番外編「パパ将軍の奮闘記と、初めてのお留守番」
レオンが生まれてから半年。
将軍屋敷は、すっかり「レオン中心」の世界になっていた。
あの強面の兵士たちが、レオンが笑えばデレデレになり、泣けば右往左往する。
グリーグ様も例外ではない。
執務中も「レオンは起きているか?」「ミルクは飲んだか?」と気になって仕方がない様子で、部下たちに「将軍、仕事に集中してください」と呆れられる始末だ。
そんなある日、私がスノーバームの取引のために、隣町まで出張することになった。
初めての、グリーグ様とレオン二人きりのお留守番だ。
「……本当に大丈夫ですか? おむつ交換、できますか?」
出発前、私は何度も念を押した。
「任せろ。俺は軍を指揮する男だ。赤子の世話くらい、造作もない」
グリーグ様は胸を張って答えたが、その額には冷や汗が滲んでいた。
私が馬車に乗り込むと、彼はレオンを抱き、悲壮な顔で見送った。
さて、留守番の始まりだ。
グリーグ様は、まずレオンをご機嫌取りのおもちゃで遊ばせようとした。
「ほら、レオン。これは木彫りの熊だぞ。がおー」
しかし、レオンはプイと顔を背け、泣き出してしまった。
「うわぁぁぁん!」
「なっ、なぜ泣く! 熊が嫌いか? じゃあ狼か?」
慌てて獣化し、巨大な狼になってあやそうとするが、逆に驚かせてしまい、泣き声は大きくなるばかり。
「た、隊長! 泣き止みません!」
「ミルクか!? いや、さっき飲んだばかりだ!」
「おむつですよ、将軍!」
部下の助言で、ようやくおむつ交換に取り掛かる。
しかし、暴れるレオンの足を押さえ、小さなおむつをテープで止めるのは、戦場で剣を振るうより難しい作業だった。
「じっとしてろ! ……よし、今だ! ……ああっ、ずれた!」
悪戦苦闘の末、なんとかおむつを替えた頃には、グリーグ様はゼイゼイと肩で息をしていた。
その後も、離乳食を口の周りに塗りたくられたり、寝かしつけで自分の方が先に寝てしまったりと、波乱の連続だった。
夕方、私が帰宅すると、居間では疲れ果てて大の字で寝ているグリーグ様と、そのお腹の上でスヤスヤと眠るレオンの姿があった。
部屋は散らかり放題だったが、二人の寝顔は幸せそうだった。
「……お疲れ様、パパ」
私は苦笑しながら、二人に毛布をかけた。
目を覚ましたグリーグ様は、私を見るなり情けない顔をした。
「……ジュリアン、お前はすごいな。俺は敵の大軍と戦う方がマシだと思った」
「ふふ、子育ては戦場よりも過酷ですからね」
そう言って笑い合う私たちは、今日も幸せだ。




