テンタライオンとの戦い
「グルルルッ…!」
威嚇をするような獣の鳴き声が、間近に聞こえた。
「―っ!!」
5人がその鳴き声の方に一斉に視線を向けると、物陰から、大きなライオンのモンスターが姿を現した。
マ「…出た!テンタライオンだよ!耐性は無属性魔法と水と土、弱点は銃!」
テンタライオンの姿をマオは確認し、そう説明した。
ル「こいつも銃が弱点か!よしっ…!」
ニッと笑みを浮かべたルクは、銃口をテンタライオンに向ける。
フ「…お、大きい…。」
デ「かなり興奮してるようだな…。」
ロ「怖がらなくて大丈夫ですよ。」
怯えている様子のディムアとフレイシーの前に立ち、2人を安心させるように、ロードは小さく笑みを見せる。
テ「ガウウゥッ!!」
テンタライオンが上を向いて遠吠えをすると、周囲に
花虫、マイコニド、ジャイアントカタツムリが複数体出現した。
ディムアはライトニング、フレイシーはウィンドエッジを唱え、2人とも同じモンスターを狙って攻撃し、確実にモンスターの数を減らす。
ロードはコールライトニングを唱え、突進してくるテンタライオンに、大きな雷を落とした。
雷を直撃したテンタライオンは、痺れて動きを止めた。
ル「動きが止まったら、狙い撃ちしやすいな!」
そう言ったルクは、痺れているテンタライオンに、クイックショットを放った。
テ「ガァァア…!!」
高威力な2発の銃弾をくらったテンタライオンは、苦痛な様子で呻き声を上げる。
ロ「銃の攻撃が効いていますね!ルクはそのまま、テンタライオンを狙ってください!」
周りのモンスターにガルベスタタイフーンを放ちながら、ロードはルクにそう声を掛ける。
ル「あぁ、了解!」
ルクは頷き、銃口をテンタライオンに向けた。
マ「ルク!後ろからマイコニドが来てるよっ!!」
ルクに向かって、マオは声を上げる。
ル「っ!!」
ルクは咄嗟に後ろを振り向き、攻撃してくる寸前のマイコニドに、パワーショットを放った。
しかし、銃が耐性のマイコニドは、消滅せず、ルクに反撃を仕掛けようとした。
そのマイコニドを、フレイシーがスナップウィンドで切り裂いて消滅させた。
ル「フレイシー、ありがとう!」
フ「うん!」
ルクとフレイシーは、顔を見合わせて頷き合う。
周りのモンスターを覆う、ディムアのフレイムトルネードの炎を突っ切るように、テンタライオンがルクに突進してきた。
ル「うぉぁっ!!?」
視界が悪かった為、テンタライオンの突進を避け切ることが出来ず、ルクは数メートル吹っ飛び、後ろの壁に激突した。
フ「ルクっ…!?」
ルクに気を取られたフレイシーだったが、彼女の周りに、複数のジャイアントカタツムリが集まってきていた。
フ「いやぁぁ!!」
あまりの気味悪さに、フレイシーは悲鳴を上げ、しゃがみ込んでしまった。
マ「…ロード!ルクとフレイシーがピンチだよ!」
ロードの肩に乗っているマオが、2人の状況を見て、彼にそう声を掛ける。
ロ「わかりました!…ディムア、フレイシーを助けてもらえますか?僕はルクの方へ行きます!」
デ「…わかった!」
ロードの言葉に、ディムアは頷く。
周りにいるモンスターに、2人は同時にライトニングを唱え、一瞬動きを封じた。
その隙に、ロードはルク、ディムアはフレイシーの元へ駆け出した。
フ「いやっ…!こ、来ないで…!!」
じりじりと迫り来る数体のジャイアントカタツムリの恐怖に、フレイシーは酷く怯えていた。
そのジャイアントカタツムリたちを、駆け付けたディムアが、ライトニング、フレイムトルネードで、一気に消滅させた。
デ「…フレイシー!大丈夫か…!?」
フレイシーの顔を心配そうに覗き込み、ディムアが声を掛ける。
フ「ディムア…!ありがとう…!」
デ「…うん。」
涙目のフレイシーに、ディムアは小さく笑い掛けた。
一方、テンタライオンに突進され、壁に身体を強打したルクは、痛みに耐えながら、ゆっくり立ち上がっていた。
ル「くっ…!やられてたまるか…!!」
そう呟き、目の前に視線を戻すと、テンタライオンが再び突進してきていた。
ル「うわっ!?」
反応が遅れ、ルクは目を強く瞑るしかなかった。
次の瞬間、テンタライオンは、巻き上がった炎の渦に飲まれた。
テ「ガァァァ…!!」
テンタライオンは、炎の熱さに苦しみ、暴れている。
その炎の正体は、ロードのフレイムトルネードだった。
ロ「ルク、大丈夫ですか?」
ル「ロード…!あぁ、ありがとう!」
ロードとルクは、笑みを見せてそう交わす。
マ「ロード、ナイス!あと少しで倒せそうだよ!」
炎を振り払ったが、弱っている様子のテンタライオンを見て、マオは声を上げる。
ロ「はい。最後はルクがお願いします!」
ル「…了解っ!」
ロードに声を掛けられ、ルクはしっかり頷いた。
そして、ふらふらと突進してくるテンタライオンに、ルクはクイックショットを放った。
テ「ガアァァァァァッ…!!!」
2発の銃弾をくらったテンタライオンは、悲鳴を上げ、その場に倒れ、やがて消滅した。
マ「やったー!勝ったよー!」
マオは喜びで声を上げた。
ロ「ルク、ナイスです。お疲れ様でした。」
ル「…ははっ…。お、お疲れ…。」
ロードに微笑み掛けられ、ルクは安堵で力の抜けた笑みで返した。
フ「…うぅ…。あのモンスター、もう二度と見たくないよぉ…。」
デ「うん、よく頑張ったな。」
ジャイアントカタツムリがすっかりトラウマになってしまったフレイシーを、ディムアは慰めた。
そして、テンタライオンが倒れた場所に、何かが落ちていた。
それは、本のようなものだった。
マ「も、もしかして…!?」
マオは声を漏らす。
仲間達全員の視線が、その本に集中する。
ロ「…マオ、その本を拾ってください。」
マ「う、うん!」
ロードの声掛けにマオは緊張したように頷き、本を拾った。
その瞬間、その本は、1枚の葉っぱに姿を変えた。
「…え?」
その光景に、ロード以外の4人は声を漏らしてしまった。
ル「…ど、どういうこと!?確かにさっきまで本だったのに、葉っぱになった!?」
混乱したルクは、そう声を上げた。
ロ「上手いこと騙されましたね。」
デ「騙されたって…?」
困ったように笑うロードに、ディムアが聞き返す。
ロ「あの少年は、僕たちにいたずらで嘘をついていたんです。」
デ「えっ…いたずら?」
フ「どうして嘘ついてたのがわかるの?」
ロ「あの少年の後ろ姿を見たときに気が付いたのですが、ズボンから少し『タヌキのしっぽ』が出ていたんです。彼の正体は、『少年に変身したタヌキ』だったようですね。」
「タヌキ!?」
ロード以外の4人の声が、キレイにハモった。
フ「…じゃあ、そのタヌキくんが、カフェでの私たちの会話を聞いて、魔法の書がここにあるって嘘をついたの…?」
ロ「そうみたいですね。」
フレイシーの問い掛けに、ロードは頷いた。
マ「えーと、ロードはタヌキに騙されてることを知りながらも、オレたちに何も言わずにここまで来たってことかなぁ?」
少し引きつった笑みでマオに凝視されるも、ロードは楽しそうな笑顔を見せている。
ロ「そうですよ。タヌキに騙されるなんてなかなかない経験でおもしろそうなので、みんなには悪いと思いながらも、わざと騙されてみたんです。葉っぱを魔法の書に見せかけるのも凝っていておもしろかったですね。ついでにスワンプに生息するモンスターの調査も進みましたし、僕は満足です♪」
マ「もう…。まぁ、オレもデータ収集が出来たし、文句はないけどさ!」
マオは息をひとつつく。
デ「マイペースだな…。」
フ「でも、そのマイペースな所も、ロードの魅力かな?」
デ「…そうかもな。」
ディムアとフレイシーは笑い合った。
ル「…ん?待てよ…。ということは、俺もあいつに騙されてたってことか…?」
ロ「そうですね。タヌキは君に『メア族が森に入っていった』と言ったようですが、それも嘘だったのでしょう。」
ル「マジかよ!?俺、あいつのせいで散々な目にあったんだけど!ちょっとぶっ飛ばしてくる!」
怒った様子のルクを、ロードは宥める。
ロ「まぁまぁ。彼はちょっとしたいたずらがしたかっただけなんですよ。何かに危害を与えたなどではないので、許してあげませんか?」
ル「…わかったよ。大目に見る。」
渋々頷いたが、まだ少しいじけている様子のルクが何だか可愛く思えた仲間たちは、小さく笑っていた。
その後、5人は無事にダンジョンと森を抜けた。
ベ「…あいつ、ついに仲間入りしやがったわね。私を裏切った罪は重いわよ。」
彼らの後ろ姿を遠くから睨み付け、ベリッサは独り言を呟く。
ベ「…あの少年がタヌキで私たちを騙してたってこと、私だって最初から気付いてたわ。あんな簡単な嘘を信じて、しかも森から出られなくなったって本当にバカよね…。まぁ、今に見てなさい。私を裏切ったこと、すぐに後悔させてあげる…。」
ベリッサは怪しい笑みを浮かべた。
マ『今日は、スワンプの街を訪れた。そこで出会った少年から、魔法の書は、ダンジョンに棲むボスが守っているという情報を教えてもらい、我々はスワンプのダンジョンへ向かった。道中の森の中で、1週間迷子になっていたという敵のルクにまさかの遭遇。相方のベリッサとはぐれ、1人ぼっちで弱っていた。倒すチャンスだったが、ロードはルクを助け、一緒に森を脱出。結果ベリッサと仲間割れし、反省したルクは、我々と一緒に旅をすることになった。改めて5人でダンジョンへ潜入し、ボスのテンタライオンと戦った。テンタライオンに勝利したが、見つけたのは魔法の書に見せかけた、ただの葉っぱだった。あの少年の正体はタヌキで、我々に嘘をついて騙していたのだ。ロードはそれに気が付きながらも、わざと騙されていたと明かした。相変わらずマイペースでお人好しなロードである。…まぁ、そんな所もオレは好きだけど。おバカキャラのルクが仲間に加わり、これからの旅も更に楽しくなりそうだ。引き続き、魔法の書探しを頑張ろうと思う。』
マ「…よし、送信っと!」
いつものように、マオは旅の記録を研究所に送信した。
5*森の中で迷子―完―




