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借賊(あらすじを読んでください)  作者: 甲斐谷 郡児
第二章:真実を求めて
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第三十九話:疑惑

「なんだその言い方は?」

「……見れば分かると思います」

医者はジャックを隣の病室に連れて行った。


「あ、ジャック」

そこには白波がいた。

「よお、お嬢……どうだ、そいつは」

「……」

白波はさっぱり分からないといったふうに肩をすくめた。

「どれ……なっ!?」

横たわるデビッドを覗き込んだジャックは驚いて仰け反った。

「なんだよ、起きてるんじゃねぇか驚かせやがって!」

「うん……体は、ね」

「はぁ?」

ジャックは再びデビッドを注視した。

確かに目は開いているし、呼吸もしている。だが……

「目を開いたまま気絶してるのか?」

「というより……『魂が抜けた』って表現が正しいような目だよね」

「……あの斧の影響か?」

「分からないけど……」

「あの斧はどこだ?」

「ここにあるよ」

白波は注意深く盾と槍に分解した状態の武器を取り上げた。

「ほお、それが合体するのか……不思議なもんだな」

ジャックが少し驚いたように言う。

「今のところ、持っても異常は無いよ」

「見せてくれ」

白波は用心しつつジャックの近くの机に槍と盾を置いた。

「ふむ……特に怪しいところは……」

ジャックが調べている間、白波は考える。

あの魂が抜けたような状態、見覚えがある。

アジ村の人々がああなっていたはずだ。

あれはあの男の仕業では無かったのか?

この斧が……?

「なるほど、ここをこうして斧に……う!?」

変形の方法を見つけ、片腕で苦労して持ち上げたジャックが急に膝をついた!

「ジャック!?」


コツ、コツ、コツ……

「また来た……」

リディアはうんざりしたように呟く。

何度も同じ時間を繰り返している。

毎回寸分違わず同じ動きをする皆を見るのは気味が悪い。

「来たぞ、リディア!」

「えっ!?」

「なにボーっとしてるんだよ、作戦を忘れたのか?」

「い、いや別に……」

時間が……進んだ?

「しかし……成功しますかね」

グラントが不安げに言う。

「あんたが言った事でしょうに……」

鉄男が呆れるように返した。

「あの……よく考えてみたら」

「なんだ?」

「わざわざ乱暴な事しなくても私の『能力』で穏便に済ませられるんじゃない?」

「……!それは盲点だったぜ」

「……」

「い、いや、そんな能力持ってるなんてこの作戦考えた時は知らなかったので……」

「まあいい、来たぞ!」

「オラァてめぇら!全員揃ってんだろうなぁ!」

牢の外から声がかかる。

「あのぉ」

リディアが看守に話しかける。

「なんだ!」

「外に手紙を書きたいんですけど……」

手紙を書く、とは一種の暗号である。すなわち、賄賂の。

「そうかそうか、じゃあ紙をくれてやろう」

看守は上機嫌に近寄ってきた。

「ありがとうございます……」

「なぁに、それくらいの自由は……っ!?」

リディアと目が合う瞬間、看守の体が固まる!

「『それくらいの自由』じゃ足りないの」

「なんだ……お前は……!?」

「鍵を開けて?」

「くぅう……体が勝手に……」

「ご苦労さん」

鍵が扉が開き、三人は外に出た。

「代わりに入っててね」

看守から鍵を受け取り、入れ替わりに閉じ込めておく。

「さて、これからどうする」

「おそらく暗殺計画が実行されるのは今夜でしょうね……僕達から計画が漏れても困るし」

「とにかく、女王様の部屋まで行かないと!」

三人は各自の荷物を取り返し、急ぎ女王の部屋を探し始めた。


「ジャック!ジャック!?」

「……ああ、大丈夫だ、想像以上に重かったんでな」

「……本当に……?」

白波はジャックの眼を覗き込んだ。そこに不吉な緑色の光は無い。薄い金の虹彩が霞むように光っている。

「ああ、平気だ、こいつは返すぜ……」

ジャックはやや強引に変形を戻した。

「悪いが今ので傷が少し開いたみたいだ……少し休ませてもらうぜ」

その後、よろめいて部屋を出て行った。

「……」

白波は少し考えた後、宿屋に戻った。


……その夜。

人目を忍ぶように白波の泊まる宿屋に入って行くのは……ジャックだ。

「まさか……あのお嬢が……?」

ジャックの脳裏に浮かぶのは……白い影。

『私に従え……悪いようにはせんぞ』

奴の言うことが本当ならば……

「殺す……しかない」

悲壮な決意。ジャックは……白波を……殺そうというのか!

ジャックは音も立てずに白波の部屋へと滑り込む。

そして白波の寝るベッドの傍らへ……!

「……」

ジャックは右手でナイフを振り上げた!

そして……振り下ろす……途中、手が止まる。

「……ッ!ハァ、ハァ……」

息を荒げて二、三歩あとずさる。

「……やらねば……俺は……俺は……ッ!」

存在しないはずの左手に激痛が走る。ジャックは深呼吸し、右手を胸に当てて自分を落ち着けた。

「……」

そして決然たる眼でベッドに駆け寄り……!

「!?」

不意に白波と眼が合う!目が……開いている!?

「……」

しばし静寂……

「気の……せいか……?」

白波は依然として眠りつづけている。眼が開いたと思ったのは錯覚だろうか。

ジャックはよろめくように部屋を出た。

「今夜は……断念だな、仕方無いぜ」

ジャックはいつもどおりに振舞うことで自分を落ち着かせた。


一方の鉄男達……少し時間は遡る。

「女王の部屋なんてどうやって探すんだ」

「人に聞けば……」

「無理だ、むしろ俺たちは囚人なんだぜ?人に見られないようにしなきゃ」

「……まあとりあえず、時間が無いわ」

「そうですね、急ぎましょう」

……決死の隠密が、始まっていた。


続く。

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