14 カゲロウカンゲキ
シュガーが自室に戻ると、すぐに部屋の扉をノックする者がいた。
「はい、どーぞー」
「お待たせ致しました。シュガー様」
「……主、お待たせした」
二人とも同じタイミングで来たようだ。先に部屋に入ってきたのはテナではあるが。
「全然待ってないぞ」
むしろ約束の時間の10分前である
「シュガー様へのご用向き、約束のお時間前にお伺いするのは当然かと存じ上げます」
「そ、そうか……、……それで早速で悪いんだが報告を聞こうと思う、二人とも座ってくれ。俺からお願いした件でもあるし、カゲロウから聞こうか」
シュガーはそういうと、執務デスクの前にあるコ型のソファに座るように促した。
「主、……主から承った三つ。近年変動した周辺地形、現在の国の情勢、モンスターの生態変化についてですが……まず先にお伝えするべき件がありまして……」
カゲロウから報告を受け、その内容に呆気に取られていると、カゲロウから道中入手したという戦利品を渡された。
・【エンダーゴールドベアの黄金毛】:ゴールドベアが進化を得た個体、エンダーゴールドベアの体毛。魔力伝導率が高い。
・【エンダーゴールドベアのクリスタル】:ゴールドベアが進化を得た個体、エンダーゴールドベアの緑色の宝石。
・【エルダーデザートファングのクリスタル】:デザートファングが進化を得た個体、エルダーデザートファングの赤色の宝石。
・【エルダーエンシェントシルバーホーンのクリスタル】:エンシェントシルバーホーンが進化を得た個体、エルダーエンシェントシルバーホーンの青色の宝石。
「……なんっこれっ」
そこには見たことがないアイテムがテーブルに並んでいる。又、当時を覚えている限り”ゼクステリア王国”と”アヴァロンヘイム王国”の山間にはそんな城なんてなかったはずだ。それでいてカゲロウから先に伝えられたその”グノーシス”とかいうモンスターなのか……何なのかも不明だ。
「つまり、その知恵と進化を司る”グノーシス”とやらがどういう訳か各地のレアモンスターに似ている獣を進化させて、新しいエルダーなる勢力をつくっていたと……、その進化モンスターのドロップ品がこれか……」
(この世界に来てからの初めての衝撃的な内容……。どうしたものか……。とりあえず待ってるってことだし”ソレ”に会いに行ってみるか。)
この世界を知り尽くしていたシュガーは、思いもよらない新イベントに内心、興奮と期待で満たされる。
「……主、どういたしますか」
「ありがとう。とりあえずこのドロップ品は預かっておくよ、レアだし!……あと流石だなカゲロウ、この1日そこらでよく調べたもんだ」
「……」
(……くぅー、褒められたー)
シュガーからの賞賛を声にならないほど噛みしめるカゲロウ。
「今日は疲れてると思うから良く休んでくれ。そいつを見に行くのは明日にしよう。……あとこれ、いわゆる頑張ったで賞ってやつだ!」
シュガーはそう伝えるとアイテムインベントリの中から適当なアイテムを取り出す。
「”月光の護符”というものでな、夜間での活動が多いカゲロウにはぴったりだろ。」
「あ……」
「あ……?」
アイテムをカゲロウの手に渡した途端、顔を下に向けるカゲロウ。そこには一滴の雫が床に落ちている。
「ありがとうございますぅうう」
(……っ拙者、感激でござるぅうう)
「泣いてもらうほどの代物ではないのだけれど……。まあ、喜んでもらえてよかったよ。お疲れ様!……それで次はテナの話だけど……」
「シュガー様、どうやら私の件もその"グノーシス"とやらが関係した話になるのですが……」
テナからの話も聞き、急ぎ”ソレ”に会いに行くことを決めるシュガーであった。