目覚め
ザリッザリッ
ヤスリのような物で顔を撫でられた感触で意識が徐々に覚醒した。
顔を押さえられ、再びザリッザリッと撫でられた。
まだちょっと朦朧とするが周りからミィッミィッと動物の声が聞こえてくる。
この鳴き声は猫だなと思うと、先ほどからザリッザリッとして顔を撫でられたと思っていたのは猫特有のざらっとした猫舌かと思った。
ミィッミィッと鳴いているのは乳飲み子の子猫だなと声の感じで推測する。
顔を舐めているのは親猫でご飯の催促かと思い用意しようと体を起こそうとするが起き上がれない。体の感覚もおかしい。目を開く。
物凄い大きな顔の猫が目の前で舐めているのが見える。虎並み、いやそれ以上の大きさだ。
舌が大きい、表面のザラザラ部分がよく見える。猫好きには堪らない夢の巨大猫。これは抱き付き撫で回すのが最優先と瞬時に思い体を動かそうと思うが感覚がおかしい。先程も感じたが何か違う。
手を見る。猫の手だ。目を閉じて再び見る。間違いなく猫の手だ。ニギニギと手を動かすと自分の感覚で動いている。思考が停止するが未だに顔を舐められている状況だ。
舐められ続けている間、思考は停止。満足したのか親猫は舐めるのはやめて他 の子猫を舐め始めた。そこで停止していた思考が働き始める。
手を見る。猫の手だ。何度も見るが変わらない。体全体を見える範囲で見ていく。色は黒。まだ子猫だからか毛はふわふわしている。上から徐々に尻尾が有るだろうお尻の方を見ていく。尻尾が有る。有るのは有った。長くちょっと先っぽが曲がってる鍵尻尾が2本。現実逃避しつつ動くのか試す。動く。感覚も有る。勿論2本分。2本かぁ。2本なんだなぁとか停止している思考は現実逃避しつつ受け入れる。
奇形なのか元々なのかわからないが頭が2つ有る豚とかを知っているため、尻尾が2本有ることも有るんだろうなと深く考えない。深く考えるならどうやら自分は猫だということ。人の時の記憶が有るということの2つ。
取り敢えず、生きるためには色々と覚悟が必要だということだ。親猫の乳を吸うことが最初の試練だなと思いつつこれからのことを思うと深い深い溜め息を吐いたのだった。