トムベスとの戦い
マ「…はぁっ、はぁっ…。ようやく撒いたぞ…。」
多数のモンスターたちから逃げ切った頃には、マオの息は上がっていた。
マ「あぁ、モンスターのせいで、ダンジョンのかなり奥まで来ちゃった…。戻るなら今のうちだな。早くダンジョンを出よう!」
そう決めたマオだったが、そのとき、あることに気が付く。
マ「…!ここ、電波が…?」
それは、自分の周りの電波がよくないということだった。
そのせいで、ロードと自分の居場所が、画面に上手く表示されていなかった。
マ「マズイな…。早く戻らないと!」
慌てたマオは、入り口に向かおうとする。 そのとき、マオの周囲で地響きが起きた。
マ「っ!?」
マオは驚き、辺りを見渡す。
しばらくすると、奥から大きなモンスターが現れた。
マ(…っ!コイツ、このダンジョンに棲むボス〝トムベス〟…!?)
突如現れたボスのトムベスに、恐怖よりも好奇心の方が勝ち、逃げることなく凝視した。
マ(そ、そうだ!トムベスのデータ収集をして、ロードに見せてあげよう!)
そう思い付いたマオは、トムベスに一歩近付いた。
モンスターは素早く動き、マオに大きな拳を打ち付けた。
マ「わぁっ!!?」
拳を直撃したマオは、勢いよく壁に叩き付けられた。
マ(…い、痛い…。すごい攻撃力だ…!でも、逃げないぞ…。オレ1人でだって、データ収集出来るんだから…!)
マオは体勢を立て直し、呼吸を整える。
すると、今度はマジックアローが飛んできた。
マ「うぁ!!」
マジックアローを直撃し、マオは地面に倒れた。
携帯電話の画面を見ながら、ロードは不安を感じていた。
ロ「…。」
デ「…どうした?大丈夫か?」
その様子に気が付いたディムアが、ロードに声を掛ける。
ロ「…ダンジョンの奥まで来たからだと思うのですが、今電波が悪い状態です。そのせいで、マオの居場所がわからなくなってしまいました。」
デ「え…!?」
ロードの言葉に、ディムアは声を漏らす。
ロ「少し危険な予感がしますね…。」
デ「あ、あぁ…急ごう。」
2人は顔を見合わせ、走り出した。
しばらくして、2人は同時に足を止めた。
デ「…今、マオの声がしたような気がする…!」
ロ「はい…僕も聞こえました…。」
2人はそう言い合い、耳を澄ます。
衝撃音と共に、マオのものらしき微かな悲鳴が、2人には聞こえた。
ロ「…あっちの方からですね。」
デ「うん…!」
ロードが奥の方を指すと、ディムアは頷く。
2人は再び走り出した。
マ「…。」
トムベスの攻撃を受け続け、マオは傷だらけで倒れていた。
マ(もう…データはたくさん取れた…。これ以上攻撃受けたら壊れちゃうかもな…。よし、逃げよ…。)
そう思ったマオは、その場から立ち去ろうと、飛ぼうとした。
しかし、身体は動かなくなっていた。
マ(…!!?し、しまった…!攻撃を受けすぎて動けない…!!!)
じりじりと迫り来るトムベスを前に、マオは絶望を感じる他なかった。
トムベスの拳が、マオに向かって振り下ろされる。 マ「―っ!!」
マオは強く目を瞑った。
そのとき、辺りに雷鳴が鳴り響いた。
それと同時に、自分の身体が何かに抱き上げられた感覚があり、マオは恐る恐る目を開けた。
デ「マオ…大丈夫か…!?」
マオを抱き上げたディムアが、心配そうに彼を見つめ、呼び掛けた。
マ「…ディムア…。」
マオの声は、力を失った小さなものだった。
そして、雷鳴の正体は、ロードがトムベスに放ったライトニングだった。
ライトニングを直撃したトムベスは、痺れて動きを止めている。
ロ「危ない所でしたね。もう大丈夫ですよ、マオ。」
ロードは言い、マオに微笑み掛けた。
マ「…ロード…うぅっ…。」
ロードを見つめるマオの瞳から、大粒の涙が零れた。
ロ「僕の大切な助手がお世話になったようですね。これからたっぷりとお礼をさせてもらいますよ。」
トムベスに向け、ロードは笑みを見せた。
ト「ガァァァ!!」
短い時間で麻痺状態が解けたトムベスは、雄叫びを上げると、周囲にモンスターを出現させた。
マ「…こいつは…トムベス。耐性は、無属性魔法と風と土…。弱点は銃…。2人とも、気を付けて…!」
ロ「はい、了解です!」
デ「うん、わかった。」
力が抜けた様子で言ったマオに、ロードとディムアは同時に頷いて見せた。
ロードはガルベスタタイフーン、ディムアは〝マジックタイフーン〟を唱え、周囲のモンスターを一気に減らす。
2人の魔法により吹き荒れる風を切るように、トムベスはディムアに大きな拳を突き出して突進してきた。
デ「っ!!」
ディムアに直撃する寸前に、ロードはアイスクリスタルを唱え、トムベスに横から氷塊を勢いよく放った。
その衝撃で、トムベスは吹っ飛び、壁に叩き付けられた。
デ「…ありがと…!」 ディムアはロードに微笑み掛ける。
ロ「いえ。マオを任せてしまってすみません。無理しないでくださいね。」
デ「うん、大丈夫だ。」
2人は頷き合い、再びトムベスに視線を向けた。
そのとき、ロードとディムアにマジックアローが1本ずつ飛んで来て、2人の身体を射た。
ロ・デ「っ!」
2人は体勢を崩す。
それと同時に、ロードのウィンドカウンターが発動し、目が1つで羽を羽ばたかせて飛んでいるモンスターに風がまとい、切り裂く。
マ「そいつは〝リマ〟…。耐性は土と風…弱点は物理と銃…。もう1体の、壺をかぶった蛇みたいなのは〝チブチャ〟…。耐性は光と水…弱点は物理と銃だよ…。」
ディムアに抱かれたまま、マオはモンスターに視線を向け、そう説明をした。
ロ「リマは風、チブチャは水が耐性ですね。ありがとうございます!」
ライトニングを唱え、リマとチブチャを退治しながら、ロードは頷いた。
体勢を立て直し、再び突進して来たトムベスに、ディムアはライトニングを唱え、稲妻を落とした。
すかさずロードはフレイムトルネードを唱え、トムベスと周囲にいるモンスターを、まとめて炎で覆う。
ト「ガァァァァ…!!」
モンスターたちは消え去り、トムベスは炎の熱に苦しむような呻き声を上げた。
マ「もうちょっとで倒せそうだよ…!頑張って…!」
ロ「わかりました!」
デ「うん!」
マオの言葉に、ロードとディムアは頷く。
その直後、最後の悪あがきか、トムベスは大きな拳で地面を強く叩き付けた。
すると、辺りに濃い土煙が舞い、視界が急激に悪くなった。
デ「…何も見えない…!?」
マ「ヤバい…!攻撃して来る…!?」
土煙のせいで目が開けられず、ディムアとマオは焦ったようにそう口にする。
ロ「…大丈夫です…。ディムアとマオには、絶対攻撃させません…!」
デ「…っ!!」
咄嗟に2人を護る体勢を取ったロードの言葉に、ディムアの鼓動は速くなる。
次の瞬間、土煙の中から、トムベスの大きな拳が突如飛んで来た。
その拳を、ロードは魔力を防御力に集中させた杖で受け止めた。
すると、大きな衝撃音とともに、ロードのサンダーカウンターが発動し、トムベスに大きな雷が落ちた。
ロ「…見えました!」
土煙が薄くなり、肉眼でトムベスが見えた瞬間、ロードは再びアイスクリスタルを唱えた。
飛んで来た氷塊とともに、トムベスは壁に勢いよく直撃し、大きな音を立てて崩れ落ちた。
マ「…崩れた…!」
そう呟いたマオと、ロードとディムアも一緒に、その光景を息を呑んで見つめる。
バラバラになったトムベスの体は、やがて消滅した。
ロ「…倒しましたね。2人とも、お疲れ様でした。」
デ「…お、お疲れ…。」
トムベスが完全に消滅したことを確認したロードに笑顔を向けられ、ディムアは頬を赤らめ、視線を逸らし、小さく答えた。
マ「…よかった…。」
弱っているマオも、安心したように声を漏らしたが、まだ表情が曇っている。
デ「…マオ、あのモンスターに、こんなにボロボロになるまでやられてしまったんだな…。ちゃんと回復するのか?」
傷だらけのマオをまじまじと見つめたディムアが、心配そうに尋ねる。
ロ「大丈夫です。きちんとメンテナンスをすれば、明日には元気になりますよ。」
デ「そうか。よかった。」
ロードが答えると、ディムアは微笑みを見せた。
マ「…ロード…ディムア…。」
自分を心配してくれる2人を見つめ、マオはまた涙が出そうになる。
ロ「…さて、またモンスターが襲ってくる前に、ダンジョンを出ましょう。」
デ「うん、そうだな。」
ロードの言葉にディムアは頷き、3人はダンジョンの出口へと向かった。




