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外へ


 「ん…ん?うわあ!」

 目が覚めると、牢の外に人影が。骨皮のっぽです。いつからそこに居たのか、私のカワイイ寝顔をタダ見ですか、と思ったけど泣きながら寝てしまったので相当ヤバい顔をしていると思われます。

 「起きたか。準備はいいのか?」

 「え、あー、たぶん。」

 必要なもの、といっても何が必要なのかよくわかりません。持たされた物持っていきますよ。


 その後会話もなく、気まずい空気が密度を高めていきまして、もう一回寝てやろうかという頃エラそう魔術師と猫少年が登場です。

 「間もなく出立である。その前に…。」

 エラそう魔術師がアゴで合図すると、猫少年がしぶしぶリュックの中身を取り出して並べていきます。

 「不備があってはいかんからな。」

 何この手荷物検査。心配なのはパンの包みですが、置くときにしっかり『カツン』って音がしました。包みを広げましたらナイフ出てきてしまいました。あーあ。ごめん猫少年。もっと考えて隠せばよかった。パンの中に入れちゃうとかさ。

 「なんだこれは。」

 と、猫少年をぎろりとにらむ魔術師。私と猫少年の間に緊張が走ります。

 「これは、えっと。」

 言い淀んでいる猫少年を遮って、意外な助け舟が。

 「それは俺が与えたものだ。」

 骨皮のっぽ。私と猫少年の頭の上にえーっ?って字幕が入りそうな瞬間でした。

 「手回りの事は自分で処理してもらいたいからな。俺は護衛で、子守じゃない。」

 魔術師はじろりと骨皮のっぽの方を見上げると、フンと鼻を鳴らしました。

 「いいだろう。それでは出発だ。さあこれを羽織れ。」

 猫少年がリュックにまた入れてくれる間に、手渡されたのは黒いマント。

 「人々の間で噂になっては困るからな。闇夜に乗じて城を出るのだ。いいな、目立つんじゃないぞ。」

 牢の外へ出されます。やった。

 魔術師、猫少年、私、骨皮のっぽの順に、薄暗い階段を上り、人気のない廊下を抜け、汚れた扉を静かに開き、臭い部屋を通り抜けてようやく外へ。

 辺りはかなり暗かったけれど、ずっと暗いところにいたから割と景色は見えました。普段から使われていなさそうなちいさな広場で、すぐ目の前は藪になっていました。

 「ではこれを。」

 魔術師がロープを骨皮のっぽに渡すと、片方の端を自分の腰にひと巻き、反対側を私の腰にひと巻きして両手を縛りました。

 「な、なにこれ!」

 「騒ぐな。迷子にならないためと、逃亡防止のためだ。」

 骨皮のっぽが冷徹に言いました。ぞっとして言葉に詰まりました。夜の暗さが手伝って、想像は恐ろしいものばかりを描き出します。

 「それでは、盛大に送り出すことはできんが、旅の成功を祈っておる。」

 しっし、とでもいう感じで魔術師が促すと、骨皮のっぽは命令通りに動く機械のように私を引きつれて藪の暗闇の中へ分け入っていきました。

 不安そうな猫少年の瞳が、ぼんやりと浮かんで見えていました。

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