出会い(14)
第一部終了です。
「――お兄さん」
あんな話しをした後では出来る事も出来ない。なので廊下でぼーと過ごしていると、何時来たのか分からないがユーリに声を掛けられた。
「どうした?」
「いや、何も。……ただね、」
一拍置いて一言。
「魔力が荒れてるなぁ〜と思って」
相も変わらずゴスロリ姿のユーリは、そう言うとふふっと笑った。
「何があったのかは知らないけど、お兄さんは変わらずお兄さんでいてもらわなくちゃ、私が困るよ。
ぶっちゃけお兄さんはどうでもいいんだけど、私にとっては大切……というより重要な人だからね」
……どうでもいいけど重要? どっちが正しいんだ?
「だって……私の願い事を叶えるには、お兄さんが必要なんだもん」
「願い……事?」
「そう、願い事。私がずっと叶えたかった夢。私が生きているうちに描いた夢じゃなくて、私が死んでから思い描いた夢」
……そういえば、ユーリは生者ではなかった…………あれ? 何故だ? 初めて会った時、初めて俺がユーリを見た時、俺はユーリを左眼で視た。なのに何故、今のユーリは右眼で見ている?
「……夢って、何だ?」
無意識のうちに言葉を漏らした。……いや、意識した上で、無意識に言葉を漏らしたのかも知れない。
「私の夢、それはね――」
長い……いや、永い空白。
「――死ぬ事、だよ」
ユーリの口から出た言葉は、以前から知っていた。初めて会話した時も、死にたがっていた。
それでも俺は、息を呑んだ。
「だからね、お兄さん」
その続きは、言われなくとも分かる。
「約束だよ? 絶対に私を殺してね?」
こうして、俺はユーリとお互いがお互いと共に存在する理由を完全に理解した。
俺という存在はユーリの望みであり、ユーリという生きた死者は俺の希望でもある。
そう。この瞬間、完全にお互いの利害が一致した。
陳腐な言葉を用いるなら、この瞬間こそが必然であり、運命だったのかも知れない。
いや〜結局第一部、終わりました。第二部……というか、第二章が何時更新かは分かりません。……夏休み、欲しいな。