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幸若舞
俺は考えた
考えに考え思いついたのはあの舞だ
織田信長が桶狭間の戦いの前に舞ったとされている
幸若舞の「敦盛」
限りある命の中で一花咲かせるといわんばかりに
俺は「人間五十年」という言葉しか知らない
だが自信をもって踊れると確信する
踊ってしまえば何かが変わるような気もするが、この際致し方ない
俺はそう決めると蘭丸を呼んだ
「蘭丸はいるか!」
すると襖の奥から小走りで近づく足音が聞こえた
「如何しましたか?」
「今宵は敦盛を舞うことにした。広間に簡単でも構わん舞台をこしらえておけ」
「仰せのままに」
そういうと彼は出て行った
俺は本当の意味で今日「織田信長」になる
昔はあったかもしれんが過ぎた話
今を生きることこそが大事なのだ
俺の思考はだんだんと高校三年生だったころの物を失いつつある