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第十七話:日記

「どこだ…ここは…」

途方に暮れたように辺りを見回すのは、鉄男である。

威勢よく走り出したものの、現在地も向かう先も分からないのだ。

おまけに、この広すぎる廊下も問題だった。

走っても走っても先端にたどり着かない。

「いくらなんでもおかしいぞこれは…また化かされてんのか…?」

そんな事を言った直後、普通に先端にたどり着いてしまった。

「……まあいいや」

鉄男は安心するような残念なような妙な気分で呟き、端の部屋に入った。


「ここは…書斎、か?」

ギッシリと本の詰まった背の高い本棚が、鉄男を取り囲んでいた。

「本棚と言えば隠し通路、と相場が決まってるんだぜ」

そういって鉄男は本棚を調べ始めた。

だが、特に怪しい物は見つからない。

「まあそんなもんか…しかし、見たことも無い言葉で書かれてんな…どこの国の言葉だ?」

一際目立つ赤い背表紙の本を手にとり、開く。

やはり、読む事は出来なかった。だが、どこかで見たことのあるような文字だった。

「ここにある全部が同じ言葉で書かれてるみたいだな…」

ふと、部屋の隅の机の上に目をやる。

開かれたままの本が置かれている。

「なんだ、これ……?」

不自然だ。床や他の本の上には埃が厚く積もっているが、机の上には一切埃が無い。

しかも…

「これ、普通に読めるな…どれどれ」

赤の月 赤の週 白の日

今日は最悪の日だった。

コロがいなくなっちゃったし、あのおじさんがまた家に来た。

あのおじさんが来るたびにお父さまは元気が無くなる。

明日は来ないといいな。

赤の月 赤の週 赤の日

お父さまが帰ってこない。

なんで?ってお姉さまに聞いても、何も言わない。

私が泣いても、お姉さまはずっと喋らない。

お姉さまは悲しくないのかな。

赤の月 赤の週 緑の日

またあのおじさんが来た。

私は怖くて隠れてた。

お姉さまがおじさんに言っていた。

お父さまは……もう、いないって。

緑の月 青の週 青の日

お姉さまがどこかに言った。

私に何も言わないで。

なんでお姉さまは帰ってこないの?

なんでなんでなんでなんでなんでなんで

なんでなんでなんでなんでなんでなんで

なんでなんでなんでなんでなんでなんで


「な、なんだこれ…」

その先のページにも、ずっと「なんで」が羅列されていた。

やがてその文字も掠れ、空白のページが続いた。

だが。

「ん、続きがある…?」

青の月 黄の週 赤の日

お姉さまが帰ってきた

抱きついておかえりって言った

そしたらお姉さまは慌ててまた出ていってしまった

きっと照れちゃったのね

今度来たらその時は


赤の月 白の週 白の日

お姉さまがまた戻ってきた

今度こそ逃がさない

一緒にいる人はきっとおじさんの仲間ね

絶対に許さない


そこで日記は途切れた。

「これって……はは、まさかな」

鉄男が背筋に寒い物を感じたその刹那、背後で本棚の一つが倒れた。

「あぶねっ!?」

鉄男は間一髪で回避!凄まじい音がし、埃がもうもうと舞う。

「これは…よく分からんが、なんだかまずい!」

鉄男は急いで書斎を出た。


走りながら鉄男は考える。

「つまりは、白波はここの…住人の…姉だったってことか?

そんでもって…ああもう、わけがわからんが、俺はなんか恨まれてるってことは分かる!

とっとと白波を探してここを出るっきゃねぇ!

きっと、白波は『お姉さま』の部屋にいるはず!」

そう結論付いたところで、鉄男は端から二番目の扉に飛びこんだ。


「ここは…使用人かなんかの部屋か」

部屋の中を見て鉄男は分析する。

簡素なベッドが一つ。クローゼットも一つ。鏡台も一つ。

鏡台には化粧品の類が並んでいる。女性だろうか。

「『お姉さま』がメイド長って線もあるな…」

鉄男はその部屋を探索することにした。

だが、あまりに簡素なその部屋は、探索するにもクローゼットの中くらいしかない。

「クローゼットか…何か出てきそうだな…」

ぼやきながら、意を決してクローゼットを開けた鉄男の目に飛び込んできたのは、大量のハンガー!

「うおッ!?」

…そう、文字通り、『飛び込んで』きたのだ。

顔面に不意打ちをくらい、鉄男はたたらを踏む。

「くそっ、ハズレか!」

鉄男はまたも部屋を飛び出した。


次の部屋に飛び込んだ鉄男が目にしたのは、豪華な家具の数々だった。

古びていてもどこか荘厳さを感じさせる白を基調としたそれは、またどこか不吉だった。

ベッドはダブルベッドだ。きっと主人夫婦の部屋だろう。

「さすがに母親が『お姉さま』って事は無いだろう」

軽く全体を見回してから、鉄男は部屋を出た。


次の部屋へ行こうとした鉄男は、下に向かう階段を見つけると同時に一つ思い至る。

「そうだ、一番最初に入った部屋は…子供部屋だ!

あの部屋のベッドは…ダブルベッドだった!そうだ…よな?」

白骨死体が目にありありと焼きつき、ベッドがよく思い出せない。だが迷っている暇は無い!

鉄男は勢いよく階段を走り降りた。


かくして最初の部屋に戻ってきた鉄男は、再度子供部屋を調べなおす。

「本棚を倒したりハンガーを飛ばしたりした奴が来る前に探さなきゃあな…」

部屋の中心のベッドには、相変わらず白骨死体が横たわる。

それをなるべく見ないように、周りのタンス、クローゼットを調べる。

だが、何も出てこない。

「やっぱこのベッドに何かあるのか…?」

そう呟き、ベッド周囲を調べる。

すると、明らかにベッドの横だけ埃が無い。

「なるほどな、ってことは」

反対側からベッドを押す。すると、

「ビンゴ、ってとこか…死体で隠すとは悪趣味だぜ全く」

ベッド下には跳ね上げ戸が隠されていた。

「白波は十中八九この下だな…行くか!」

鉄男は再び自らを奮い立たせ、地下へと潜って行った。




その後…

「ふふふ…絶対に、逃がさないんだから」

ベッドがひとりでに動き、跳ね上げ戸の上に戻った。


続く

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