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Grenze 境界  作者: 8X
3/11

放置され中

 登校途中で事故にでも遭ったのかな。それで、私自身は今病院のベッドの上で、駆け付けたお母さんとお父さんが何度も名前を呼んでいるの。ありがちありがち。

 もう少し頑張って呼んでもらわないと、目が覚めないかもしれない。


 どこかからか漏れた光が辺りを照らしているけれど、明るさでいったら夕方くらい。おなかのすき具合からいってまだお昼頃かな。

 お尻が冷たいので、やっつけな感じのベッドに座ります。汚れてて気持ち悪い。臭い。ベッドとはいえ敷き布団も掛け布団もついてません。うすっぺらい毛布が一枚乗っているだけです。

 「ねえ誰かー。おなかが空いたんですけどー。」

 返事はありません。鉄格子に近づいてあちこち揺すってみましたが、すっごい頑丈にできてます。それから部屋中の石のブロックをぱんぱん叩いて、抜け出す道がないか探しましたがどうもないみたい。あんなのゲームの中だけですよ。


 「あっ、携帯で誰かに助けを呼べ…ないな。」

 夏休み直前の私の服装は夏の制服。ポケットがないので携帯はバッグの中です。さっきのおっさん部屋にいたとき、バッグは手元にはなかったし…。

 そうだ、猫の封筒を開くとき、足元に置いたんだった。じゃあ道端に置き去りになっているのかも。あーーー財布!盗まれたら困るよ…。誰か親切な人が拾って警察に届けてくれますように。


 おなかがなる。

 寒くて暗い。


 夏休みにするはずだった遊びのことを考える。

 めっちゃんとさいとーと私の三人で海に行く。花火もいく。めっちゃん浴衣似合いそう。そうそう、水着と浴衣買にいかなきゃね。さいとーが行くって言ったら桜井がそわそわするかも。あいつさいとーのこと好きだもんね~。態度バレバレ。

 いろんな人の顔が浮かんで、いつものやりとりが脳内で再生される。


 あかりはぽやーんとしてるんだから、気をつけなよ~。あははっ、なにそれ~。

 

 めっちゃん、私ぽやーんとしてたっぽい。



 もともと薄暗いこの牢も、いよいよ闇に包まれ出しました。


 心細い


 こんな単語が脳裏に浮かぶなんて想像したこともなかったです。

 私、いつまでここに居ればいいのかな。もしかしてもうずっとこのままなのかな。おっさんたちの様子じゃ、私には別に用事がないって感じだったし。

 最悪の場合私、ここで死ぬんじゃない?


 えっ?死ぬ?




 浮かんだらもうなんだか止まらなくて、怖くて悲しくて、壊れた消火栓みたいにばんばん涙がこぼれ落ちました。声を上げてわあわあ泣きました。

 「おかあさん、おかあさんん…。」

 頭がぼんやりして、目が熱くて、胸がぎゅっと痛くて、自分がばらばらに砕けそうな気持ちでした。


 しばらく泣いた後、膝を抱えたままぼーっとしていました。



 ぐうーっとおなかがなる。

 こんな状況でおなかがなりまくるなんてね、となんだか自嘲しました。


 ごはんももらえずただほったらかされて死ぬのかな。みじめだなぁ。夢ならいいな。

 そうだ、夢かもしれない。眠って、目が覚めたら家のベッドかもしれない。


 泣きつかれたせいもあって、私は穴に落ちるみたいに眠りました。

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