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鬼姫  作者: 及川
13/15

出会い(13)

「ねぇ、孕ませるって本当?」

 強気な巫条が珍しく怯えた表情を見せる。……無理もない。いきなり孕ませるだのどうのとか言われたら困るだろう。

「それは勿論、」

 嘘だよ。

「……え?」

「嘘だよ、嘘。だって俺、子供作れないもん」

 自嘲気味に嗤う。

「俺の左眼が普通じゃない事くらい分かってるだろ?」

 そう言って、自分の左眼に優しく撫でるように触れる。

「この眼はな、呪いなんだ。俺が人じゃなくした人からの呪い……」

 人じゃなくした代償に人でなくなった俺の戒め、生き恥じ。

「だからな、人じゃない俺が子供を作れる分けないだろ?」

 例えば、レオポンのように似た種類同士を掛け合わせて出来る生物もいる。

 でも俺は違う。姿形が似ているだけの異形。異質な存在。世の理から外れた存在。

 俺が魑魅魍魎を嫌うのは過去のトラウマではなく、単純な『同族嫌悪』。

 俺が早夜を抱くのは現実逃避でもある。でもそれは早夜も同じだ。早夜も俺に抱かれるのは現実逃避。俺が人でなくした人は俺にとっても大切な人で、早夜にとっても大切な人。何故ならその人は――

「刹君!!」

「……どうした?」

「あれの事考えていたでしょ」

 あの人、とか彼女、ではなく『あれ』。早夜の中では『あれ』はただの異形でしかない。

「あれとか言わない。あの人は早夜の……」

「言わないで」

「…………」

「それ以上言ったら刹君でも許さない」

 比較的クールで大人しい早夜が宿す殺意。それは例えるなら――地獄の業火。

 目立つ事なく大人しい炎。だがそれは、消える事を、弱まる事を知らない。

「刹君はあれの事なんか考えなくていいの。ただ私だけを見ていればいい」

 吐き捨てるように言う早夜。隣りで眼を丸くしてそれを眺める巫条。そして薄く嗤う俺。

 呪う者に呪われた者。呪いを断ち切る存在。

 運命なんて言う、後付け専用の不確かで適当な言葉は好きではないけれど、俺達が揃ったのは運命なのかも知れない。

 少なくともきっと、これから先何かが起こるのだろう。

 何かが起きた時、俺は何を考え、何をするのだろうか。

 なんて考えている俺は嘘。

 だって、この世で起こる事なんて、どうでも良いのだから。

ちょっと読者の方々の感想やメッセージの多さにびっくりしました。なので続き、書いてみました。……いや、別に18禁が書けないんじゃないですよ? だってほら『心変わりは人の世の常』って言うじゃないですか。

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