第三十話:船上戦
「魂……?そんな物、どうするつもりだ?」
鉄男は疑問をぶつけた。
「お前の知ることでは無い……知ったところで理解できんわ」
答えつつソフィアはじりじり迫る。
「お……お前は何者なんだ!」
後ずさり距離をとりつつ問いを続ける鉄男。
「それも言うだけ無駄な事……もっとも、私も知らんがな……」
「……?どういう……」
「さて……無駄話は終わりだ、死ね」
さらに問いを重ねようとした鉄男の言葉を遮り、ソフィアは槍斧を構えた。
「……!来い!」
鉄男も剣を構える。
「フンッ!」
先手を取ったのはソフィア!槍斧の超重量を活かした振り下ろしだ!
だが鉄男は横跳びに回避!そのまま無防備になった隙を狙って背後に回りこむ!
「喰らえっ!」
剣を振り抜く鉄男!だが!
「小賢しいッ!」
「ッ!?」
ソフィアは振り向きもしていない!だが!鉄男の剣はソフィアに届く前に弾かれた!
「くだらん飛び道具も役に立つものだ……」
そう呟き、床にめり込んだ槍斧を引き抜きつつ振り返るソフィアの手には……拳銃!
ソフィアは背に受ける風圧のみで剣閃を見切り、後ろ手に拳銃を使いそれを弾いたのだ!
なんという不可能な動き!
「……やはりそうでもない、か」
無理な体勢で撃った故の反動で妙な方向に曲がった右腕を見て、ソフィアは考えを改めた。
そして、何食わぬ顔で左腕で右腕を強引に元に戻す。
ゴキリ、と肘の関節が嫌な音を立てた。
「なんだこいつ……!?まるで動きが人間じゃ無い!」
鉄男が慄く。
「ふむ……」
ソフィアはじっくり見たあと……その右腕を不意に後ろに振り抜いた!
「!!」
その手には湾曲した短刀……その切っ先が見据えるのは、後ろから忍び寄っていたリディアの喉元!
「生憎と、魂の気配を感じるのは得意でな」
「……そう、でも……」
一瞬で驚いた表情を隠し、リディアはソフィアの頭に両手を翳した。
「愚かな……なっ!?」
ソフィアはその短刀をリディアに押し当て……ることはできなかった。すり抜けたのだ。
「私、幽霊だから……そこのところ、少し複雑なのよね」
そして、リディアの翳した両手から光が迸り、炸裂した!
「何だとォーッ!?」
爆風が捲き起こり、ソフィアは吹っ飛ばされた。
「鉄男っ!今よ!」
リディアが鉄男に叫ぶ。
「お、おう!」
鉄男はトドメを刺しに走る……が!
「舐めるなッ!」
俊敏に起き上がったソフィアが槍斧を斜めに打ち下ろして迎撃!
「くっ!」
鉄男は剣の腹で受けて防御!
「そのような細剣で……受けきれると思うかッ!」
つばぜり合いをしながらソフィアが吼える!
「ぐぅ……ッ!」
次の瞬間!鉄男の剣が音を立てて折れた!
「あぁッ!?」
衝撃で鉄男はよろめいて後ずさる!
「終わりだッ!!」
槍斧を打ち下ろそうとするソフィア!
「鉄男ッ!?えっと、えっと、どうすれば……ああああ……っと、えいっ!」
リディアは慌てて光弾を撃ち出した!
「うっとおしいぞ!」
だが、その光弾は槍斧にあえなく弾かれる!
「……!! リディア!もう一回だ!」
鉄男は何かに気付いたようにリディアを促す!
「えっ、でも……」
「いいから!早く!」
「ああもう……えいっ!!」
リディアがソフィアめがけ撃ち出した光弾を鉄男は……折れた剣で受けた!
すると!光が折れた先の剣刃を形成し!一振りの光の剣を成した!
そして……落ちてくる斧の一閃を、その剣で受け止める!!
「うおおおお!!」
交わる剣閃!!その時!
「なんだ、これは……!?」
二者を包み込むほどの爆発が起きた……!
「うう、これは予想外だぜ……何が起きた……?」
吹っ飛んだ鉄男がゆっくり身を起こす。
一方……
「……」
同じく吹っ飛んだソフィアは……動かない。
「て、鉄男……何をしたのよ?」
リディアが鉄男の傍に寄って尋ねる。
「いや……光弾を受けたあいつの斧が……光を纏って輝いてた……それを見て……途中まで剣があれば、あの野郎がやってた光の剣みたいなことも出来るんじゃないか、って思いついたんだ」
「よくもまあそんな……できるかどうかも分からないことやろうと思ったわね……でも」
リディアは光を拳に纏わせ、その形を手甲鉤のように変えた。
「たしかに、球にしてから伸ばすのは難しいけど、何かに纏わせた状態で形を変えるのはできるのね……」
「何故かはさっぱり分からんが、意外な発見だな」
「そういえば最初は球にして保つのも中々出来なかったわ……何かに纏わせた状態のほうが安定する、ってところかしら?」
「……そんなことより!あいつは……」
鉄男はソフィアの方を見た。
「ん?あの斧は……あそこか」
槍斧はソフィアの手を離れ、転がっていた。
「だめよ、近づくなら用心しなきゃ……隠し武器をいっぱい持ってたはず」
ソフィアに近づいて行く鉄男にリディアが警告する。
「……いや、その必要は無いみたいだぜ……気絶してる」
「そう……そういえば!白波のお姉さまは!?」
「……そうだ!あいつは……無事か!」
二人は船室へと走っていった。
「紫輝……さま……?行って……しまうのね……ごめんなさい……ごめん……なさい……」
直後……目覚めたソフィアは……去って行く鉄男の姿を見た。
朦朧とした意識の中で、それは彼女の目には紫輝と重なったのだ……
そして彼女が動かない体の全ての力をふりしぼり、紡ぎだした言葉は……紫輝への懺悔であった。
それを最後に、彼女は動かなくなった……。
続く




