カバリア島研究の任命
研究員見習いの〝ロード〟は、その日も奥深くのダンジョンにて、珍しいモンスターを退治していた。
息絶えたそのモンスターは、何かを落とした。
ロ「…これは…。」
ロードはそれを拾い上げ、見つめる。
マ「なに?何か見つけたの!?」
小動物型AIのロードの助手〝マオ〟が、彼の隣に飛び寄り尋ねる。
ロ「先程倒したモンスターが落としたようです。」
ロードは手に持つ物をマオに見せる。
マ「どれどれ…。わぁ!またオレのデータにない新しいアイテムだよ!また新発見だね!」
興奮したようにマオは声を上げる。
ロ「そうですか。では、これも研究所に持ち帰りましょう。」
マ「うんっ!」
嬉しそうな表情のマオを見て、ロードは小さく笑う。
マ「本当にすごいなぁ。」
ロ「何がですか?」
マ「ロードが、だよ。まだ誰も行ったことのないダンジョンとか、新しいモンスター、アイテムもすぐ見つけるしね!」
ロ「そんなすごいことをしているつもりはないですよ。」
マ「もう、謙遜しなくていいんだよ。研究員見習いとは思えないよ!」
ロ「マオのサポートが優秀だからです。いつもありがとうございます。」
マ「…えへへ、照れるなぁ。」
笑顔を見合わせ2人はそう話しながら、研究所へ向かった。
ロードとマオは、研究所に戻って来た。
サ「…あ、ロードくんとマオ、お帰りなさい!」
ロードの上司の〝サブリナ〟が、2人を出迎える。
ロ「ただいま戻りました。」
マ「ただいまー!」
2人はサブリナにそう返す。
サ「…あのね、今日の業務が終わったら、2人に大事な話があるの。時間大丈夫?」
そう言ったサブリナは、深刻そうな表情を浮かべている。
ロ「大事な話…ですか。はい、大丈夫ですよ。」
彼女のその表情を見て、どんな話なのか気になりながらも、ロードは頷く。
サ「ありがとう。じゃあ、帰りの時間、相談室で待ってるわね。」
サブリナは小さく笑い、その場を後にした。
マ「どうしたんだろう…。大事な話って、なんだろうね…?」
マオはロードに不安そうな表情を見せる。
ロ「そうですね…。サブリナさんの表情からして、あまり良い話ではないかもしれませんね。例えば、マオが僕の助手を降りなくてはならなくなってしまった…というのはどうでしょう?」
マ「…っ!?そんなの嫌だ!オレはずっとロードと一緒にいるんだ!!」
ロードの言葉を聞き、マオは彼に抱きついた。
ロ「…というのは冗談ですよ。」
マ「…もー!怖いこと言わないでよぉ!」
ロードは微笑み、頬を膨らませるマオの頭を優しく撫でた。
そして、その日の業務が終わった2人は、相談室へ向かった。
ロ「…失礼します。」
ドアをノックして静かに開けると、中ではサブリナが既に座っていた。
サ「あっ、ロードくんとマオ、お疲れ様!そこ座って。」
サブリナに促され、彼女の座る相向かいの椅子に、ロードは座った。
マオは、ロードの隣の机の上に腰掛けた。
ロ「…大事な話とは、何でしょうか?」
ロードは静かにサブリナに問い掛ける。
サ「…実は、これが今日の会議で渡されたの。」
サブリナは、1枚の紙をロードに差し出す。
その紙を受け取ったロードは、マオと一緒に、その紙に書かれている文章を読んだ。
ロ「『研究員見習いのロード、小動物型AIの助手のマオを、カバリア島の研究要員として任命する。』」
マ「…えっ!?カバリア島!?」
マオは目を見開き、声を上げる。
ロ「カバリア島…。たしか、今まで何人も研究員が行って研究している島ですよね?」
サ「ええ。でも、カバリア島は危険な場所が多すぎて、今まで行った研究員は皆、命の危険を考えて、研究を断念して早い段階で帰還してしまっていたの。」
サ「それで、ロードくんの魔法の強さと今までの研究成果を見込んだ上の人たちが、あなたをカバリア島の研究要員として任命したの。全研究員の中でも飛び抜けて優秀なあなたなら、カバリア島で素晴らしい研究をしてくれると思うって。」
マ「…すごい!ロードがめちゃくちゃ優秀なのはオレも充分わかってたけど、上からもそんなに評価されてたなんて!」
嬉しさのあまり、マオは飛び上がる。
ロ「…僕なんかが、カバリア島の研究なんて出来るでしょうか?」
少し戸惑いながら、ロードはサブリナに尋ねる。
サ「ええ!私も、ロードくんならカバリア島の研究を頑張ってくれると思っているわ!受けてくれるかな…?」
ロ「…わかりました。頑張ります。」
決意を固めたロードは、サブリナにしっかり頷いて見せた。
サ「ありがとう!よろしくね!」
安心したように、サブリナは笑顔を見せた。
マ「わぁぁ、カバリア島かぁ!楽しみだけど、ちょっと怖いかも…。」
マオは興奮しながらも、少し不安そうな表情を浮かべる。
ロ「僕と一緒にいれば大丈夫ですよ。マオ、よろしくお願いします。」
マ「うん!ロードと一緒なら安心だよね!よろしく!」
2人は笑顔を見せ合った。