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妖精との契約


 今回は妖精さん達に温かく迎えられた。

「お帰りなさい」

 シルフさんが一番に飛んできた。

「只今戻りました。イフリートとクレアのお陰で助かりました」

「お役に立てたのなら何よりです」

 ウンディーネさんもどこからともなく飛んできた。

 花の周りや木の周り、はては空にも小さな丸い光が飛び回っている。

「お二人を疑ってごめんなさい」

 シルフさんが頭を下げている。

「いいえ。誤解が解けたなら幸いです。僕達は行くところが出来たので、これで失礼します」

「待ってくれ、俺も連れて行ってくれ」

「イフリート、何を言っているのですか。ここを離れたら長くは生きられないのですよ」

「そうなのですか?」

「はい。妖精は何日もこの森を離れると、生命の糧の魔力が補給できなくて衰弱してしまうのです」

「今回、僕達に力を貸して下さったのは命がけだったのですか。ありがとうございました」

 改めて妖精さん達に頭を下げた、

「子供達が消える事件もありましたので、イフリートとクレアには無理をさせました」

「でも、契約を交わしたら森を離れても大丈夫なのだろ」

「イフリート、いい加減にしなさい。賢者様でもない限り、妖精を養う魔力を持っている人間はいないのです」

「妖精は魔力を吸って生きているのですね」

「はい。この森は純粋無垢な魔力が豊富に存在しているので、妖精が繁殖できているのです」

「確かにここは自然が豊かですものね、納得できます」

 ウンディーネさんの言葉に何度も頷いた。

「タカヒロの魔力は純粋だし、量も豊富だぞ」

 イフリート君は諦めていないようだ。

「イフリートはなぜ僕について来たいのだい?」

「妖精を道具に使いやがったオシリスが許せないのだ。タカヒロはオシリスと戦いに行くのだろ? 俺を連れて行ってくれよ」

「ちょっと待って。妖精を道具にて、どう言うこと?」

 シルフさんが怖い顔をしている。

「オシリスって言う奴は攫った子供を、ゴーレムを動かす核に使っていたのだ」

「なんて事を……」

 ウンディーネさんも顔色を変えている。

「タカヒロと契約を交わしても構わないだろ?」

「タカヒロさんが許して下さるのなら、もう何も言わないわ」

 ウンディーネさんが折れてしまった。

「タカヒロ、俺を連れて行ってくれ」

「条件がある。友達としてなら連れて行こう」

「友達?」

「そうだ、契約をして眷属になろうと考えているなら断る」

「契約をすればタカヒロは主になるのだから、命令に従うのは当然なのだが?」

「僕にはすでに眷属は居るのだ。自分の意思で行動できない仲間は、もう必要ないのだよ」

「分かった。友達として連れて行ってくれ。俺は俺の意思で戦うし、タカヒロに言いたい事を言う。それでいいだろ」

 イフリート君は真剣な表情になっている。

「いいだろう。どうやって契約するのだ」

「右手を広げて突き出してくれ」

「こうか?」

 恐る恐る右手を突き出すと、イフリート君が小さな右手を合わせてきた。手と手が光り、意思の疎通が出来るようになった。

「私も連れて行って!」

 突然騒ぎ出したのはクレアさんだった。

「話しを聞いていなかったの。賢者様でも妖精を養うのは難しかったのよ、二人と契約なんかしたらタカヒロさんの魔力が枯渇して衰弱死していまいます」

 ウンディーネさんが困りきっている。

「だったら、ミリアナ、私と契約して」

「私には魔力がないからダメよ」

「嘘。ドラゴンと戦っているとき、凄い魔力を放出していたじゃない」

 クレアさんがミリアナさんにすり寄っている。

「私はスキルが使えるだけで、魔法は使えないわ」

 ミリアナさんは必死でクレアさんから逃げている。

「クレア、ミリアナが魔力を放出していたのは事実なのかい?」

「一瞬だったけど、凄かったよ」

「そうか、スキルは魔術師の魔法のような物なのだな。剣などを使って放出するか、エネルギーとして飛ばすかの違いだけで、体内の魔力を使う事に変わりはないのだな」

 スキルの源が何となく分かった気がした。

「それがどうかしたの?」

「いや、何でもないよ。少し勉強になったなと思っただけだよ」

「やっぱり、私は連れて行って貰えないの」

 クレアさんが泣き出しそうになっている。

「今回はありがとうね、また遊びに来るよ」

「いや、連れて行ってくれないのなら、引き籠ってやるのだから」

 クレアさんは完全に拗ねてしまった。

「我が儘を言わないの。あなたが引き籠ったら、フェアリーワールドが暗闇の世界になってしまうでしょ」

 ウンディーネさんがなだめるが、聞く耳を持たなくなっている。

「分かった、連れて行こう。ただし、危険な事はしないと約束してくれるかな」

「約束する。約束する」

 肩の上に戻って来たクレアさんが、何度も頷いている。

「タカヒロは女の子に甘いのだから」

 ミリアナさんが呟いたが、声は低くなっていなかった。

「それは無茶です。妖精二人と契約などしたら、タカヒロさんの魔力がすぐに枯れてしまいます」

 ウンディーネさんもシルフさんもかなり慌てている。

「心配して頂いてありがとうございます。でも大丈夫です」

 クレアさんに向けて右手を差し出した。

「やった。ありがとう」

 クレアさんが触れてくると手が光り、イフリート君の時と同じように意思の疎通が出来るようになった。

「タカヒロ、スケッチブックが光っているわよ」

 ミリアナさんの指摘通り、カバンから淡い光が零れている。

「火属性の3ページ目と、光属性の10ページ目に新しい力が加わったようだよ」

 スケッチブックを開くと光の源を探した。

「楽しみね」

 ミリアナさんが微笑んでいる。

「本当に大丈夫ですか?」

 ウンディーネさんが心配そうな顔で見詰めている。

「二人は必ず無事に連れて帰りますから、心配しないで下さい」

「宿敵、オシリスを倒しに行くぞ!」

 イフリート君が肩の上ではしゃいでいる。

「出発だ!」

 機嫌がよくなったクレアさんもはしゃいでいる。

「すぐには行かないぞ。まずはドワーフの国に行って、ミリアナの剣を作って貰わなければならないからな」

「俺のゴーレムも造って貰ってくれよ」

「分かっているよ。ドワーフの国に出発しようか」

 フォブルを呼び出すと一瞬ざわめきが起こったが、僕の前でお座りをしている姿を見て妖精さん達は静かになった。

「では、行ってきます」

 フォブルに跨るとミリアナさんの腰にしがみついた。

「お気をつけて」

 ウンディーネさんとシルフさんが、僕の情けない姿を見て含み笑いを漏らしている。


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