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季節をこえて君といたい  作者: 木幡慎一
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第二話

自分のペースで投稿していきます!

感想のコメントや評価などくれると凄く嬉しいです。

お待ちしておりますm(_ _)m

学校を飛び出したはいいものの、当然行くあてなんてなかった。最悪なことに1日はまだ始まったばかり、学校では朝のホームルームが終わったくらいだろう。どうせ飛び出すなら最後の授業が終わってからにすればよかった、と情けなく響く自分の足音を止めて、空をみあげる。

 まだまだ陽射しは強く、刺すような光が容赦なく僕を照りつける。

「暑い…… これからどうしよう……、もし学校を抜け出した事がバレたら父さんに殺されるかもしれないな」

 見上げた太陽に向かって話すと「それは大変だ! じゃあ、バレないように時間潰しに付き合ってあげる」

 まさかの返答が返ってくる。しかも太陽は女性?。

「はは、優しいね。ありがとう」僕は続けて優しい太陽にお礼を伝えた。

 あれ? と我に返る。冷静に聴くと声は僕の真後ろから聴こえていた。それはそうだ、太陽が話すわけはない。

「きまり!じゃあどこいこっか?」

「どこって…… え?!」空を見ていた僕が声の方へ顔をむけると日光をまといキラキラと光る天使がいた。 いや、よく見るとやはり宮園さんだ。羽は生えていない。

「み、み、み、宮園さん?! どうして?!」

「海斗くんと一緒だよ! 私も学校抜けてきちゃった」

 なんて人だ。宮園さんにそんなセリフを言われたら大概の男は瞬殺で惚れるに違いない。もちろん僕もその一人だ。暑そうに手のひらで顔をあおいぎながら、罪深いほどのキラースマイルを繰り出している。

「抜けてきたって…… どうして宮園さんが?」僕は素直に思った事を口にだした。

「ん〜、だって海斗君さっき冷たかったから、なんとなく気になっちゃって」

「え? 気になったって…… 宮園さんが僕を…… 」言いながら僕は少しニヤけていたのだろう。宮園さんに「なんか嬉しそうだね」とひきつり気味で言われ、初めて口角が上がっていたことに気が付いた。

 きっと見るに堪えない下品な顔をしていたと思う。でも仕方がない。この体の奥から込上がるような幸福感を抑えられるわけがない。

「気になったって言っても、そんな重くとらないで!海斗くんが学校からいなくなったの私が原因だったら嫌だなって思って」

「そ、それは……」宮園さんのことを意識しすぎてこうなったことを考えると原因といえば原因なのだが、勝手に好きになって意識していたのは僕だ。教室から飛び出したのは僕が勘違いしたとの、情けなかったせいであり、決して宮園さんのせいではない。

「なんか私、海斗くんに悪いことしちゃったかな…… 」

「そんな!そ、そんなことないよ!宮園さんは全然、全く悪くないよ。悪いのは勝手に勘違いした僕だから」

「勘違い?」宮園さんは首を傾げる。

「い、いや!とにかく!僕がいいたいのは、宮園さんのせいじゃないってこと!」しまった、と僕は顔を赤らめテンパりながら説明する。

「それなら、よかった」といってほっとした表現を浮かべている。

 僕は宮園さんになんて声をかけようか迷っていた。

 なぜ僕なんかにそこまで? 本心ではそう聞きたかったけど、そんなリスキーなことはきけない。

 なぜ僕にそこまで? 、つまり僕のために君はなぜそこまでしてくれるのか、行き着く先は、僕のことが好きだからそこまで気にかけてくれるの? この解釈になる恐れがある。

 そんなことになれば、勘違いあっぱれ男に思われる可能性だってある。そんなことを考えていると宮園さんのクスクスといった笑い声に顔を上げる。「海斗君っていつも考えれ込んだ表情してるよね、これからどうしよっか?」

「あの、もしよかったら……」といって僕は慌てて口を噤んだ。

 せっかくだしどこかで座って話さないかな? そう言いかけてやめた。

 本来であれば、誤解を解いた今、巻き込んでしまった宮園さんに学校に戻るよう言わなければならない。しかし、僕は厚かましくも、もう少しだけ宮園さんと一緒にいたいと思っている。その反面、宮園さんが学校を抜けてきたことに、僕は複雑な気持ちになった。僕のせいだという罪悪感もあり、心配もあり、そしてやはり嬉しくもあった。暑そうにしている宮園さんをみて僕は再び口を開く。

「あ、暑いよね。ごめん…… 宮園さん、もう学校に戻った方がいいよ。一応保健室に少し寄ってからの方がいいと思う。まだ1時限目も始まったばかりだし、体調崩して保健室にいたっていえば、学校から抜け出したこともバレないし、後で先生からなにか言われることもないと思うんだ」

 学校に戻るよう言うと間があいた。なにか考えているような素振りを見せ数秒後「海斗くんはどうするの?」と答えた

「ぼ、僕は……、僕もすぐに戻るよ」

 口ではそう言ったが、正直戻りたくはなかった。1度飛び出した手前今さら戻るのが恥ずかしい気持ちのもあるけど、それよりもこのまま戻れば僕はますます自分が嫌いになりそうだと思ったからだ。

 きっとどこかで、父に従い、家でも学校でもいい子でいる自分に疲れていたのかもしれない。

「ねぇ!聞いてる?」

「は、はい?!な、なんでしょう」

 しまった! また考えに集中して宮園さんが目の前にいるというのに、どうやら僕はうわの空だったようだ。

「相変わらず聞いてないんだから!だから、このままサボっちゃおうよ」

 夕日に照らされた宮園さんがフラッシュばっくした。前にも同じようなことを言われたような、と思い出そうとしていると宮園さんは、僕に手を差し出し「どうするの? 先生に怒られるからまたやめとく?」

 僕は手を差し出す宮園さんに見惚みとれていた。そしてはっきりと思い出した。そうだ、あの時だ、と。

 ずるいや、そんな風に言われて僕が宮園さんの誘いを断れるわけないじゃないかと心で呟き、僕は「じゃあ、少しだけ」と言って宮園さんの手をとった。


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