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240.きゃあ(棒

 あっという間に一週間が過ぎる。毎日誰かが誘ってくれて満喫できた一週間だった。

 中でもアイシャたちと牧場へ行ったことが思い出深い。

 クーシーの群れに囲まれ、これでもかとモフモフさせてもらった後にシロクマに乗りゆったりと牧場を眺めたんだ。

 ついでといっては何だが、牧場の敷地を広げるべく新たに土地を購入しておいた。外敵からの防衛目的なので、我が土地の範囲は外枠だけに留めている。


 他のみんなは動いてくれてるというのに、俺だけこんなにのんびりしてていいものか。

 実のところ何もなければ俺って仕事が全く無いんだよね。夢のニート生活を満喫できるというわけだ。

 バカンスのつもりで二週間くらいなら良いんだけど、ずっと仕事が無いってのも座りが悪い。このまま呆けてしまいそうでさ。

 分かっている。自分の社畜精神は。

 でも、それほど勤労意欲の無い人でも自分だけが何もせずぼけーっとしていると、「どうしよっかなー」って思ってくるって。

 なんて思いながら、公園でハトに餌をやっているとあっという間にその日が終わってしまった。


 ◇◇◇


『良辰様。本日の夕刻までにはそちらに到着予定です』


 朝日が昇る頃にフェリックスから通信機越しに連絡が入る。

 いよいよか。

 フレイの方はどうなんだろう?

 彼女はタイタニアの部屋で居候している。ずっとガーゴイルの操作があるから、部屋で食事をとっているし、風呂とトイレの時以外は部屋から出てくることが滅多にない。

 途中、心配になって集中するフレイの邪魔をして話しかけたことがあった。

 その時、彼女は「問題ありません。聖者様にお会いする前、野宿しながら一ヶ月以上作戦行動をしておりましたから」なんて言うんだよ。

 魔族のみなさんは、もう少しオーバーワークのことについて考えた方が良いと思ったものだ。さすがにフレイの手前、口に出すことはなかったけど。


 そんなわけで、フレイと話をするために自宅に戻った。

 まだ寝ているかな?

 後ろ髪引かれる思いながらも、タイタニアの部屋の扉を叩く。


 トントン――。

 

「聖者様ですか? どうぞ、お入りください」

「疲れているところ、ごめん。タイタニアは?」

「まだ寝ております。ですが、もう起きる時間ですし、聖者様が就寝中に入られても喜びこそすれ気分を害すことはないでしょう」

「そ、そうかな」

「そうですとも。私もそうです! いつでも来ていただいて構いませんよ! 同じお部屋でも!」


 あちゃー変なスイッチを押してしまったよ。

 でもま、相変わらずな調子で良かった。この分なら、心配しなくてもよさそうだ。


 ガチャリ――パタン。

 扉を開け、すぐに閉める。


「服を着るか、シーツを被って!」

「私は気にしません」

「俺が気になって仕方ないから!」

「それほど……見るに耐えない姿だったでしょうか……」

「いや、そんなことないから。どうしても体に目が行くだろ」

「是非!」


 痴女め!

 裸を見られて嬉しいとか……。

 大きく深呼吸をして、再度扉を開ける。


 ガチャリ――パタン。

 扉を開け、すぐに閉める。何このデジャブ。

 今度は扉の前まで来ているじゃないかよ!

 何してんだ、フレイは。


「だから、服を。そうか、このままここから聞くよ」

「そ、そんな……」


 ドアノブが動いた!

 賢い俺はドアノブを押しとどめる。

 しかし、フレイの方が力が強い。

 まだ大丈夫だ焦る時ではない。この扉は内開き。開かないように引っ張りながら、話をすれば良い。

 フレイの裸を見られるなんてラッキーじゃないかって思うかもしれない。だけどさ、見て見てーって言ってくる痴女の裸を見ようと思うだろうか。

 恥じらいを持ってくれたら、こっちも見たいと思うのだが……。いや、無理やり覗き見しようってわけじゃないけど。物の例えだよ。

 よおし、諦めたのか引っ張る力が無くなった。このまま扉を閉めてしまおう。


「っと」

「きゃあー」


 棒読み、棒読みだよなその悲鳴。

 安心しきったところで不意を突いて一気に扉を引かれ、バランスを崩した俺はフレイの上に乗っかってしまった。


「立とうとしているのに、腕を掴んだらまた倒れるから」

「ここは立つ時にお約束で、触るんじゃないんでしょうか。むしろ揉む……」

「こらあー!」


 タイタニアがそこで寝ているというのに、何てことを言ってんだ。フレイってこんなんだっけ……最初に会った時はもっとこう、国の官吏みたいじゃなかった?

 いつから、こんな痴女になってしまったんだろう。あ、でも、魔族の国と調整してくれてる時とかお仕事モードなら、以前の通りだ。

 オンオフが激しいタイプなのかもしれん。

 付き合わされる方の身にもなってくれよ。


「だから、腕を掴んで引っ張るなと」

「きゃあ」


 棒読みの悲鳴とともに、太ももで俺の膝を挟もうとしてくるし……。


「もう、諦めろ、な、ほら、 シーツを被るのだ」


 ようやく立ち上がれたところで、今度は尻尾を足元に伸ばして来た。

 尾先を掴んでこれ以上動かないようにしてやろうとしたが、嫌な予感がして触れぬようにする。


「あれ、フジィ、おはよう? 一緒に寝る?」


 うわあ。タイタニアがむくりと起き上がってしまったじゃないか。

 彼女はまだおねむなのか、ふああと欠伸をして目を擦っている。


「一緒に寝ましょう、まだ朝も早いですし」


 フレイが俺に腕を絡ませきた。


「ワザとだろ……ほんとにもう。魔族の進捗を聞こうと思ってたけど、後でいいや」

「そういうことだったのですか」


 二の腕に感じたむにむにが離れ、フレイがその場で片膝をつく。全裸で。

 しかし、翼を前にやり、見えないようにしている。

 どうやら別のスイッチが入ったようだ。

 最初からこれならなあ……。


「魔族の首脳とその護衛がこちらに向かっております」

「いつ頃到着しそうなんだ?」

「この分ですと、明日の昼までには到着する見込みです。夜は動くことができませんので」

「了解。となると、クリスタルパレス公国の方が早いか」

「となると、公国の方は本日でしょうか?」

「うん。この後、みんなを呼ぼうと思ってる。受け入れ準備をしようと思ってね」

「承知いたしました。それでは、私もすぐに着替えます」

「よろし……待て、俺が出て行ってから着替えろって」

「一刻も早くと思いまして」

「いや、これから他のみんなに放送しなきゃならないし、そこまで急がなくても大丈夫だよ」


 聞いちゃいねえ。

 クローゼットを開いて、下着を……。すぐさま踵を返した俺は思い出したようにタイタニアに声をかける。

 

「タイタニア。後で一階でね」

「うん。着替えてすぐに降りるね」


 右手をあげてひらひらさせながら、部屋から出る俺であった。

 フレイから魔族がどこまで来ているか聞いただけなのに、妙に疲れたな……。


 この後、例のぴんぽんぱんぽーんで放送をして、マルーブルクやリュティエ達を集会所に来るように伝えた。

 集合時間はお昼くらい、とアバウトだったけど……。

新作はじめました。ぷにぷにスライムと錬金術屋のほのぼのしたものになります。

ぜひぜひチラ見していってください!(リンクは画面下にあります)


・タイトル

錬金術屋の魔改造スライムは最強らしいですよ~異世界で拾ったJKの現代知識と超レア素材で、底辺からお店を立て直しちゃいます


・あらすじ

ぷにぷに可愛いスライムでつええしたり、ヒロインと100均などの商品を参考に便利アイテムを開発して売ったりするのんびりしたお話しです。


※リンクは画面下にあります!

※大変失礼しました。リンク先が間違っているという大失態を。

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新作はじめました。是非是非、ご覧ください<

現代知識で領地を発展させ、惰眠を貪れ!

・タイトル

聖女に追放された転生公爵は、辺境でのんびりと畑を耕すつもりだった~来るなというのに領民が沢山来るから内政無双をすることになってしまった件。はやく休ませて、頼む~

・あらすじ

国を立て直した元日本人の公爵が追放され、辺境で領地を発展させていく物語です。

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