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幕間3氷結の乙女のアンリーヌ


 私の名前はアンリーヌ。国内に二組しかいないS級冒険者、氷結の乙女のリーダーをしている。

 王都に警戒警報の鐘が鳴り響き、B級以上の冒険者に緊急招集が掛かった。

 私達のパーティーも正門に急いだ。上空にドラゴンが飛来して、王都全体が薄暗くなっている。

「古代龍様、アスラン王国に何か御用でしょうか?」

 私は冒険者代表としてドラゴンに近づいた。戦闘になれば警戒態勢の王都でも、一瞬で崩壊してしまうだろう。

「やっと揃ったようだな。氷結の乙女、そしてこの世界を変革する者よ。アスラン王国とウスラン帝国の国境付近に新たなダンジョンが誕生した。攻略は難攻するだろうがこの世界を変える第一歩だ、心して挑むがよい」

「それを伝えるために、わざわざお越し頂いたのでしょうか?」

 重たく威厳のある声に、片膝をついて頭を下げた。

「世界を変革する者よ、これを授けよう。次なる地で再会するのを楽しみにしているぞ」

 巨大な鱗が一枚、私の前に落ちてきた。

「ありがとうございます」

 古代龍様に認められた私は、世界を変革するために尽力しようと心に誓った。

 ドラゴンが飛び去ると、兵士にも冒険者にも安堵の表情が浮かんでいた。


 翌日、私達は冒険者ギルドに呼ばれて、久し振りに赴いた。S級冒険者は仕事を探しに行かなくても、直接の依頼が殺到しているのだ。

 会議室の上座にはギルドマスターのセイン氏が座り、右側の席には正義を追求してきた私達氷結の乙女が、左側の席には強さを追求してきた放浪の探究者のメンバーが座っている。

 どちらも他の追随を許さない強さを誇っているS級冒険者だが、思想の違いから仲が悪かった。

「今日は忙しい中を集まって貰って感謝している。すでに知っていると思うが新しくダンジョンが生まれた。国はこのダンジョンを古代龍のダンジョンと名付けた」

「古代龍のダンジョンとは大層な名前だな」

 真っ黒な鎧を着た放浪の探究者のリーダー、ヒラリオが皮肉っている。

「古代龍様が報告に来て下さったのだ、相応しい名前ではないか」

 私は神を冒涜するヒラリオの態度が気に喰わなかった。

「やめんか! 今回の任務は古代龍のダンジョンの調査団の護衛だ、国王からの依頼だが受けるかどうかは君達の判断に任せる。報酬は一人当たり白金貨二枚、そして回収したアイテムは鑑定後、国宝級の物を除く全てが君達の物になる。悪い話しではないだろ」

「私達はその任務を受けよう。古代龍様からも呼ばれているからな」

 私がメンバーを見渡すと、三人は大きく頷いた。

「本当にお前達が呼ばれたのか? 昨日はたまたま俺達が王都を離れていたから、お前達に声が掛かっただけじゃないのか」

 ヒラリオが口元を歪めて笑っている。

「悪の力さえも欲する者に、神の声は届かないわ」

 仲間である聖女カトリエが静かに口を開いた。

「力こそが全てよ、力のない者は虫けらと同じよ」

 暗黒剣士のムサイが高らかに笑っている。

「いい加減にしろ。放浪の探究者は依頼を受けるのか?」

「受けてやろう。今度こそ、どっちが頂点に立つのが相応しいかはっきりさせてやる」

 放浪の探究者のメンバーが私達を見て、淫靡な笑みを浮かべている。

「急だが、出立は二日後だ、調査団は宮廷騎士団と宮廷魔術師団、合わせて八十名だそうだ。S級冒険者の名に恥じぬように頑張ってくれよ」

「俺達に任せておけ。誰一人死なせたりはしないさ」

 ヒラリオは大口を叩くと、仲間を引き連れて会議室を出て行った。

「昨日はご苦労であった」

 私達だけになると、セイン氏が頭を下げてきた。

「当然の事をしただけです」

 ギルドマスターも放浪の探究者の事は、あまりよく思っていないようだ。

「ところで、古代龍の鱗はどうしたのかね?」

「古代龍様の御期待に答えるために、職人に盾に加工して貰っています」

「そうか。今回も厄介な仕事になると思うが、宜しく頼むぞ」

「お任せください」

 護衛任務は私達だけで十分なのだが、国王様の依頼だったのでマスターは放浪の探究者にも声を掛けたのだった。

 私達はギルドを後にすると、出立の準備をするために街にでた。


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