第二話:アジ村にて
アジ村は、東の大陸の東端にある村である。
自然豊かなところであり、小さな村で皆が知り合いなので犯罪なども無く平和だったが、ここ最近森に住み着いた盗賊によってその平和は乱されていた。
あまりに平和なこの村は、盗賊に太刀打ちできる力を持った者が少ないのである。
そんな中、その村に向かって歩いてくる旅人が一人。白波である。
それを見咎めた門番が声をかける。
「この村に何か用か?」
「ああ、そろそろ日が暮れるからここで休もうと思って」
門番は白波の背負う物々しい槍を見て、
「一介の旅人にしてはたいそうな得物だな。盗賊の一味じゃあるまいな」
と油断無く睨みを利かせながら問う。
「盗賊?なんだいそれは」
「お前盗賊を知らないのか?なんか怪しいな…そのフードを取れ」
白波は断る理由もないので大人しく従う。長い紫の髪があらわになる。
「これでいいかい?」
「なんだ、女か」
門番は拍子抜けしたように言う。
「なんだとは失礼な。まず声と体格で分かるだろうに」
白波が少しムッとしたように返す。
「いや、らしくない話し方だったからな」
「らしくない、か。まあいいけどさ」
門番は目の前の旅人をまじまじと見て思う。
女だから村に入れても平気だろうか。だが不釣合いなあの槍をみるとどうも安心できない。
「お前、ほんとに盗賊じゃないんだろうな」
「だから、盗賊ってのはなんのことなんだい?」
白波は首をかしげてみせる。それを見て門番があきれたように
「盗賊ってのはだなぁ、…その、勝手に人のものを取っていくやつらのことだ」
我ながら幼稚な説明だと思ったが、それ以外に思いつかないので仕方が無い。
「じゃあ私も盗賊かな」
「何だと?」
門番は訝った。自分から盗賊などという者がいるだろうか?とりあえず怪しい。怪しすぎる。
「お前怪しい奴だな、ちょっとこっちに来い」
脅しのために剣を向けつつ、門番が凄んでみせる。
「なんだい、そんな物騒な」
「いいから来い!」
そう言って向かうのは村長の家である。
「村長!怪しい奴を捕らえました!」
「何!?盗賊の一味か!?」
「それが、なんとも言えず…」
「なんだい、ここに泊めてくれる…ってわけでもなさそうだけど」
疑惑の視線を注ぐ二人をよそに、白波は悠然としている。
「……これが怪しい者なのか?」
「はい、なんというかもう、すごく怪しいです」
「それは分かるが、盗賊の一味にはとても見えぬが…」
「ですが本人は盗賊だと…」
「何だそれは。ますますもって怪しいではないか」
二人はますます困惑していく。
「おい、そこの」
村長が白波に話しかける。
「ん、なんだい」
「お主は何者だ。ここに何しに来た。」
「私は白波。この村で休もうかと思ったらその人に連れてこられたんだ」
「盗賊なのか?」
「ああ、そうらしいね」
「何故そう思う?」
「だって、勝手に人の物を取るのが盗賊なんだろ?だったら…」
「た、大変だーっ!!!」
外から響く叫び声によって、会話は不意に断ち切られた。
「何事だ!?」
「村に、村に盗賊が侵入したぞーっ!!」
脅かされる村の運命はいかに!?
続く