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借賊(あらすじを読んでください)  作者: 甲斐谷 郡児
第二章:真実を求めて
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第二十六話:蠢動

時は少し巻き戻る。

「はぁ、なんだったんだアレは…」

未だ恐怖の醒めない様子で一人呟くルベーグ。

「あんな力を感じたのは久しぶりだ…わが主に出会った時以来か…」

ルベーグは身震いをした。

「…何はともあれ、わが主に報告しにいかなきゃぁな」

彼は先を急いだ。


「わが主!」

その数分後、古い遺跡のような建物の中でルベーグが呼びかける。

「ルベーグか…して、見つけたのであろうな?」

奥から答える者あり。だがその姿は暗闇に紛れルベーグからは見えない。

「い、いや、それは…」

「どうした?」

「そ、そんな事より聞いてくれ、これはヤバいぜ」

ルベーグはアジ村にて遭遇した奇妙な少女―の皮を被った魔物にしか見えなかったのだが―について語った。

「…ふむ?紫の髪…巨大槍斧…?」

「そう、それで……あぁ!?」

何かに気付いた様子で頓狂な声をあげるルベーグ。

「どうした」

「な、なんでもない、なんでもないんだ」

「そうか?ならよいが…ところで例の物は見つけたのか?」

「い、いやだから探そうとしたらそいつに…」

「のこのこと逃げてきたという訳か」

「ひっ…お許しを!」

ルベーグはきつい罰を覚悟した。

「…まあいい、捜索を続けろ」

「…はい?」

「聞こえなかったか?捜索を続けろといったのだ」

「あ、ああ…分かったぜ」

「……」

会話が終わると影の中の人物は何かを考えるような様子で黙りこくった。


「そうか…紫の髪…巨大槍斧…あの小娘の占いと一致する…なら問題はねぇな」

ルベーグは建物を出ながら一人、呟いた。


一方、アジ村での戦闘の後、その近くでは。

「…な、なんだ…?今のは…?」

凄絶な戦闘の一部始終を見ていた者がいた。ジャドである。

彼は紫輝に命じられ白波の後をつけていたのだ。

「あの小娘…まだあれだけの力を隠し持っていたというのか…?」

ジャドは考える。

「どうする…村に入っていったあの小娘の後を追うべきか…だが見つかれば…」

ジャドは首を横に振った。

「な、何を怯えている!我は強き者…選ばれし者なのだ!」

自分に言い聞かせるようにそう言い、様子のおかしい白波の後を追った。


「フン…どれもこれも弱い魂ばかり…これでは私の…ムッ!?」

白波はブツブツと呟いた後、虚空を睨んだ。

「……!」

いや、虚空ではない。そこには自らの能力で背景と同化したジャドがいた。

「…『能力持ち』の気配…?これはいい、『能力持ち』の魂は極上ぞ…」

ゆっくりとジャドに近づく白波。

(何だと!?見えて……いるのか!?)

焦るジャド。

「なるほど、そのような矮小な能力…期待できそうも無い、か…」

白波がそう呟くと同時に、ジャドの能力が解かれた。

「な、なんだと!?」

ジャドは驚きのあまり後ろに倒れこむ。

「まあよいわ、多少の足しにはなるだろう…さあ貴様の魂を…ッ!?」

右手をジャドに翳しつつ歩み寄る白波は急に膝をついた。

「くぅ…こいつ…もう目覚めるのか…あの若輩の能力が解けた…か…」

そしてそのまま地に倒れ伏した。

「……た、助かった…のか?」

ジャドはゆっくりと立ち上がる。

「一体何なのだ…!ともあれ、これは奴に報告せねばなるまい…」


「…繰り返すが、そいつは槍にも斧にもなる武器を持っていた、そうだな?」

「ああ、そうだ」

半日ほど後。セリシア城内にて紫輝にジャドが報告をする。

「……よかろう、ご苦労だった」

「ならば我を自由に…」

「まだだ」

「何故だ!」

「まだ仕事をしてもらう」

「…分かった、今度はなんだ」

「まだ決まっていない」

「なんだと?」

「奴は近いうちに西の大陸に渡るはずだ、その時にまた追ってもらう」

「…その事だが…」

「なんだ」

「何故だか分からんが、あの小娘に見つかってから我が能力は使えなくなった…らしい」

「…は?」

「だから、使えなくなったのだ…色を操り『塗り替える』能力が」

「馬鹿な、そんなことがあるはずは…」

「本当だ…我が一番信じられぬが」

「…ならいい、お前はもう用済みだ」

「は、今なんと…」

「用済みだと言ったんだ…消えろ」

「それは…どういう意味だ」

「文字通りだ、『消えろ』」

「ま、待て、何を…」

その言葉をジャドが言い終えることは出来なかった。

彼は…『消えた』。

「フン、雑魚能力には所詮何をやらせてもダメだな…」

紫輝は部屋を出て別室に向かいつつ呟く。

「しかし何故奴がアレを持っている……?アレは…私の物だ…!」

紫輝の目は野望とも憎しみとも取れる炎に燃えていた。


「おい、仕事だ…お前は上手くやってくれるだろうな?」

別室にて紫輝が声をかけたのは…背の高い女性。

「…おおせの通りに」

彼女はその美しい声で答えた。


続く

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