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王女様・告白される

 リリィがバイトから帰る夕刻の時間、一人の若い男性がマンションの敷地に入る前で待っている。


「あの、僕この近くのK大という大学に通っている神田一郎といいます。この間、ディ〇ーランドであなたを見かけて一目惚れしましたお付き合いしてください!」


 K大というのはエリートが通う大学であり、その大学に通う男子学生は『K大ボーイ』などと呼ばれ、世間の女性からはイメージの良い大学である。


「あら、このわたくしに求婚ですか。あなたはどこの国の王室の方ですの?」

「いえ、王室……ではないですが、父は医者をしていて、僕も将来は医者になりたいと思っています」

薬師やくしの家の子ということですね。諦めなさい! わたくしはあなたとお付き合いできない環境にあるのです……」


 リリィはいずれ異世界に帰って、どこぞの王子と結婚すると思っていたので、一郎の申し出を断った。


「なぜです? 僕とお付き合いできない理由を教えてください!」


 一郎はリリィのことが諦められない。


「そうですね。わたくしは今や飼い猫、こんなハチの巣みたいなちんけな城で銀縁メガネに養われている身です……」


「ハチの巣ってこんな大きな高級マンションがハチの巣ってどういうことですか?」


 一郎は目の前にそびえ立つビルのような大きさの高級マンションを見て、リリィがどんな境遇なのかわからなくなり、頭が混乱した。


 そこに工事現場で仕事を終えた大司教・クリスが帰ってくる。


「姫様、今お帰りですか? わたくしめもいま仕事が終わり帰ってきたところです!」


 クリスは元々体格の良い男であったが、この世界にきて工事現場で働くうちに筋肉質になり逞しい外見になっていた。


(え、このイカツイおじさん何? いま『姫様』とか言ったよな? リリィさんは危険な組織のお嬢様とかなのかな?)


 一郎は高級マンションに住み、イカツイ男性に『姫』と呼ばれるリリィをマフィアの娘かなにかではないかと勝手に想像を膨らませる。


 そこに黒塗りの高級車に乗った雄一が仕事から帰ってきて、リリィとクリスに気づき車を止めて降りてくる。


(なんだこの人? 高そうなスーツに革靴、そしてあのいかにもインテリそうな顔、まさか……?)


 一郎は雄一を見て完全に勘違いし、リリィの方を見る。


「わかりまして! わたくしは今はあのメガネの飼い猫に過ぎないのです。心まではあの男に許したことはございませんが、この世界ではどうにもならないのです……」


(この世界だって! やっぱりマフィアの関係者かなにかか!)


 完全に勘違いした一郎は逃げるように帰って行った。


「おいリリィ、あのお兄さんは誰なの?」

「わたくしのファンですわ! ところでK大というのは庶民の大学ですか?」

「基本的にこの世界には庶民の大学しかないよ……」


 雄一は一郎がディ〇ニーマニアでリリィに声をかけてきたのかと勘違いした。


「そういえば雄一、わたくし電車の中でよく英語とやらで話しかけられますが、みなわたくしとお話ししたいのかしら」


「いや、見た目が外国人と似てるからでしょ。そういえば夕飯何にしようか?」


「カレーがいいですわ! カレーを所望しょもうします!」


「わかった。カレーにするか」


 こうして王女様に恋した若き学生の恋は儚く終わるのであった……。


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