フレイシーとの出会い
カバリア遺跡のフィールドを越えた3人は、メガロポリスに到着した。
マ「わぁ…すごい!ここがメガロポリスかぁ!」
目の前に広がる、栄えた都市と人混みを見て、マオは声を上げる。
ロ「さすが都心部ですね。とても賑やかです。」
マ「うん。早速行ってみよー!」
わくわくした様子で、マオは前を飛んでいく。
デ「…。」
ロ「…どうしました?」
不安そうな表情のディムアに、ロードは声を掛ける。
デ「その…人混みが苦手で…。」
うつむきながら、ディムアは呟いた。
ロ「…そうですよね。無理はしなくて良いですよ。君が行けないのであれば、僕も行かないので。」
今まで人間を避けてきたディムアにとって、人混みが怖いのは無理もない、とロードは思った。
デ「…いや、行く。せっかく来たんだからな…。」
ディムアは首を横に振り、歩き出そうとする。
ロ「こうするとどうですか?」
ロードはディムアの手をそっと握る。
デ「―っ!?」
突然のことに、ディムアは顔を赤らめる。
ロ「…少しは安心出来るといいのですが。」
ロードに顔を覗き込まれ、ディムアは咄嗟に視線を逸らす。
デ「…あ、あぁ…。少しは…良いかも…。」
ロ「よかったです。では行きましょう。」
その言葉に、ロードは微笑んだ。
デ「…うん…。」
手を繋いだまま、2人はマオを追い、人混みの中を歩き出した。
マ「…ちょっ!?2人で手繋ぐなんてズルいよ!」
ロードとディムアが手を繋いで歩く姿を目の当たりにしたマオは頬を膨らまし、ロードの腕に抱かる。
ロ「甘えんぼですか?」
マ「違うよ!別にいいでしょ!」
満足そうな笑顔のマオを見て、ロードとディムアは小さく笑い合った。
3人は、メガロポリスの資料館に来た。
マ「本がいっぱいだー!」
本棚に並ぶたくさんの本を見て、マオは目を輝かせる。
ロ「ここには、カバリア島の歴史書が並んでいるようですね。」
本の一部を見て、ロードは言う。
マ「カバリア島の歴史かぁ~!ねぇ、ロード!全部インプットしていい?」
ロ「いいですよ。」
マ「やったー!」
ロードが頷くと、マオは喜び、早速一冊の本を手に取って開き、インプットを始めた。
デ「なんだか、イキイキしてるな。」
マオの様子を、ディムアは唖然として見つめる。
ロ「マオはデータ収集が生きがいですからね。」
デ「そうなんだな…。」
ロ「…では、僕たちも探しましょう。」
マオから目を離したロードは、周りの本を見渡す。
デ「…何を探すんだ?」
ロ「ラファメアの戦いについての資料…あると思いませんか?」
デ「あ…そ、そうだな。」
ロードの言葉にディムアはハッとして、たくさんの本のタイトルを眺め始めた。
しかし、本がたくさんありすぎて、タイトルを読んでいくだけでも、目が痛くなった。
ふと、椅子に座っている人物の中の1人に、『ラファメアの戦いの歴史』というタイトルの本を読む少女がいることに、ディムアは気が付いた。
デ「…ロード、あれ…。」
ロードに静かに声を掛け、その少女に視線を向ける。
ロ「…ラファメアの戦いの本を読んでいますね。」
ロードも気が付き、2人は遠目から彼女の様子を伺う。
?「うーん…この本にも載ってないかな…。」
真剣に本を読みながら、困った表情を浮かべ、そう独り言を呟いた。
?「…助けたいなぁ…メア族…。」
しばらくした後のその呟きを聞き、ロードとディムアは顔を見合わせる。
デ「メア族を…助けたい…?」
ロ「確かにそう言いましたよね。少し話を聞いてみましょうか。」
そう話し合い、2人は頷いた。
ロ「…あの、すみません。」
少女が小さく息をつき、本を閉じたタイミングで、ロードは彼女に声を掛けた。
?「あ、はい?」 少女はきょとんとし、ロードに視線を向ける。
ロ「突然すみません。あまりにも熱心にその本を読んでいたので、気になって声を掛けてしまいました。ラファメアの戦いのことを勉強していたのですか?」
?「えーと…勉強というか…。調べ物をしていたんです。」
ロードの問い掛けに、恥ずかしそうに少し笑って少女は答える。
ロ「よければ、何を調べていたか聞かせていただいてもいいでしょうか?」
?「いいですよ。…私、〝浄化魔法〟のことが知りたいんです。」
ロ「浄化魔法…?」
?「はい。私のお母さんから聞いたんですけど、浄化魔法って、メア族にかけると、闇の魔力をなくせるそうなんです。」
ロ・デ「…っ!!」
その言葉を聞いたロードと、少し距離を置いて話を聞いていたディムアは、衝撃を受けた。
ロ「…その浄化魔法を、習得したいということですか?」
?「出来ることなら覚えたいですね。私が習得出来たら、たくさんのメア族に掛けてあげたいんです!」
少女は笑顔を見せる。
ロ「…なるほど。それで先程『メア族を助けたい』と言っていたのですね。」
?「え!聞こえてました?あはは…。私、ラファメアの戦いで、メア族が命を狙われているのが酷いと思うんです。凶暴だということは知ってるんですけど、それは闇の魔力を持ってしまっているせいで…。それなら、闇の魔力をなくしてしまえば、心も優しくなって、命を狙われることもなくなるんじゃないかなって思ったんですよね…。」
ロードの反応を伺いながら、少女はそう話した。
ロ「素晴らしい考えだと思います。僕も、ラファメアの戦いにおいて、ラファ族や人間を含め、メア族も救われることを望んでいますよ。」
?「本当ですか!?同じ思いの人と出会えて嬉しいです!」
ロードと少女は笑顔を見せ合った。
ロ「よければ、浄化魔法のことを一緒に調べませんか?」
?「いいですね!よろしくお願いします!」
ロードの提案に、少女は快く頷く。
ロ「すみません、自己紹介がまだでしたね。僕はロード、こちらはディムアです。よろしくお願いします。」
デ「…よろしく。」
ディムアは少女に歩み寄り、小さく頭を下げる。
?「私は〝フレイシー〟よ。改めてよろしくね!」
フレイシーは、ディムアにも笑顔を向けた。
マ「あっ!2人ともここにいたんだ!」
そのとき、マオが3人の前に飛んできた。
ロ「マオ、ちょうどよかったです。今日から仲間になるフレイシーです。」
マ「え?仲間?」
マオはフレイシーに視線を向ける。
フ「わぁっ!可愛いー!」
フレイシーは目を輝かせ、マオを見つめる。
マ「え、えへへ…。オレはマオ。よろしく!」
フ「よろしくね!」
マオは照れ笑いを浮かべた。
ロ「フレイシーになら言っても大丈夫そうですね。」
デ「…そうだな。」
視線を合わせ、ロードとディムアは頷き合う。
フ「ん?なになに?」
フレイシーはわくわくしたように尋ねる。
デ「…私…メア族なんだ。」
少し不安そうな様子で、フレイシーにそう告げた。
フ「…え、えぇぇ!?ほ、本当に!?私はラファ族なの!」
ロ・デ・マ「―っ!!?」
フレイシーの突然の発言に、3人は更なる衝撃を受けた。
マ「ラファ族っ!?わぁぁ!すごい!キミがラファ族かぁ!」
マオは興奮し、フレイシーの周りをぐるぐる回り、彼女の観察を始める。
ロ「こんな場所でラファ族に出会えるとは…。」
予想もしていなかった出来事に、ロードも驚きを隠せない様子だった。
フ「私も、メア族の人にずっと会ってみたいって思ってたの!嬉しいー!」
フレイシーは笑顔でディムアの両手を握る。
デ「あ…えと…。」
どう反応すればいいかわからず、ディムアは言葉を詰まらせる。
フ「メア族ってとても怖いイメージがあったけど、あなたはとても優しそうね!」
デ「いや…別に優しくないが…。」
困惑しながら、ディムアは言う。
ロ「ディムアは心優しいメア族ですよ。」
デ「っ…。」
微笑むロードの言葉に、ディムアの顔は赤くなる。
フ「そうよね!ディムアちゃん、あなたはもしかしたら、メア族だというだけで、今までたくさん傷付けられてきたかもしれない。でも、ロードさんやマオくんと一緒で、私もあなたを護るわ。浄化魔法を習得したら、一番最初にあなたに掛けて闇の魔力をなくしてあげるからね!」
デ「…あぁ…。ありがと…。」
フレイシーの言葉に心が温かくなり、ディムアは小さく笑みを見せた。
ロ「…ラファ族は、人間と同じようにメア族を敵対視するものだと思っていましたが、フレイシーがディムアを救いたいという考えの持ち主でよかったです。」
ロードは言い、安心した様子で微笑む。
フ「お母さんがいつも言ってるの。『メア族は殺してはいけない。護らなければいけない。』って。だから、メア族を敵だと思ったこと、私は一度もないわ!」
フレイシーも笑顔で言った。
マ「フレイシーのお母さん、すごく優しい人なんだね!会ってみたいなー!」
フ「うん!会いに行きましょ!私の家、ここから近いの!」
マオの言葉に、フレイシーは快く頷く。
ロ「それは良いですね。僕は、浄化魔法のことを詳しく聞きたいです。」
マ「えっ!浄化魔法!?またオレの知らない言葉が出てきたー!」
マオは嬉しそうにロードを見つめる。
ロ「僕も今初めてフレイシーから浄化魔法の存在を教えてもらいました。…彼女の家に向かう前に、マオ、この本の中に、浄化魔法についての文献があるか調べてもらえますか?」
マ「オッケー!」
ロードの言葉に、マオは手を挙げて意気揚々と答える。
フ「え?本はこんなにたくさんあるけど、大丈夫…?」
ロ「大丈夫ですよ。数分で終わると思いますので、見ていてください。」
心配そうなフレイシーに、ロードは笑って頷く。 目に見えない速さでページをめくり、分厚い歴史書一冊当たりのデータをインプットするのにかかる時間は、約10秒だった。
本を出してはインプットして、その本をすぐ戻してを、物凄い速さで、マオは繰り返していた。
フ「…す、すごい…!」
その光景を見たフレイシーは、驚きで言葉を漏らす。
ロ「マオはデータ収集を得意とする、優秀なAIなんです。」
フ「AIだなんて…!文明の発達ってすごいのね!」
感心した様子で、フレイシーはマオを見つめていた。
デ「…。」
その隣で、ディムアも唖然としてマオを眺めていた。
数分後、マオは、本棚に並んである全ての本のインプットが完了したようだった。
マ「ふぅ…。全部終わったけど、浄化魔法についての情報はなにもなかったよ。」
一息ついたマオは、ロードの元に戻り、そう報告した。
ロ「そうですか。わかりました、ありがとうございます。」
ロードは頷いて答える。
フ「なかったのね…。それじゃあ、お母さんに話を聞きに行きましょ!」
ロ「そうですね。お願いします。」
フレイシーが仲間に加わり、4人は資料館を出た。




