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第五十話:再出発

「諸君!戦いの時が来た!」

集まった四人を前に、女王は両手を大きく広げて言った。

「だが!我々に必要な物はなにより『情報』!分かっているな!?」

「あの……」

「そこで……はい?」

「女王様、性格変わりました?」

「……気のせいだ!さて諸君らには……」

「微妙に影が薄かったのを未だに気にしてる……のかな?」

「そ、そこ!私語は慎みたまえ!」

白波の言葉に、女王はやや狼狽したように続けた。

「ええ、間違い無いわね……方向性がおかしいけど」

リディアが追撃する。

「もう!話を聞いて下さい!」

女王は涙目になった。



「……失礼しました、いろいろな事が起こりすぎてすこしどうかしていたようです」

少し後、女王は普段の厳格な口調を取り戻した。

「さて、これからの事ですが……」

「俺とお嬢で中央の島の大時計をつかって過去に行く。そうだよな?」

「ええ……その、『能力』?とかいう物は私は理解しがたいのですが……そのようなことができるのであれば一番です」

「西の王家にも『能力』の事は分かってないんですか?」

鉄男が意外そうに言う。

「ええ、私は今まで聞いたことがありませんでしたが……」

「へぇ、魔法と同じような物だと思ってました」

「全然違うぜ」

ジャックが口を挟む。

「どう違うんだ?」

「……いや、俺は……知らん」

ジャックはやや誤魔化すように答えた。

「ジャック、やっぱり君は何か知ってるんじゃ……」

「そんな事は後でいいだろ、お前たちはどう行動するんだ?」

追求しようとした白波を遮り、ジャックは鉄男達に尋ねた。

「俺は……東の大陸に戻るよ」

「東の大陸?」

「ああ、いろいろ調べてみたんだが、鍛冶という技術は東の大陸で生まれたもので、西の大陸に伝わったのはかなり最近の事らしいんだ、そうですよね?」

鉄男は女王に尋ねる。

「ええ、私の三代前の時の事と聞いています」

「古代の封印に使われた剣ってくらいだからきっと手掛かりは東の大陸にあるはずなんだ」

「じゃあ私もついて行くわ」

リディアが言った。

「分かりました、では船の手配を……」

「で、伝令!伝令!」

突然部屋に飛び込んできたのは、凄まじく慌てたようすの伝令兵だ。

「大事な話の最中ですよ、控えなさい」

女王は落ち着いて対応した。

「それどころでは無いのです!こ、これを……」

差し出された文書を読んだ女王は、みるみるうちに色を失った。

「そんな……まさか!」

「ど、どうしたんですか!?」

「……どうやら、東の大陸に向かうのは難しいようです」

女王はゆっくりと口を開いた。

「東の国が宣戦布告を叩きつけてきました」


「宣戦……布告?」

ジャックが信じがたいと言った顔をした。

「ええ……やはり使者を斬ったのは償いようのない事実なのです」

「でも……でもあれは事故じゃないですか!」

鉄男が悲痛に言う。

「では……あなたが今から首を差し出して収めてくれるのですか?」

「そ、それは……」

「……いえ、意地の悪い事を言ってしまいました……許して下さい」

女王は俯いた。

「これは私が女王として……東の王を話し合うべき事です、あなた達は本来の目的に動いて下さい」

「そうは言っても、東の大陸に行けないのは……」

「それも、私に考えがあります」


「『国領外』?」

鉄男は聞きなれぬ言葉に戸惑った。

「そう、東の国は断崖に囲まれ、船をつけることが出来るのは王都一箇所のみ……そういう事になっています」

「ええ……『なっている』?」

「しかし、東の国には地図には決して乗らない地域……王の支配を拒む者たちの住む『国領外』と呼ばれる場所があります」

「そんな場所が……」

「普通の市民ならば知らぬことも無理からぬことです……高い山によって国領とは隔てられていますから」

「それで、その国領外には……船をつけられるということですか?」

「その通りです……あくまで『かもしれない』といった程度ですが」

「あの……飛空船は使えないのかしら?」

リディアが提案する。

「飛空船にはまだ大きな課題があるのです」

女王は説明をはじめた。

「そもそも飛空船は魔研の発明品……『風』の魔法の応用らしいのですが、魔法には未だ分かっていないことも多く、十分な飛距離を出すことができないのです」

「大陸間移動には使えないのね……」

「じゃあ、その『国領外』に向かうしか無い、か」

「……『国領外』には干渉してはならない、というのが東西の王の間で交わされた誓いの中にあるのです」

女王は難しい顔をした。

「ですがこの際……気にしている暇は無いでしょう」

「じゃあ『国領外』の状況は全く分からないのね?」

「ええ……場合によっては危険にさらされる可能性も大いにあります」

「……覚悟はあるさ」

「でも鉄男……本当に大丈夫なの?」

白波は心配そうな顔をした。

「白波……お前は、自分の心配をしてればいい」

鉄男はちらとジャックの方を見た。

「そうよ、白波様、大丈夫、鉄男は確かに『能力』も無いし、頼り無いけど」

リディアはパチリとウィンクした。

「私が守るわ」



かくして四人は船着場より秘密裏に出航した……

ここより先、彼らは何を見るのか?しばし、彼らに語り手を譲ってみる事としよう……


第三章 分岐点 完


第四章 国領外

第五章 魔法

第六章 神話    に続く。

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