さく息をついたディムアは、砂浜を散歩しているモンスターを凝視し、杖を構える。


マ「あ、この猫みたいな耳の生えたモンスターは〝トロビー〟だよ。耐性も弱点もないよ!見た目は可愛いけど、油断すると怪我しちゃうかも?」


少し意地悪そうな笑みを浮かべ、マオは目の前のモンスターの説明をした。


ロ「見た目に騙されないように、ということですね。」


マ「そうそう!」


デ「…。」


ロードとマオのやり取りを聞きながら、ディムアは詠唱を終え、マジックアローを唱えた。


ディムアが突き出した杖から、魔力で生成された光る矢が出現し、トロビーに飛んでいき、突き刺した。


ト「ビィッ!?」


トロビーは鳴き声を上げ、怒った様子でディムアに急接近してきた。


デ「っ!」


トロビーの反撃に、ディムアは一瞬動揺したが、飛び掛かってくる直前にもう一度放ったマジックアローが直撃すると、トロビーは倒れた。


ト「ビィー…。」


力尽きたトロビーは、やがて消滅した。


ロ「いいですね。マジックアロー、上手に使えていましたよ。」


デ「あ、あぁ…よかった…。」


ロードに褒められ、ディムアは視線を逸らして頷く。


マ「でも、マジックアローだけでしょ?無属性の範囲魔法って使えないの?」


デ「…無属性の範囲魔法は、使ったことがない…。」


マオの質問に、ディムアは気まずそうに答える。


マ「えー!1つくらい範囲魔法使えないと、この先一緒に旅するのは厳しくない?」


ロ「そんなことはないですよ。今はマジックアローが使えるだけで充分です。」


不満そうな表情を見せるマオを、ロードはそう声を掛けて宥める。


マ「だって、これから待ち受けているモンスターたちは、きっとどんどん強くなってくよ?それなのに、マジックアローしか使えないディムアと一緒に戦ってたら、共倒れしちゃうんじゃない?」


ロ「その心配はありません。ディムアに魔法を教えて、彼女自身が強くなればいいんです。」


マ「魔法を教えるって、誰が…?」


ロ「もちろん、僕が教えます。」


マ・デ「…えっ?」


ロードの返答に、マオとディムアは同時に声を上げる。


ロ「基礎が出来ていれば、範囲魔法もすぐ習得出来ますよ。闇属性以外の属性魔法も習得出来るかもしれないですね。」


マ「い、いやぁ…。昨日出会ったばっかりの正体不明の種族に、そこまでしなくてもいいんじゃないかな…。」


冗談を言っている様子のないロードに、マオは苦笑い を見せてやんわりと否定する。


ロ「メア族に魔法を教えると、無属性の範囲魔法や闇属性以外の属性魔法を習得出来るのか…という、これはれっきとした研究の一環ですよ。」


マ「…むぅ…。研究って言われると、否定出来ないよ…。」


ロードの言葉を聞き、マオは言い返せなくなり、大人しくなる。


ロ「そういうことです。なので、ディムアには後程魔法を教えていきますね。」


デ「…あ、あぁ…、うん…。」


笑顔のロードにそう声を掛けられ、ディムアは戸惑いながら頷いた。


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