表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

溢れる

作者:

抱いてしまった気持ちに整理をつけて凪いだ状態にするまでこれほど時間がかかるとは思ってもみなかった。

これが初めての「感情」ではないというのに。

彼のことを考え出すと今にも溢れそうになる。

この水槽から水が溢れてしまった時、全ては終わってしまうだろう。


生温い関係を崩したくなくて逃げた先にあったのは暖かい監獄のような場所。

感じることはできるが触れることはできない。

そのことに焦ったさや触れられる彼女への醜い嫉妬を覚える。

いつか自分もその位置に行きたい、なんて幼い少女の夢のように考えることさえも禁じられる。

早くここから抜け出したいけれど、それを彼は許さないかのような瞳で私を見る。

その瞳に少しでも熱いものがあれば夢を抱けるのにと思ってしまう。

追い討ちのように彼女がこちらだけに見えるように勝ち誇った笑みを浮かべている。

彼と彼女の非情さを肌で感じながら、今日も水を溢れさせないように平穏に過ごしていく。



溢れた。溢れてしまった。

ついに感情を漏らしてしまった。

早くここから出なければ。

もうここにいることはできない。

外へ出ようとした時、彼が扉を開けた。

大きめの荷物を見て目を見開く。

どうしてそんな顔をするのだろうか。

どうして彼は私に触れているのだろうか。

どうしてそんな泣きそうな顔をしているの…?



目から涙が溢れる。

止まることを知らないそれは長い時間溢れ続け私の頬を濡らす。

彼が乱暴に抱きしめ優しく涙を拭ってくれる。

夢でも見ているのだろうか。

決して触れることのできないそれに触れている。



「ようやく落ちてきたな」



彼はニヤッと笑って噛み付くようにキスをした。


男は、ただ自分しか見ていない彼女を欲した。

そのためになら浮気でもなんでもするそうです。

クズですね。

捕まってしまった彼女の幸せはきっとあると思いたい。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ