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青色模様  作者: 海老優雅
7/11

雨宮パート③

ごめんなさいかなり短いです


「よお、早乙女、こんなところにいたんだな。驚いたぜ」

 そんな一声とともにそいつはやってきた。

 彼の名前は天草くん。下の名前は覚えていない。

 剣道部の主将をやっている人。いい意味でも悪い意味でもよく目立つ。女子の間でもよく話題に出る人だ。半分は絶賛する言葉でもう半分はひどい批判的な言葉だ。

「ちなみにさっきの話、勉強は騙されないためにするんだと思うよ?」

「それはいいけど天草、最初っから聞いてたとかなにお前ストーカーなの?」

 私も同じことを思った。批判的な評価の多い理由はやはり彼のこういう性格に出ているのだと思う。

 彼は好きな人や物に対してはそれがどんなに他の人が好まないものだとしても色々な手を使って求める。

 その姿勢はイマドキの高校生らしくない。イマドキの高校生はみんなが好むものを好きだといったものを好きになり嫌われるものを嫌いになる。それがイマドキの高校生の常識だ。それに従わないものはみんなの輪から外れてひとりになる。

 しかも女子ならまだサブカル女子というカテゴリに入り、同じジャンルの人と関わればいいのだから問題ないが、男子はおそらくそうはいかないだろう。

 男子は女子と違って派閥などがないため、逆に一度はぐれると中に戻るのは難しいと聞いたことがある。

「はは、ストーカーなんて人聞き悪いな、俺はお前が心配だっただけだって」

おそらくこれは本心だろう。でもだからこそ怖い。ストーキングも否定しなかったし。

「蓮くんの知り合い?」

「ああ雨宮は初対面か。こいつは天草信弥。剣道部主将で運動も勉強もできて顔までいいクソ野郎」

「よろしくね雨宮さん?それで早乙女、このかわいい女子の詳細は?」

 やっぱり私のことなんて知らなかった。別に傷ついたりするほどのことではないが、少し癪だ。

「あーえっとこいつは雨宮詩乃。俺の幼馴染で一応吹奏楽部でフルート吹いてる」

「あ、蓮くん。私部活辞めたよ?」

「だそうなのでさっきの訂正でいまは帰宅b…ってはあ?なにお前もう辞めてきたの?昨日もう少し考えるっていってたじゃん」

「はははー」

 朝練で顧問の顔見て、一緒にいたあまり好きではないほうの先輩の顔を見て、その場の衝動で辞めてきたなんていえない。

「ま、まあそれはどっちでもいいんだけどさ。お前たち付き合ってるの?」

 天草君の顔は笑っているのに眼は笑っていない。飾られたぬいぐるみのような表情だった。どんな意図があるのだろうか。単純にリア充だったら憎いというだけだろうか。

「はいそうです。蓮くんと私は大人の男女の関係です」

 少し踏み込んでみた。彼は一瞬眉毛を動かしてゆっくりと蓮くんの方を見た。

「いや違う違う。そんなことは断じてない」

「そっか…付き合ってないならそれは別にならいいんだけどさ、それなら尚更年頃の男女二人がこんなところで何してたの?まさか二人はセフr…」

「それも違――――う。いいかよく聞け………」

 焦る蓮くんがとても面白いと思う。こんなに焦っているのはなかなか珍しいんじゃないかと思う。

「なるほどな…なあオレも放課後ここに来ていいか?」

「あ?俺は別にかまわんがお前部活もあるし雨宮も気まずいだろ」

「私は別に大丈夫だよー」

 嘘だ。嫌に決まっている。せっかくの二人の空間なのに、こんな奴に邪魔されたくない。

「だ、そうだ。というわけで決まりだな」

「いや、お前部活…」

きっと内心蓮くんも嫌なんじゃないかと思う。

「大丈夫大丈夫」

 半ば強引な形で明日から天草くんがこの秘密基地に来ることになった。

 

 予想に反し、天草くんと蓮くんとの空間は居心地のいいものだった。天草くんの前では蓮くんはまるで普通の少年であるかのような話し方になっていたし、二人の絡みを見ていると思わず笑ってしまうようなところが多かったと思う。

 それから天草くんはよくボードゲームを持ってきてくれたりした。みんなでやった人生ゲームはとても面白かったと思う。

 ただ天草くんがこの空間に加わったことによって蓮くんに呪いのことや、昔のことは聞きにくくなったと思う。

 そもそも気になるのが、蓮くんの中にある私の呪いは今どうなっているのだろうか。彼も記憶をなくしているのだろうか。でもそれにしては話が噛み合わないことが少なすぎる気がする。私はいまだに、多いときは一ヶ月に3回ほど話が噛み合わなかったり思い出せない記憶があったりするのだけれど。

 まあ今度二人のときに聞くしかないか。


雨宮パート終了。

次回からはまた早乙女視点でお送りします

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