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アニマルワールド


 翌朝は、水浴びに来た小鳥のさえずりで目が覚めた。

「今日は何としても街を探さないといけないね」

「そうだわね」

「敵か味方か分からないが、動物以外の何かがいるよ」

 探索を続けていると、三キロ先に灰色の〇が現れた。

「行ってみましょう」

 ミリアナさんの進行速度が上がった。

「もう少し右の方向だよ」

 レーダーを見ながら進むと、少しずつ森が開けていった。

「数が増えていっているな」

「どれ位なの?」

「初めは四体だったが、別方向から十体が現れて、もうすぐ合流するよ」

「敵だったら厄介ね」

「敵意があるか、出会ってみないと分からないね」

「急ぎましょう」

 道を切り開く必要がなくなったミリアナさんは、木々の間を早足に進んでいった。

(まだまだミリアナさんの体力には敵わないなァ)

 僕は必死で後を追った。

「ちょっと待って、動きが変だなぁ」

 一キロまで近づいたところで〇の動きが変わった。今まではゆっくり直進していたのが、前後左右に激しく動いている。

「どうしたの?」

「どうやら、四対十で戦っているようなのだ」

「動画で確認出来るところまで行きましょう」

 ミリアナさんの行動には迷いがない。

 近距離レーダーに切り替えて灰色の〇を捉えると、クリックした。ポップアップウインドウは現れたが、まだはっきりとは映らない。

 さらに進むと、クッキリとした画像が映し出された。

「ここは猿の惑星か?」

 戦っているのは鎧を着て、剣や槍を持ったチンパンジーで、率いているのは真っ赤な毛並みのゴリラだった。

 対しているのは革鎧を着た二人と、マントを羽織った二人の冒険者のように見えたが、全員に尻尾があり顔は豹と犬、そして猫顔が二体だった。

「ここは獣人の国かもしれないわ」

「獣人の国?」

「師匠に聞いた話しによると、大昔人間と獣人と妖精は仲良く暮らしていた時代があったけど、次第に険悪になりそれぞれの国を作ってお互い干渉しあわない事になったそうよ」

「それって、人間が来てはいけないところに来てしまった訳?」

「ここが獣人の国だったら、私達は招かざる客。排除される対象となるわね」

「だから敵も味方もなく全て灰色なのだ。古代龍はなぜこんなところに、僕達を送り込んだのだろう?」

 神様に近いと言われている古代龍の思惑が、全く分からなかった。

「考えていても仕方がないは、何とかしないと獣人達が殺されてしまうわ」

 ミリアナさんは大剣に手を掛けている。

 獣人とチンパンジーはほぼ互角の強さなのだろうが、数の差で押され始めている。

「適か味方か分からないから、追い払うだけにしておくのだよ」

 走り出したミリアナさんに声を掛けた僕は、人間大のミスリルゴーレムを三体作って戦いの場に向かった。

 騎士風の犬の獣人は右腕を切られて剣が握れなくなり、それをかばっている豹の獣人は三体のチンパンジーに囲まれて、追い詰められている。

 猫顔の獣人は魔法使いのようで、すでに魔力が尽きて戦えないようだ。

「やめろ!」

 ミリアナさんが両者の間に割って入った。

「何者だ? 邪魔をすれば敵とみなすぞ」

 金属製の鎧を着けた赤い毛並みのゴリラが、人間の言葉を喋った。

「勝敗はついている、これ以上戦うなら僕達が相手をします」

 ゴーレムを前面に出した。

「我が国の領土に侵入しておいて、戦いを挑むとは身の程しらずが!」

 ゴリラが上げた右手を下ろすと、ファイアーボムに似た魔法が数発飛んできてゴーレムに当たって弾けた。

「我らの魔法に耐えるとは、ただの人形ではないようだな」

「これ以上戦えば死人が出ます。僕達は引きますから見逃して貰えませんか?」

「そこの密入国者を渡すなら考えよう」

「密入国者なの?」

 ミリアナさんが戦えなくなっている獣人達を見た。

「我が国の情勢を探っていたのを見つけて、ここまで追ってきたのだ」

「何も反論しないところを見ると、本当のようね」

 ミリアナさんは大剣を下ろした。

「分かって貰えたようだが、貴様達は何者でどこから来た?」

 チンパンジーに包囲網を縮ませるゴリラが、警戒心を強くしている。

「私達は人間で、古代龍に呼ばれてやってきたのよ」

 ミリアナさんは、狂暴に見えるゴリラを前にしても臆していない。

「古代龍様に呼ばれただと!」

 そこに居た全員が驚いた表情をしている。

「神である古代龍様が、神聖なこの地に人間を召喚されたりはなさらない。神の名を騙る不届き者が!」

 白いローブを身に着けたチンパンジーが、歩み出てきた。

「神様かどうかは知らないけど、本当なのだから仕方がないでしょ」

 ミリアナさんは、ステッキを持った神官風のチンパンジーと睨み合った。

「ゴセリー隊長、人間は危険だ、直ぐに捕らえるのだ」

「分かっている。大人しく同行して貰おう」

「獣人達にこれ以上危害を加えないのなら同行します」

 獣人達が密入国者だと分かったので、スケッチブックを閉じている。

「武器を渡して貰おうか」

 ゴセリーと呼ばれたゴリラの命令で兵士のチンパンジーが、僕のショートソードとミリアナさんの大剣、それに獣人達の武器を押収した。

「その怪しげな魔道具も没収しておけ」

 白いローブのチンパンジーに言われた兵士が、スケッチブックを奪い取っていった。

「私達をどこへ連れて行くの?」

「衛兵場で取り調べを行い、その後は将軍が判断される事になるだろう」

 ゴセリーさんは先頭に立って歩き出した。


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