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青色模様  作者: 海老優雅
10/11

明日香パート②

少し短いですがキリがいいのでここまでで、


傘に書いてあった名前から彼の名前は早乙女蓮というのだとわかった。

早乙女先輩、どこかで聞いたことある名前だけど、どこで聞いたのだろう。

このとき私は早乙女先輩の噂のことをすっかり忘れていたのだが、明日私は噂を思い出し、本当だったのだと思わざるを得なくなる。

傘を借りた翌日、私は先輩に傘を返すべく、放課後、校門の前で待っていた。

放課後すぐ校門の前に行ったのだが、10分待っても早乙女先輩は出て来なかった。20分待っても出て来なかった。まぁ20分くらいだったら部活動生ならこの時間に出て来ないのは当然のことだし、少し用事をしていれば簡単に過ぎ去る時間だ。

これは少しミスったな。私はココアを買ってきた。

まだ少し冷たい風が、ココアを包んだ私の手を外から冷やす。

春なのにこの寒さ。先日入学式があったのだが、その時もこのくらい寒かった。まるで新入生を歓迎する気がないかのようだった。

この時期にココアというのもなんか変だと思う。季節は春。冬の間自販機の中で温められたココアはかなり熱く感じる。火傷しちゃいそうだ。

普通もう自販機の中身の入れ替えがあると思うんだけどな。

でもそれがいい。冷めるまで時間がかかる。

ゆっくりと熱が缶から私へと伝わってきて、私の表面を温める。

ココアから送られてくる熱はココアの芯から伝わってくる。でも、その熱が私の芯に届くことはない。どんなにココアから熱が送られてきても、体が温かくなるばかりで、心はまったく温まらない。

まぁ、別に温めたいわけではないからいいけど。

ココアから送られてくる熱は心地よくて、私はしばらくココアを握ってぼーっとしていた。

ココアが冷めてきて、飲み頃になった頃、校門の方から早乙女先輩が出てきた。

私はココアをポケットに入れて、早乙女先輩に声をかけた。

「あの、すみません」

一回目に声をかけたとき、彼は気づいていなかったようで、そのままスタスタと歩いていこうとしていた。

「すみません、早乙女先輩ですよね?」

二回目に自分の名前を呼ばれて初めて、彼は自分が声をかけられていると気がついたようだった。

「はい、そうですけど……」

彼は訝しげな面持ちで、こちらを見て答えた。

「私は、この学校の1年の明日香菜々瀬といいます。先日は傘を借してくださってありがとうございました。これ、お菓子です。よかったら食べてください。」

「ちょ、ちょっと待って。傘を借したって?僕が君に傘を借したってこと?」

「はい、これ先輩の傘ですよね?」

「んー。確かにこれは僕の傘だけど、おかしいな、傘なんて借した覚えないのに。」

彼は本当に何も覚えていないという感じだった。そして申し訳なさそうに傘だけを受け取って、その場から早足で去っていった。

私は腑に落ちない感じを抱えたまま帰路についた。

その日の夜、私が家でスマホをみながら、テレビで月9ドラマの録画を見ているとき、不意にインターホンがなった。

扉を開けるとそこに居たのは、早乙女先輩だった。

「明日香菜々瀬さんだよね?ごめんね、家まで押しかけて。どうしても昨日借した傘が必要になってね。知り合いの新聞屋に場所を聞いて来ちゃったよ」

私は何が起こっているのかわからず、しばらく立ち尽くしていたが、早乙女先輩のどうしたの?という声で現実に戻ってこられた。

「えっと、すみません。傘なら今日の夕方、お返ししたと思うんですけど」

私がそう伝えると彼はしばらく何か考えて、

「そうだっけ。ごめんごめん。すっかり忘れていたよ」

いやーうっかりうっかりと胡乱な笑顔と言葉を浮かべて、一言別れのあいさつを告げて去っていった。

私は怖くなり、友達に電話をかけた。そして友達から、その人、早乙女先輩は二重人格の呪いを受けたという噂のある先輩だということを告げられて初めて、少し安堵し、妙に納得した。もともと、呪いの存在を百パーセント疑っていたわけではなかったからだろうか。

しかしその安堵のようなものと同時に、いやその安堵の直後に、私は先のものとは形質の異なる怖さに襲われた。

それが私が早乙女先輩の呪いを信じざるを得なくなった、呪いの存在も確実だと確信した出来事だった。

今冷静になるとその程度のことで信じられるってのもおかしな気はするが。

それ以来、私は下校中、早乙女先輩を見つけると、こっそりあとをつけるようになった。

話は戻るが、そんなわけで私は、呪いをほとんど信じていて、私のたまに嘘をついてしまう現象のことも、呪いのせいなのではないかと踏んでいるのである。

さてさて今日の先輩たちとの会話で、私は完全に天草先輩のことが好きだと思われているだろう。

ここからがんばって、早乙女先輩に媚を売って、軌道修正しなくてはならない。雨宮先輩もきっと、早乙女先輩のことが好きだから、これは熱いバトルになりそうだ。そんなことを考えつつ、私は友達との待ち合わせ場所に少し早足で向かった

次回は新キャラ出したいです。

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