人生ゲームにはいい思い出ないんです。
昨日投稿出来なかった分です
朝、二つ目の目覚まし時計の音で目を覚ます。いつも、本来の起床時間の一時間前に起きて掃除などの家事をしてから学校へ行こうと思うのだが、どうしてもつい二度寝してしまう。
昨日夜更かししたせいか、まだ瞼が重く、朝飯を作る気にもならない。こんなときは太陽の光を浴びるといいらしいのだが、そもそもカーテンまで行くのが面倒だ。
まああーだこーだ言ったところで時間は回るわけで、結局なんの意味も成さない。
ベッドから這うように出て玄関へと向かい、新聞を回収する。
この町限定で販売されているAP新聞は地域密着型というのだろうか。この地域に住んでいる人に関するゴシップなども載っていたりする。
今日の新聞のトップニュースはうちの学校の校長の意外な性癖についてだ。
よくこんな記事を載せていられるものだと思う。揉め事を起こしていてもおかしくないのに。でもそいえばこの新聞を作っている人が元刑事だって噂もあるし、もしかしたらコネがあるのかもしれないな。そういえば今度学校の行事で職場体験があるらしいし、もし行く場所が希望制ならこの新聞を書いているところに行ってみてもいいかもしれないな。
今日の記事で目を引くのはそれくらいで残りは中学野球の大会の結果とかテレビのニュースでやっているものと同じようなニュースくらいだ。でも、今日は雨が降るそうだから傘を持っていこう。
雨でも秘密基地行くのかな?
退屈な授業が終わり昼寝明けの眠気眼を擦り、窓に向かい、外を見る。外は雨が降りそうで降らない様子だった。これなら秘密基地には行けそうだ。そういえばテニス部だったころこういう天気が一番嫌いだった。おそらく、運動部に所属する人は誰でもそうだろう。晴れの日は外での練習だからもちろん良し、最初から雨が降っている日は、授業中に諦めがつくからまあ良し。ただこういう日は外の準備をしていざ練習してもだいたい無駄になる場合が多いし、もし途中で降り出した場合、雨が降っている中でも練習して、風邪を引いてしまうこともよくあるし、雨が降り出してから中に入って、外の練習で疲れているところから中の筋トレに入ってめちゃくちゃしんどい思いをすることなんてもっとよくある。
まあ、俺にはもう関係ないけど。
「あ、蓮くんやっと来た。今日はもう来ないかと思ったよ」
「おう早乙女。来たか。待ってたぞ」
俺が来たときにはもうすでに雨宮と天草が来ていて、二人はそれぞれ文庫本を読んだり、雑誌を読んだりしていた。
雨宮が読んでいた小説は俺も良く知っている小説家、今村雫のものだった。タイトルは『黒い水』。この町を舞台にしたものなのだが、死後の世界から生き返った『雨』がこの町に潜む『影』と闘いながら自分が死んだ理由や、自分の正体が何かなどを暴いていく小説だ。この町に関するネタなどももちろんおもしろいのだが、それ以上に独特のフレーズや、キャラクター同士の心の絶妙な関わり合いがやはり魅力なのだと思う。作者はこの町に住んでいるって噂だけど本当だろうか。
今度新作出るときにサイン会があるらしいから行ってみるのもいいだろう。
「おい、早乙女、なに独りでブツブツ言ってんだ?」
「お、おう。わりい」
「天草君。蓮くんは昔から独り言多いんだよー」
「そ、それよりさ、待ってたっていってたけどなんかやんの?」
「ああ、今日はなこれ持ってきたんだ」
そういって天草は大きめの袋を取り出した。中から出てきたのはボードゲームだった。タイトルは『人生ゲーム~学園編~』というものだった。人生ゲームといえばだれでも知っているおなじみのゲームで俺も過去、家族とやったり一人でやったり何度かプレイした経験がある。しかし俺の知っている人生ゲームのパッケージと天草の持ってきた人生ゲームのパッケージでは絵のタッチや配色が違いすぎる。俺は少し嫌な予感がした。
「わーこれが人生ゲームかー。私やるの初めてだよー」
「そうなのか?」
「うん。ウノとかトランプはやったことあるんだけど人生ゲームは何でかやったことないんだよねー」
「確かに家によっては人生ゲームない家多いよね。オレも初めてやったのは中学生の修学旅行だったし」
「そんなもんなんだな。俺んちは俺が割と小さかったときからあったんだけどな」
「まあとりあえずやってみようよ。どんなのなんだろ楽しみだなー」
「なあ天草、人生ゲームってこんなパッケージだったか?もっと万人受けしそうなイラストだった気がするのだが」
というのも天草が持ってきた人生ゲームはどちらかと言えばイマドキの若者がやるソーシャルゲームや漫画に出てくるキャラクターのようなイラストだったのだ。
「あー実はな、これ元剣道部の先輩の自作なんだ。大学に入ってアニメに感化されてコミケっていうのに参加したときに作ったらしいんだけどさ。そのとき残念ながら売れ残ったらしいんだよね。それをこの前里帰りした先輩に偶然会った俺が押し付けられたってわけなんだよ」
「なるほどな。プロが作ったわけじゃないとなると少し怖い感じもあるが、とりあえずやってみるか」
そういって俺たちは駒の選択と所持金の分配をしてゲームを始めた。
で配ったのはいいけど、学園生活を送る俺たちの移動手段が車なのは突っ込まなくていいのかな。免許取れる年齢じゃないと思うんだけど。あとスタート所持金五万って高校生が持つには高すぎるだろ。都会ならともかく俺らの住んでる町ってすごい田舎だぞ。
周り順は雨宮→俺→天草という順になった。
「えーと、まずはコースを選ぶらしいぞ。『ドキドキリア充コース』と『ハラハラ陰キャコース』だとさ。雨宮どっちにする?っていうか陰キャコースなんて選ぶやついるのか?」
「そうだね。私も今回はリア充コースで始めようかな。ゲーム中でまで陰キャってのもなんか嫌だし」
そういって雨宮はルーレットを回した。出目は4。まあ悪くはないと思う。
「えーと、なになに。『いよいよ高校入学。高校では陸上部に入って青春のゴール目指して駆け抜けようかな。気に入れば6マス進んで陸上部のカードを取る』だって。どういうことかな?」
「さあまだわからんけど多分普通の人生ゲームでいうところの職業ってところじゃないか?」
「なるほど、陸上部かー。悪くないかもね。よし、わたしこれにする」
「オーケー。じゃあ雨宮さんはカードを取って6マス進んでくれ」
「次は早乙女の番だな」
順番が回ってきた俺はリア充コースを選びルーレットを回した。出目は8か。
「えーと、テニス部か…迷うところだな。テニス部にはあんましいい思い出がないんだが。おい天草。これ10マス以内で止まれなかったらどうなるんだ?」
「えーと。無個性のモブってのになるみたいだな」
「モブってのはなんか嫌だし、テニス部にしとくか」
「おっけー。じゃあ次はオレの番だな。二人ともリア充コースならオレは陰キャコースで行くかなっと。えーと、『漫研に入ってこれからはオタク道を極めよう!』って漫画読んだり描いたりしてるだけで陰キャなんて読んでいいのかよ!?」
「確かに。お前の先輩の偏見だな。まあスルーしようぜ」
こんな感じで俺たちの人生ゲームは始まった。こんな風にゲームをしながら楽しい時間を過ごしたひどく久しぶりな気がする。
その後、途中から陰キャルートを選択していた方が明らかに有利だったりゲームの中でカップルができたとしてもなぜかすぐに別れたりして明らかに製作者の悪意がこもっていてとても良ゲーとはいえなかったけどそれでも三人で遊んだこのゲームはとても楽しかった。
次回かその次くらいにはもう1人増やします




