選抜失敗
盛大に尻もちをつきました。涙が滲みます。
見回すと、さっきまで外を歩いていたのに今は室内です。古そうな床板と、薬の臭い。壁一面の本、並んだ悪そうな顔。
「なんだこれは。」
悪そうな中でも一番豪華な服を着てエラそうなのが、不満気に私を見ていました。
なんだちみは、だったらちょっと面白かったのに。見た目も変だし。
「魔人に対抗しうる者を選べと言ったはずだ。」
私を挟んで反対側にさっきの猫。びくびくと小さくなっておびえています。
「し、しかし、送り出された先にはそれらしい者が一人もおりませんでしたので…。」
しゃべる猫はにょるん、と姿を変え、ちいさな子供の姿になりました。何これ!何これ!!
「貴様、わしらが術に失敗したと申すか!」
悪そうの一人がつばを飛ばしながら猫だった子供に詰め寄ります。悪そうなおっさんは全部で6人。みんなでぎゃーぎゃーと責任のなすりあいを始めたようでした。うるさいな。
「まぁまて。もしかしたら高名な術者かもしれんではないか。娘よ、お前の得意とするものを教えてくれるか。」
勝手に話が進行してると思って眺めていたところで、急に質問されたからあわててしまいました。
「えっ、わ、私?えーっと…得意なもの、得意なもの…。あっ、カラオケ?」
少し間があって、カラオケとはなんだ?とおっさんたちがどよめきました。
「カラオケって歌よ。曲に合わせて歌うの。DAMとか知ってる?採点がいまアツいの。」
マイクを持つポーズで振付まですこし披露したけれど、全員茫然。
考えてみると、得意なものってないなぁ、私。ちょっとへこみます。
「術が使えるわけでもないらしい。」
「何のためにわしらはあれほど力を尽くして・・・」
「それより王になんと申し上げるべきか。」
「もう一度やるには材料が足りんわい。」
またわいわい始まったようです。
「用事がないなら家に帰してくれませんか。学校行かなきゃいけないし。」
そう言ってみました。
全員の視線が集まります。
エラそう、が鼻をフンと鳴らして
「地下にでも入れておけ。」
と言い放ちました。
「へ?」
私は数人がかりで箱に押し込められました。しばらく階段を下るように移動され、箱から出された時には石でできた牢の中です。
「なんなの?どういうことよ!」
この時になって、急に恐怖が襲ってきました。
夢?これって夢じゃないの?