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第二十三話:襲撃

「危ないって、どういうことだよ」

尋常ではない様子のリディアを見て、鉄男が訝る。

「説明は後よ!急いで!あと10時間……今すぐ飛空挺に乗っても間に合うかどうか…」

リディアは答えず、鉄男の背中を押す。

「わ、分かった、分かったから押すな」

鉄男はその様子を見て、嫌な予感を覚えて走り出した。

「私も行くよ!」

白波も後を追った。


三人が乗り込んだすぐ後に、飛空挺は発進した。

「なんとか…間に合ったか……」

鉄男が荒い息を吐く。

「うわ……ほんとに飛んでる……」

リディアは外を見てあっけに取られている。

「どうやって飛んでるのかしらこれ……初めて見たわ……」

そんなリディアに白波が声をかける。

「ねえリディア、説明してくれる?何が危ないんだい?」

「……お姉さまの占いに出たのよ…アジ村に…アイツが入っていくのが」

「アイツ?」

「そう……お父さまを脅していたあの男よ…アイツの行方を占っていたら、その光景が出た…」

「それが……今から10時間後って事か?」

鉄男は背筋に冷たい物を感じた。

自分がいない今、あの村は無防備だ。

「そうよ……」

「くそっ、盗賊団がいなくなったから油断してたか…でもなんでアジ村に…?」

「分からないわ…でもアイツは危険よ、それだけは分かる……」

気ばかり焦る三人をよそに、残酷に時間は過ぎていく…


「ハァ、こんな辺鄙な村に…ほんとにあるのか?アレは」

アジ村を遠景に捉え、男は一人呟く。

「ここまで来たのに無かったら…俺は無能扱いで我が主にも怒られちまう……」

男はため息をついた。

「だいたいあの野郎が無駄な事しなけりゃこんなことには……

 あんな馬鹿な事しやがってよお…笑いごとじゃ済まなくなったじゃねえか!」

男の額に血管が浮かび上がる。そして拳を振り上げ……

「……全く…どいつもこいつも……」

打ち下ろす物も無いのでゆっくり降ろした。

そんな奇行を繰り返しつつ、男はアジ村の近くまで来た。

「着いたぜ……ほんとに田舎だな、とっととアレを見つけて帰るぜ」

男は辺りを見回して再びため息をつき、アジ村に入ろうとした。

その時!

「ちょっと待ったぁぁぁ!!!」

声を張り上げながら走ってくるのは、リディアである!

「ここで会ったが百年目!私をこんな風にしたのを後悔させてあげる!」

リディアは光弾を構える!

「あぁん?誰だてめぇはよぉ」

男がそれを見て怪訝な顔をする。

「覚えてない……とでも言うつもり!?私は片時も忘れなかったわ……あなたがお姉さまに何をしたか!」

「お姉さま、だと?……ああ、お前、あの馬鹿の娘か?」

「馬鹿…ですってぇ!?誰のことよ!」

「決まってんだろうがよ、お前の父親、王立魔法研究所長ザロイだよ!違うか!?」

「……分かったわ、死にたいみたいね……」

「その様子じゃあ、死んでるのはお前の方……何ッ!?」

…次の瞬間!リディアは光を纏う拳を構え男の懐に飛び込んでいた!

「はぁっ!」

「グぬっ!?」

不意を付かれた男の鳩尾に拳がクリーンヒット!

「ゲホッ、お前…味な真似を!」

男は咳き込みながらも素早く後ろに距離を取る!

「しかし……なるほど、その体、だがその力…お前……」

「なに?何か言った!?」

「なら容赦はしねぇ!」

次の瞬間!なんと、男も光弾を構えた!

「なっ……!?」

「驚いたか?だがそれはまだ……はえぇぜ!」

更に男は光弾の形を捻じ曲げ……一振りの光の剣を作り出す!

「せっかく蘇ったのに残念だったな!消え去れ!」

「っ……!」

無情な光が走る……!


「……なんてね」

「……!?てめぇ……何した……?」

男の腕は硬直し、光の剣は消えうせた。それに対するリディアの目には、剣閃にも似た赤い光!

「油断したわね……『操らせて』もらったわ」

リディアは余裕を装って言うが、心の内に違和感を覚えていた。

なぜ口が動かせる?操りが弱い?何故?

その心の揺れ動きを男は目ざとく見てとった。

「なるほど……でもあんま上手くいってねぇみたいだな?」

「!?」

「動揺したな……そこが命取りだぜ!!」

リディアは心を見透かされたような気がして自分から目をそらしてしまった!

だが自らの迂闊に気付いてももう遅い!

「驚かしやがって!今度こそ……消えろ!」

操りの解けた男は素早く再出現させた光の剣でリディアに斬りつける!

「ぅ……」

切り裂かれたリディアは弱々しく呻いて地に落ちた。

「全く……こんなとこであの馬鹿の娘がこんな事になってて、しかも『能力持ち』だと?笑えねぇぜ、全く」

男はそれを見下ろしながら呟く。

「だがよぉ、俺と出会って運が悪かったぜ?何故かって?そうだな……名乗っといてやるよ!

 俺は偉大なる魔王軍の対『能力持ち』軍ザバルデの将、ルベーグ!

 かく言う俺も『能力持ち』でなぁ……『弱める』能力ってんだ…言いたい事、分かるよなぁ?」

ルベーグと名乗った男は嗜虐的は笑みを浮かべ、リディアを蹴った。

「ついでに言うとだな……まあいい、これは後でゆっくり聞かせてやる……」

そしてほとんど重さの無いリディアの体を持ち上げた。

「お前を消すのはやっぱヤメだ…こんな貴重なサンプルが手に入る、とはな、ついてるぜ

 ……これでアレも見つかってくれりゃ、言うことは無いんだが……」

そういってルベーグは村へと踏み込もうとした……が。

「おいお前!リディアをどうするつもりだ!」

後ろから声がかかる。

「あぁ!?また邪魔か?うっとおしいぜ!」

ルベーグは額に青筋を浮かべ振り返った。

「リディア……だから勝手に先に行くなって言ったのに……」

「鉄……男……」

リディアはその声の主……鉄男に向かって弱々しい声を上げる。

「なるほど?こいつの仲間ってわけか?全く面倒だぜ……」

ルベーグはリディアを地面に降ろした。

「ハァ……ほんとに……面倒だぜ!」

そして……不意に光の剣を展開!いきなり斬りつける!

「うおっ!?いきなりかよ!」

鉄男は上体を反らして回避!剣を抜いて臨戦態勢をとった!

「お前、『能力持ち』じゃないな?はぁ……面倒な上に、つまんねぇぜ」

ルベーグは鉄男を一瞥した後、言い捨てた。

「へっ、そういう言葉は、俺の剣を受けてからにしな!」

鉄男が勢いをつけて斬りかかる!

「『能力持ち』で無い時点で……俺の相手をするには百万年はえぇんだよ!!」

二つの剣がぶつかりあう……かと思いきや!

「何だと…!?」

光の剣は鉄男の剣をすり抜け、そして……!

「フン……死ねェ!!」

鉄男の剣がルベーグに届くより早く、鉄男を捉えた!

「ぐわああっ!!」

苦痛に叫ぶ鉄男!だがどうしたことか、体に傷はついていない!

「俺の剣は魂を切り裂く……せいぜい苦しめ」

経験したことの無い内なる痛みに耐えかね、鉄男は気絶した。

「ふう……やっぱ大したことねぇぜ……つまんねぇ」

ルベーグは光の剣を納めた。

「思わぬ邪魔が二回も入った……イラつく、イラっとくるぜ……」

ぶつぶつ呟きながら、村に入ろうとする……その時!

「やあっ!」

背後から三度襲撃の気配!

「チッ…」

ルベーグはお辞儀するような体勢で、振りぬかれた槍を回避!

その隙を殺すようにそのまま手を突いて後ろ蹴りに槍を蹴り上げ、そのまま一回転!

「まだザコがいるってのか!?もうつまんねぇのは飽きたぜ!」

激昂しつつ振り返ると、そこには槍と盾を構えた白波!

「私は白波……借賊さ。この村に入って何をするつもりだい」

白波は静かに名乗り、尋ねる。

「んな事はどうだっていいだろうがよ!俺はイラついてるんだ!」

ルベーグは叫ぶように言い放ち、光の剣を再度展開した!

「お前は『能力持ち』だな!?なら……これでも喰らえ!」

その光の剣で白波の方を指す!

「……!?」

白波は地に膝をついた。

「あ?ちょっと『弱めすぎた』かぁ?まあいい、死ね!」

ルベーグは白波に急接近!そして光の剣を振り下ろす……だが!

「ふふふふふ……愚か者め」

白波は静かに呟いた。次の瞬間、空を裂くような音が鳴り響く!

「なん……だと?」

振り下ろした光の剣は弾かれ、ルベーグは仰け反った。

驚いて見つめるその先には、巨大な槍斧を構えて立ち上がる白波!

「ふふ……ははははは!!!お前ごとき若輩が調子に乗るな!!」

恐ろしい声で一喝する!明らかに様子がおかしい!

「な、なんだこいつ……しかもあの斧は……?」

ルベーグは対峙する者から発せられる異様なオーラに怖気づく!

「これはヤバイ…なんかヤバイぜ!」

「……やぁぁぁああ!!!」

白波は恐るべき速さでルベーグに近づき、槍斧を振り下ろした!

「なにっ!?くっ!」

ルベーグは光の剣の形を変えて盾にし、それで防ごうとする!だが!

「何だとォォ!?」

槍斧の一撃で、光の盾は音を立てて粉砕!

「な……なんだこいつ!まるで敵わねぇ……逃げるぜ!」

ルベーグは身の危険を感じ取り、足に光を纏って凄まじい速さで逃げ出した!

「ふ、ふふふ……はははははははは!!!はははははははははははは!!!!」

白波は後を追わず、一人で笑い出した。

その狂ったような笑いは、しばらくやむことはなかった。


続く

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