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我が全ては王女(あなた)のために  作者: 四月朔日
第一章:平和な日常
7/7

07:そして付き人となった少年〈上〉

本当に毎度毎度遅くなってすみません!

 ――暖かく穏やかな陽射し。よく晴れた青い空。小鳥の(さえず)り。


 うん、少し出来過ぎているんじゃないかと疑いたくなるほど素晴らしい朝だ。


 ベッドから起き上がり窓を開けると、今度は暖かく穏やかな風が流れ込んでくる。


 あぁ、なんて気持ちのいい朝なんだろうか。


 こんな素晴らしい朝はやっぱり二度寝するに限るよね。


「というわけでもう一眠り――」


「――出来るなんて思ってないわよね?」


 ザシュ!


 ……なんということだろうか。もう一眠りしようとしたらそれを遮る声とともに包丁が飛んできた。


 なんとか避けることが出来たけど、あと少しでも遅れていたら致命傷は免れなかったと思う。


「いや、朝から包丁投げるとかちょっと待って下さいよ」


「あらごめんなさい。これからは朝は投げないようにするわ」


「もちろん昼も夜もダメですよ!」


「……チッ」


 舌打ちしやがったよ、この人。


「まぁ冗談はここまでにしてナデナ、早く起きなさい。急がないとアリウム様が起きてしまうわよ?」


 いや、冗談って……避けなかったら普通に致命傷だったんだけど。っていうかあれは絶対に起こそうとしてたんじゃない、きっと僕をあわよくば排除するつもりだったに違いない。


 まぁでもとりあえず今は早く起きないと。さっきは危うく気持ちのいい朝の誘惑に負けかけたけど、アリウムより遅く起きているようでは付き人失格だ。


 ちなみにさっきの襲撃者はプラム=ランタナさんだ。


 襲撃はあくまで副業で、本業はアリウムのお世話係だ。ここのところ副業のスキルがメキメキ上昇しているのが正直とても怖い。


 役職柄、プラムさんとはよく顔を合わせる……と言うか、ほぼ四六時中顔を合わせている。

 ただ、プラムさんは僕にあまり良い印象を持っていないらしく、よくお小言と包丁を貰っている。


 でもその理由には心当たりがある。というか、心当たりしかない。


 だって突然現れた身元不明の少年が小さい頃からずっと面倒を見てきた王女様の付き人になってしまったんだから。しかも王女の強い希望で、だ。


 気分的には大事に育ててきた娘が突然現れたチャラい男に貰われたお父さんってとこだろうか。


 これでプラムさんに僕と仲良くしろ、なんて言うのは酷だろう。


 おっと、そろそろ行かないとせっかく起こしてもらったのにそれを無駄することになる。そんなことになったらまた包丁を投げられそうなので少し急ぐことにした。










###########










 少し早足でアリウムの部屋まで行くと、ちょうどプラムさんがアリウムを起こしたところだった。……一応セーフだよね?


「プラムもナデナもおはようございます」


「おはようございます、アリウム様」


「おはよう、アリウム」


 目が覚めてまず最初に挨拶をしたアリウムに対して対照的な二人の返事。


 真面目なプラムさんはやはり礼儀を忘れずに敬語で返している。……いや、これが普通なんだけど。


 それに対して僕は王族に対してまさかのタメ口だ。不敬罪に問われても文句が言えない。


 僕だって礼儀を知らないわけではない。それでも僕がアリウムに敬語を使わないのはそれをアリウム自身が望んだからだ。


 まぁお陰でアリウムとしゃべる度にプラムさんからの視線が痛いんだけど。


 敬語を使えばアリウムに睨まれ、使わないとプラムさんに睨まれる。なんて理不尽な世の中何だろうか。



 そしてアリウムはただ今お着替え中です。



 もちろん僕はその間部屋の外に出ている。いつもこのときに思うのだけれど、王女様の付き人が男なのは色々と不便なんじゃないだろうか。


 付き人は王女様をサポートしたり襲撃から守ったりするためにほぼ四六時中行動を共にしなければならないのに一緒に居られない場所や場合が少し多過ぎる気がする。


 まぁサポートなら元々アリウムにお世話係として付いていたプラムさんがいるし、襲撃から守るという点ではアリウムの人柄やこの城の雰囲気を考えればおそらく大丈夫だろう。


 ……あれ? もしかして僕、要らなくない?


「すみませんナデナ。お待たせしました……ナデナ? 顔色が悪いですよ? 具合でも悪いんですか?」


「ねぇアリウム……ふと思ったんだけど僕の仕事って何をすればいいのかな?」


「そういうのはプラムに聞いた方がいいと思いますよ?」


「すみませんプラムさん、僕の仕事って何をすればいいんですか?」


「そんなこともわからないの? まったく……あなたの仕事は……」


「仕事は?」


「……さぁアリウム様、早く行きましょう。時間は待ってはくれませんから」


 アリウムに爽やかな笑顔を向けて言うプラムさん。 ってちょっと待て、なにカッコイイセリフでさりげなく流そうとしてやがる。


「ナデナの仕事は結局何なのですか?」


 だがアリウムは誤魔化せなかったようだ。さて、プラムさんはこの場をどうやって切り抜けるのだろうか。


「アリウム様」


「はい?」


 プラムさんはおもむろにアリウムの肩に手を置いた後、表情に(かげ )りを浮かべて、


「世の中知らないほうが幸せなこともあるんですよ……」


 なんて言った。 いや、さすがにそれはアリウムでも誤魔化されないんじゃ……


「す、すみませんでした……」


 すっかり誤魔化されていた。


 はぁ……これからの仕事が激しく不安だ……

というわけで一応新しい章に入りました。

基本的にレギュラーキャラはこの三人プラスα(ヘイシェーとか)になる予定です。

そして新キャラのプラムさんのキャラが初登場でぶれました。

……キャラが目を放した隙に動き回るんです。


これからはもう少し早い更新を心がけていくので、どうか生暖かい目で見守ってやってください。


誤字脱字の指摘やアドバイス、感想などお待ちしています。


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