朝
「殿。おはようございます」
僕を呼ぶ声に目を覚ます
「うーん」
朝日が差し込む
「おはよう」
そこには家臣の丹波長秀が座っていた
整えられた髭に細長く光る眼。
瞳に反射する光からは清々しく、空気が透き通っていることがうかがえる
この世界は元の世界とは違い、空気がおいしい
僕がいた元の世界。その世界のことはわかっているのに、僕は僕の名前を思い出せない
夢の中で言っていた『時間がない』とはどういうことなのだろう
「殿、本日のご予定は如何いたしますか?」
予定などない。何をしたらいいもかもわからない
「そうだな、まだ決めてないや」
そう言うと丹波は怪訝そうな顔をした
「先日から殿は一体どうなされたのですか?以前までの覇気がございませぬ」
「ごめん・・」
そう言いふと彼の顔を見ると彼の背中にぼんやりと文字が見えた
「そ、それはなに?」
そう後ろを指さす
丹波は指さした方を見るが
「殿!何も変わったありませんよ」
そう言うが僕には確かに見える
『城下を周る』
『家臣と話す』
『武芸に励む』
『寝る』
文字も浮かんできた。どうやら選択肢のようだが僕にしか見えないらしい。
(なぜ僕はそれが選択肢だとわかる)
「殿、それで本日は如何なされますか?」
「それなら、僕は『城下を周るとするよ』」
「御意、それでは私は馬の準備をしてまいります。準備ができましたら蘭丸を使わせてくださいませ」
「わかった」
なんとか凌ぐことができた
でもさっきのは何だったんだろう
いつの間にか消えちゃっ
とりあえず準備しなきゃ