第十八話:謎解き
地下に降りる階段の先は、長い廊下になっていた。
暗くて先の見えない廊下の両脇には、怪しげに牢が並んでいる。
「な、なんだぁ?これ…」
不安げにそれを見渡すのは鉄男である。
「囚人でも入れてたってのか…?貴族のお屋敷には似合わないぜ」
怪訝な顔をし、歩を進める。
「このどれかに白波が入ってるのか?」
一つ一つ確認していく。
だいたいが空だ。だが…
「!?なんだ…これ…?」
鉄男は牢の中に何かを見つける。
それは、巨大な爬虫類で、鋭い牙を持ち、何より翼が生えていた。
「グルルルルル…」
唸りながらゆっくりと起き上がり、鉄男をじっと見据えた。
「ひっ…お、お前に用は無いぜ…じ、じっとしてろよな」
鉄男は後ずさる。謎の生物は体の感覚を取り戻す様に大きく羽ばたいた。
「うわッ…!」
凄まじい風圧に襲われ、鉄男は後ろに吹っ飛んだ。
「ってぇ、この野郎…!」
鉄男は剣を抜き、構える!
「フン…」
だがそれを見た謎の生物は、つまらなさそうに鼻をならし、また眠りの体勢に入った。
「なんだってんだよ…クソ…」
鉄男も無駄に争う気は無いので、剣を収め、先を急いだ。
廊下の先端についた鉄男の先には、大きな鉄扉。
「この先だ…きっとこの先に…」
鉄男は急いで扉を開けようとする。が、開かない。
「??なんだこの鍵…」
扉には大きなダイヤル南京錠が掛かっていた。
1から9までの数字が五個並んでいる。右から赤、白、黄、青、緑の色に塗られている。
「こんなのどうしろってんだ…?」
鉄男は頭を抱える。
「ん?赤…白…??どっかで見たような…」
鉄男はそう思い、屋敷に入ってからの行動を思い出す。
「屋敷に入って…子供部屋…厨房…階段を上がって…書斎…日記……日記!?
そうだ、日記だ!日記に赤の日だのなんだのと…」
そう思い返し、鉄男は日記の内容を思い出そうとする。
「確か…二日目が赤の月赤の週、赤の日…だったはずだが…
色は数字に置き換えられると考えて間違いはないはずだ…
ということはどの月も四週までしかないから赤は一から四のどれか…
それ以外に…ああクソ、そんな細かく思い出せるわけ無いぜ…
だが考えろ…考えるんだ…確か週に使われていた色は四色…つまりはどれか一つの色だけ5から9…
それは…いや、だが…うん…?わかんねぇ…どうすっか…」
頭を絞って考えるものの、記憶には限界がある。
「しかたねぇ、戻るか」
鉄男は踵を返し、もと来た道を戻りはじめた。
バキン!
「ん?何の音…だ…」
長い廊下を歩く途中、背後から不審音。
振り向いた鉄男の目に入ったのは…
「グルルルルァ…」
何が気に食わないのか、こちらに敵意が剥き出しな巨大爬虫類だった。
「はははははお前、また会った…なッ!!」
先手必勝とばかりに剣を抜き、叩きつける鉄男!
「グガアアアアア!!!」
全く効いていない!硬い鱗に弾かれる!巨大爬虫類は吼え猛り、鉄男に噛み付く!
「やべっ!?」
素早く身を引いて回避!爬虫類は追撃の構え!
「逃げるぜ!」
鉄男は脱兎のごとく駆け出す!
「グオアアアアアアアァァァ!!!」
興奮した爬虫類は後を追う!
「ヤバイヤバイヤバイぜ!!あいつに捕まったら死ぬ!確実だ!」
鉄男は誰にともなくそう叫び、階段を駆け上がる!だが…
「な!?跳ね上げ戸が…閉じてる!?」
だが止まっている暇は無い!鉄男は懇親の力で戸を押し上げる!
「開かねぇ…!?どうなって…」
その時!にわかに背後が昼間のように明るくなった!
「なん…何だと!?」
鉄男の背後、そこには…大きく開けた口の中に燃え盛る炎を湛えた巨大爬虫類!
「開け!開けよ!この…開け!!」
「グガガ…ガァアアアァァァァ!!!」
爬虫類は口の火球を噛み砕いた!凄まじい爆炎が走る!!
「ぐわああっ!?」
鉄男は思いっきり吹っ飛ばされ…否、跳ね上げ戸とその上のベッドさえも吹き飛ばした!
鉄男は…傷を負ったが無事!
「畜生、誰だベッドを動かしたのは…そんな事言ってる場合じゃねぇ!」
鉄男は傷だらけの体に鞭打って走り出す!
「二階の端の部屋!のはず…だ!」
子供部屋を跳び出し、大階段を駆け上る!
後ろを振り返ると、今だ追い来る巨大爬虫類!
「しつこいぜ!全く…!」
長大な廊下を走る!走る!
背後がまたも明るく輝き始めた!
間をおかず、火球が今度は勢いよく発射された!
「うおおおおおお!!!」
鉄男は横っ跳びで回避!服の裾が焦げる!
「まだか…よし、ここだ!」
鉄男は書斎に飛び込んだ!
本棚が乱雑に倒された書斎の机の上には、今だ開かれたままの日記帳!
「これだッ!」
掴み取り、また部屋を跳び出…
「マズい!」
巨大爬虫類が書斎に侵入!
「ガオアアアアアアアア!!」
吼える爬虫類!鉄男は机の後ろに隠れる!
回り込んでくる爬虫類!鉄男は反対側から部屋の出口へ転び出た!
「ふう、まいた…か?」
しばらく走った後、鉄男はスピードを緩める。
「全く…アレは一体なんなんだ!?見たこと無い動物だ…炎を吐く動物なんて…
あの謎めいた文字といい…ここは何か、変だぞ…」
「あなたがやったんでしょ?」
「!?」
不意に声がする。
「あなたのせいよ…全部!何もかも!」
いつの間にか、鉄男の前には少女がいた。
赤みがかったオレンジの髪を高い位置で一本に結び、純白の服に身を包んでいる。腕には妖しく光る大宝石の腕輪。
そして何より、その少女は半透明だった。
「お姉さまは連れて行かせないわ…その日記も…返してもらう!」
続く




