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君に一途。  作者: ぺるしるーん
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第五話 恋の始まり<前>

 恋の始まりというのは、いつ、どうやって知るのだろうか。

 初めて目が合ったとき。初めて会話したとき。初めて、存在を意識したとき。

 いつから恋をしていたなんて、はっきりしている場合のほうが、少ないんじゃないだろうか。

 「誰かが気になる」というのと、「誰かが好きだ」というのは、どう違うのか。

 よくわかんないけど、はっきりしていることがある。

 今朝、結城くんが気になったこと。

 そして、今日の放課後、結城くんを好きになってしまったということ。


 きっかけは二限目の英語の授業だった。

 わがクラスの担任でもある英語教師は、割とアクティブな先生で、授業によくグループディスカッションとして生徒同士で問題に取り組む活動を多く取り入れていた。

 グループワークなんて、コミュ能力が高い人が張り切ってその場を切り盛りするだけで、それ以外の人にはただ退屈なだけな時間だ。その退屈度は、同じチームにいる友達の数に反比例する。

 そして私は、この取り組みが嫌いだった。

 基本的に、目の前で盛り上がるイケてる系男女を横目に、机の天板を眺めてやり過ごすのが私だった。

 誰とチームになろうと、このスタンスに変化はない。

 でも、今日は違った。


 「今日はチームで話し合って問題を解いてもらいます。当たったチームは前で発表してもらうから、まじめにやること」

 先生がこういったとき、反応は主に二つに分かれる。

 大声でリアクションする人と、何も言わない人。

 やったーとかめんどくさいとか声を飛び交わせる生徒をなだめて、先生は言う。

 「じゃあ、近くの人と四人ずつチームを作って」

 ……来た。

 ぼっち発見器的な、このシステム。

 基本的に席が近くの者同士が同じチームになるけど、こういうやつは声がでかい者勝ちだ。

 私を避けるようにして、チームができていく。

 気が付いたとき、私は完全に取り残される形になった。

 予想していた形とはいえ、おろおろする私に、とある女子が声をかけてくれる。

 「戸室さん、ここ入れば?」

 クラスでも活発な福井さんが、私を手招きした。

 そこにはすでに男子三人、女子一人のチームが出来上がっていて、こういう逆ハー的状態でも平然としていられる福井さんはすごいと思う。

 「あ、ありがと」

 お礼を言いながらほかのメンバーを観察する。

 クラスで一番お調子者の寺田くんと、男女ともに人気の塩原くん。

 そして、居心地悪そうにその三人を見つめる、結城くんだった。

 私がガラガラと椅子を引いてそのチームに加わると、結城くんはちらりと私を見て、すぐに視線を逸らした。

 私も特に口を開かず、すでに盛り上がりつつある福井さんたち三人を眺めていた。

 「それじゃあ今から20分間、各班で話し合って」

 グループワークが始まった。

 

 さて、ここでメンバーを確認しておこう。

 福井さん。活発で明るい系女子。

 寺田くん。お調子者でこういう時張り切る系男子。

 塩原くん。人気者で場を仕切るのがうまい系男子。

 結城くん。おそらく、こういうのは苦手そうだ。

 そして、私。必ず取り残されるコミュ障ぼっち。

 必然的に、福井さん、寺田くん、塩原くんがワークシートを囲んで、何やら話し始める。

 なんとなく入っていきづらい私。

 ちらりと目をやると、結城くんは私と同じようにその場を動こうとせず、無表情に三人を見つめていた。

 何だか退屈そうな横顔を私は見ていた。

 ふと結城くんが私を見る。

 目が、会った。

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