変性意識状態にさせるオルゴール
【作者より】
拙作は「第7回 下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ大賞」に参加させていただいた作品です。
テーマは「ギフト」と「オルゴール」を使わせていただきました。
※ 途中から登場人物の一人称や口調が変わる場面がございますが、誤字ではありませんので、あらかじめご了承ください。
なんも変哲のない小さなオルゴール――
ただし、持ち主によっては変性意識状態になるという噂があった。
これから始まる物語は何も知らずにオルゴールを購入し、変性意識状態になった女性の話である。
†
私は眠れない時、いつも頭元に置いておくものがある。
まるでカリンバのような綺麗な音色で、ぜんまいをぐるぐる回すタイプの小さなオルゴール。
あるアイテム屋で見つけ、誰かからもらってギフトボックスにしまい込んでいたクーポン券を使って実質無料で購入したもの。
ぜんまいを動かなくなるまで回し、ベッドにごろんと横たわり、穏やかで幸せな夢を見る――
オルゴールが完全に止まり、私は目を覚ました。
ぐっすり眠っていたせいか、意識がふわふわした感覚が残ったまま洗面台に向かう。
鏡を見ると肩まで伸ばした艶やかな銀髪はそのままに、優しく穏やかな笑みは完全に影を潜め、瞳には光を宿していない。
今にも人間を殺められるくらいの冷酷な表情を浮かべていた。
これはオルゴールの代償ではないと思いたかったが、残念ながらそれは真実となった。
はじめてその顔を見た時はゾッとしたが、現実を受け入れるしかない。
これが今のあたしなのだと言い聞かせ、徐々に慣らせていった。
メイクは確実に誰なのか分からぬよう、濃い目かつ綺麗に魅せる。
髪型や服装も同様にかつてのあたしを打ち消されるかのように――
理性?
そんなものは何処かに捨ててきたわ。
それと同時に感情も記憶と共に消え去られたし。
あるのは「他者への殺意」。
ただそれだけ――
今のあたしならば、刃物を振り回しながら歩いても拳銃を突きつけても何も怖くないわ。
自らの手で人間や動物を殺めることは当然のこと。
心臓や脳、動脈の位置に狙いを定めることができたらあとは簡単。
致死量を越える睡眠導入剤による注射や刃物、銃弾で身体を傷つけるだけ――
運とタイミングがよければここまでこなせば任務終了。
すっかり冷えきった亡骸を見ても感情なんて存在しないから嘲笑しながらただ上から見下すだけよ。
あたしだけかもしれないけれど、返り血は美しく綺麗な花びらに見える。
その景色がとても好きだから暗殺の依頼は止められないの。
薄明かりに照らされながらあたくしと踊りましょう。
貴方の生が終わるその瞬間まで――
†
なんも変哲のない小さなオルゴール――
ただし、持ち主によっては変性意識状態になるという噂がある。
次にそのオルゴールを手にするのはそこの貴方かもしれない――
最後までご覧いただきありがとうございました。
2025/12/07 本投稿




