第五話
やっと駅前にあるできたばかりのアイス屋さんに行ける!と私は興奮していた。そこのアイス屋さんはまだ出来て数ヶ月なのに、女子に大人気だった。学校にいけば誰かしらがそのアイス屋の噂をしているほどで、私も行こうと心に決めていたけど、タイミングを失っていた。
赤と白の可愛い外観の店舗が視界に入り「海斗くんアイス屋さんあるよ!」というと海斗君は口数少なく、「う、うん」とだけ答えて、海斗君も私も緊張気味に店内に入った。
まるで宝石のように輝く色とりどりのアイスをみて私のテンションはさらに上昇する。
「えー、ヤバい、おいしそう!ねぇ!海斗君はどれがすき?」
「ぼ、ぼく? 僕はやっぱり…… ベルギー産のチョコ味かな 」
チョコはあるけど、と戸惑う。国名を入れて指定しきたのにはさすがに驚かされる。
「ベルギーかはわからないけど、チョコならあるよ。私もチョコ好きだよ!」と目を輝かせると、海斗君は少し考えて「なるほど、あの…… おすすめはありますか?」とすぐに店員さんに尋ねるまさかのタブーを犯す。
ずるしないで一緒に選んで!と私は今すぐにでも海斗くんを怒りたかったけど、店員さんの優しい笑顔に免じて堪えることにした。
海斗君はことごとく私の想像の上をいっている。こんな男子は初めてで新鮮だった。
結局、2人で選んだアイスではなく、店員さんが選んだバニラ&ストロベリーを持って店内の空いている席にすわる。
「お、美味しいね……」海斗君は不機嫌そうな私に子犬のような目でそう言った。
その目を見て少しからかいたくなった私は「知らない!」と顔をそむけると、目に涙を浮かべながら「ごめん……」と返事が返ってくる。
「女の子は選んでる時間も大事なんだよ!」説教のようになってしまうが、海斗君にはこれくらい必要だ。
「そ、そうなんだ……、たしかに…… 旅行も行く前が一番楽しいっていうもんね」
「ちょ、ちょっと違う気もするけど、まぁいいやそれで。アイス美味しいね」
「う、うん。こんな美味しいアイス久しぶりにたべたよ」と海斗君は嬉しそうに言った。
そこは初めてくらいに言ってほしかった、と心で呟きながら舌の上でアイスを溶かす。
なぜだろう。海斗君はいつも変なことを言っているけど、一緒にいると不思議と落ち着いた。
「そういえば……、宮園さん、よく学校から抜けだせたね。周りの友達からなにも言われなかった? 」
「え?……う、うん、全然大丈夫!」
そんなことはなかった。ここで大変だったと正直にいえば海斗君に気を使わせてしまう。
海斗君が荷物をまとめて、学校からいなくなるのをみて、私はすぐに後を追いかけようとカバンを手にした。
急に帰り支度をした私を見て「ちょっと姫!どこ行くの?」と親友の沙也加含め周りの友達は驚いた表情をしていた。
「え?…… えっと、それは……」
流石に海斗君が気になって、なんて恥ずかしくていえない。理由をどうするか、私が困っていると沙也加が私の様子をみて察したのか、嘘の理由を作って私を学校からだしてくれた。
「あ、そうだ。姫!今日提出しなきゃいけないプリント家に忘れたって言ってたじゃん!早く取りにいってきなよ」
「うん、そ、そうなの!今のうちにいっておかないと」
沙也加の作った嘘は完璧だった。担任の小田先生は4時間目の数学を担当していて、恐らくその時に提出をせまられるし、今、私が家に帰る理由としては申し分ないはずだ。
「それはヤバいやつ!今日までのって、進路希望のプリントでしょ? 小田の授業昼にあるし、あるから早く行ってきなよ」
私は学校を出てすぐに海斗君を追った。
アイスに苦戦している海斗君を見て「海斗君は進路どうするの? やっぱり大学いくの?」と聞いた。驚いたのか、海斗君は一瞬目を見開いたように丸くしたあと、すぐに子犬ような目に戻して口を開く。
「えっと…… 」
店内のドアがあき、私は最悪な男と目が合ってしまう。ストーカーの元彼だった。隣には見た事のない女もいて、こっちに近づいてくる。
ヤバい、震えが止まらない。
「お、姫じゃん! お前俺のことブロックしてんだろ? 家に行ってもでてこないし、いい加減機嫌なおしてくれよ」
「お願い、もう、関わってこないで……」
隣りの女は携帯をいじり、関わろうとしない。
ストーカー男は聴きたくない声、見たくない表情でスラスラと話している。言い返そうにも喉が閉まって声がでず、俯くことしかできない。
「おい、そんなこと言うなって…… だからこうして …… 」
あれ? 声が止まった。俯いてるからわからないど諦めてどっか行ったのかもしれない。そう願いを込めて、顔をあげるとストーカー男は海斗君を睨んでいた。
「姫…… だれこいつ?」
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