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古代龍のダンジョン その7


 ミスリルの広間からさらに進むと、大きな扉の前に出た。

「何か仕掛けがあるのか、開かないなぞ」

「中に人がいます。味方の反応が五つ、敵が一つ、不明なのが四つあります」

 レーダーには緑の〇と赤い〇、それに灰色の〇が現れていた。

「不明とはなんだ?」

「分かりません。僕も初めて見る灰色の反応なのです」

「中にいるのはS級冒険者達の可能性が高いわね」

「扉を開ける仕掛けは見当たらないが、ここに門番が立っていた可能性があるな」

 扉の周辺を調べていたダルさんが、大きな足跡を見つけた。

「S級冒険者達は門番を倒して中に入ったのだろうな」

「門番が復活するまで、俺達はここで足止めか? 冗談じゃないぜ」

 ファブリオさんが激しく扉を叩いたが、鋼鉄の扉はびくともしなかった。

「タカヒロ、壊せるか?」

「ミスリルほど硬くはないでしょうし、動かないから何となると思いいます」

「私の魔力はまだ回復していないから、力は貸せないわよ」

 ゾッタさんが首を横に振りながら後退りしている。

「今回は一人でやってみます」

 3ページ目を開くと扉を描き、背丈より少し低い位置にファイアボムを描いた。

「それだけでいいのか?」

 ルベルカさんが不安そうに覗き込んでいる。

「魔法に不慣れなもので、どれぐらいの破壊力になるか分かりません。出来るだけ離れて防御態勢を取って下さい」

 壁際まで下がった僕は腕が上がらないほど重たくなっている鉛筆で、『Aizawa.takahiro』のサインを入れた。

 眩い閃光と爆発音が響き、鋼鉄の扉は吹き飛んでしまった。

「一人で十分な火力が出せるじゃないの」

 ゾッタさんが小さな声でぼやいている。

 大広間は戦闘の真最中だった。

 対峙しているのは王都で見掛けた氷結の乙女と、冒険者風の男性達だったが、なぜか一人だけ氷結の乙女側についていた。

「どうなっているのだ?」

「奥にいる巨人の眼光に気をつけろ」

 氷結の乙女のリーダー、アンリーヌさんが大広間に入った僕達に一瞥を向けた。

「サイクロプスの眼光には、全ての生き物を操る力があると言われているわ」

 マルシカさんが注意を促した。

「放浪の探究者のメンバーは操られているのか?」

「そうだ。四人までしか操れないようだ。巨人を倒したいのだが、仲間が邪魔をするので奴に近づく事も出来ないのだ、何とか出来ないか?」

 金剛杖で攻撃を防いでいる男性が、ルベルカさんに助けを求めてきた。

 人間同士の戦いを見ているサイクロプスは、楽しんでいるように見える。

「あの化け物と戦うなんて正気のさたじゃないぜ」

 無数の棘がついた鋼鉄の棒を担いでいる巨人を見上げるファブリオさんが後退りした。

 ミリアナさんを除くB級冒険者は、すでに扉の外に避難している。

「しかし、何とかしないと全滅だぞ」

 ルベルカさんが僕を見詰めてきた。

「やってみます」

 イーゼルスタンドにスケッチブックをセットして、サイクロプスを描き始めた。

「タカヒロ、危ない!」

 周囲に気を配っていたミリアナさんが、サイクロプスが僕に顔を向けてきたのを見てタックルしてきた。

 今まで僕が立っていた場所に、放浪の探究者の魔法使いが放ったファイアボールが飛んできて弾けた。

「奴は魔力を感知しているようだ、逃げろ!」

 僕を目がけて振り下ろされた鉄棒を盾で受けたルベルカさんが、一撃でガックリと膝を崩した。

「準備しておいて正解だったよ」

 ミリアナさんに守られている僕は、7ページ目に『takahiro』のサインを入れた。

 アイテムボックスにかき集めて入れておいたミスリル鉱石が飛び出して、サイクロプスと同じ大きさのゴーレムが現れた。

「ガ〇ダム、サイクロプスを倒せ!」

 叫んだがゴーレムは動かなかった。

「どうした、戦え!」

 右の拳を振り抜くと、ゴーレムが同じ動きをしてサイクロプスを殴った。

「大きすぎて操縦しないと動かないようだ」

 スケッチブックを足元に置くと、ファイティングポーズを取った。

 サイクロプスが鉄棒で殴りかかってくるのを腕で受け止めたが、ミスリルは壊れなかった。

 左ストレート、右フックに回し蹴りと、テレビで観た事のある格闘技の技を繰り出すが、素人技では簡単に躱されて戦いが長引いていく。

「タカヒロの邪魔はさせないわよ」

 ミリアナさんが大剣を構えたところに、放浪の探究者の戦士が襲い掛かってきた。

 ヒビが入っていた大剣が三つに折れ、手甲が切り裂かれた腕に血が流れている。

「ヒラリオ! よそ見しているのじゃないわよ。あんたの相手は私でしょ」

 アンリーヌさんの剣撃がヒラリオさんを弾き飛ばした。

「ムサイ! あんたも、どこへ行こうとしているのよ?」

 僕に視線を向けたムサイさんに、オルタさんの槍先が走った。 

 辛うじてかわしたムサイさんの頬に血が流れている。

「全員がお前を狙って来ている。サイクロプスがゴーレムを壊そうとしている内に、あいつの頭を吹き飛ばせ。準備が出来るまで俺達でお前を守って見せる」

 ルベルカさんが盾を構えて僕の前に立った。 

「そんな事が出来るなら、私達も加勢するわ。光の壁よ我らを守れ、マジックシールド」

 フロリアさんが傍に来て魔法防御を展開した。

「三分、時間を下さい」

 3ページ目に太い炎槍を描き先端にファイアボールを描き足すと、ミスリルゴーレムを動かしてサイクロプスに抱き着かせた。

 放浪の探究者の攻撃は激しく、マジックシールドが破られそうになっている。

 岩をも砕くゴーレムの強力な力で両腕ごとがっしりとホルドして圧し掛からせると、サイクロプスが重みに耐えかねて膝を崩した。

「行きます!」

 3ページ目に『A.takahiro』のサインを入れると、動けないサイクロプスの頭部を目がけて飛ばした。

 火力十倍のフレームランスと、火力十倍のファイアボールが同時に弾けて火力が百倍に膨れ上がる。

 突風を伴う爆発とともに荒れ狂う灼熱の炎は、ミスリルゴーレムを道連れにサイクロプスを灰燼に帰していく。

 真鍮の盾とマジックシールドに守られていた僕達は熱風から逃れる事が出来たが、周りで戦っていた氷結の乙女と放浪の探究者の数人が壁に叩き付けられて倒れていた。


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