第十話
説明もなく投稿が遅れ申し訳ありません。
今後も投稿できない日はあると思いますが、続けていきたいと思いますのでよろしくお願いします。
「お、学生さん! お母さんにおかず一品買って帰りなよ。きっと喜ぶよ」精肉店の店主がコロッケを片手に僕を誘惑する。僕はこんがりと揚がったコロッケと目があう。そして、幸いなことに宮園さんの事で頭がいっぱいだった僕はコロッケから目をそらす事に成功する。
学校が終わったこの時間、恐らく日本の学生のほとんどはお腹を空かせているだろう。
そこに目をつけ、制服をきた学生が通るやいなや、香ばしい匂いを漂わせながらコロッケを片手に登場するというなんとも狡猾な手口だ。
「いえ、結構です。おそらく今日の夕飯は昨日の残りが出てくると思うので、おかずは間に合ってます」と自分に言い聞かせるようにコロッケの誘惑を断り、足を早める。
秋の商店街を歩きながら僕は思考の沼に陥って陥っていた。
夏とは違い、まるで太陽が重くなったかのように早く沈んでいく。
「姫を悲しませるやつは許さない」沙也加という自称宮園さんの友達は確かに僕にそういった。そんなやつ僕だって許せない。聞いた時はそう思ったけど、あの言い分だとどうやら悲しませているのは僕だ。
もしかしたら、僕はただ宮園さんを傷つけただけなのかもしれない。そんな思いが心を締めつける。
商店街を抜け駅にたどり着いた。そして、駅前のアイス屋さんに目を向ける。
「宮園さん……」アイス屋を見ると、あの日の出来事が鮮明に頭で再生された。
「決めた……」僕は口に出して誓う。
「明日、宮園さんに謝ろう…… 」
決意を固め、歩きだそうとすると突然「おい!」と怒声のような呼びかけに僕は振り向く。
「てめぇ、やっと見つけた。やっぱここの駅使ってやがったか」
最悪だ。忌まわしき自称宮園さんの元彼が僕の肩を掴んでいる。顔も下品だが、匂いもキツく鼻が曲がりそうだ。きっとよく知らない香水を過剰につけているのだろう。
「な、なんですか? 手離してもらっていいですか?」
「関係ねぇよ、てめぇは許さないっていったよな?」
「し、知らないですよ。あれはあなたが一方的に絡んできたんじゃないですか」
「うるせぇ、こっち来いよ」
僕の制服をつかみどこかへ連れて行こうとしている。
「ちょ、やめてください」と振りほどくと男はさらに激昂し「こないんだったら、ここでやってもいいんだぞ」と脅してくる。
「1回冷静に話しませんか?」無駄だとは思いつつも最後の望みをかけて交渉する。
「あぁ? なんだよ?」
「僕のなにが気に食わないんですか? なにか悪い事したなら謝りますけど」
「てめぇは、姫と関わるのやめろ。それで許してやる」僕は唖然とした。この男は宮園さんを自分の所有物かなんかだと勘違いしている。
「いや、あなたが気にするような仲じゃないと思いますげど、それに今は関わってません」
「本当だな? 嘘だったら殺すからな……」
「わ、わかりましたよ」と掴まれて乱れた服装をなおす。本当は承諾なんてしたくなかった。けど、この男は宮園さんの事がまだ好きなんだ。仮にも一度は宮園さんが心を開いた相手だ。僕がこれ以上二人の関係に入らないほうがいい。僕はそう思っていた。
「ちょっとガリ勉!」また呼びかけられる。
今度は誰だ、と顔をむけると恐らく宮園さんの友達の沙也加という女性が僕の方に向かい横断歩道をわたってきていた。
「誰だよ、あの女」男は目を細める。まるで獲物を見つけた蛇のような目だ。
「か、関係ないじゃないですか、僕らの話はもうすんでますよね、帰ってください」
「あ? てめぇに指図される筋合いねぇから。それにいい女じゃん。なんでてめぇみたいな気持ちわるい野郎に寄ってくんだよ」男は口角を釣り上げながら宮園さんの友達をみている。
「ちょっと、アンタなにしてんの」と横断歩道を渡り、僕らの方へ寄ると宮園さんの友達は僕の腕をつかむ。
「こ、これは、沙也加さんには関係ないよ」
「そ、そうじゃなくて、この男が誰だか知ってんの?」
「え? ああ、そうか。うん、色々あって知ってるんだ。宮園さんの元彼だよ…… 」
男はニヤつきながら沙也加さんに近ずき、顔を近ずける
「へぇ、可愛いじゃん。俺の事知ってるみたいだけど、俺は知らないんだよね。だから、こんなオタクほっといて俺とどっかで話そうよ」
僕はため息をついて、「ごゆっくり」と呟き立ち去ろうとする。沙也加さんは心配いらないだろう。僕は彼女の怪力を身をもってしっている。
「あんた…… 姫のこと襲ったんでしょ?」
「……え?」秋の風はよりいっそう体温をさげて、僕は足を止める。
読んでいただきありがとうございます。
評価やコメントお待ちしております。