第1話 初め
宇宙は果てしなく続いている。
角がない。空気もない。
広がっているのは暗闇とその中で光る星たち。
何億も何兆も・・・その上の数の星がいる中のたった1つがこの地球だ。
海が10分の7、陸地が10分の3と言われている。
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今日は、里菜の誕生日。9月12日。12歳になる。
「里菜。今日は家族でご飯食べに行くのよ」母が穏やかな顔で言った。
母の名前は、一美。
いつもはそんな穏やかな顔などしなかった。ほとんど無表情で、笑うのはほとんど無かった。
話しかけても返事はするが表情が無い。
里菜はそんな一美が嫌だった。
しかし、今日は珍しい。
というより、毎年何か記念日には表情が変わる。
なぜだろう?と思うがそれはそれで楽しいかもしれない。
珍しい顔が、見られる記念日が楽しみになるからだ。
里菜は、わざとらしく「う~ん・・・」と返事をした。
しかし一美はそんな返事など気にしないで、鼻歌なんかを歌いながら化粧道具を手に取った。
里菜が住んでいる家は家賃3万円のボロっちいアパートだ。
ドアは鍵はあるが、外から思いっきり引っ張れば素手で簡単に開けれるような弱さだ。
窓も、1枚しかはめておらず石ころ1つあれば簡単に割れそうだ。
部屋は1つしか無くそれも縦4m、横5mくらいの超ミニサイズ。
里菜は、その部屋を使っていた。一美は茶の間の半分を利用している。
使い込んでいて、弱弱しい光しか出さない里菜の部屋の電気は、
埃が溜まり線が細く、今でも切れそうだった。
それでも里菜は自分のベッドや机があるので、電気など気にしないで使っていた。
里菜は、タンスから服を引っ張りだした。
ちょうどその時、ある事に気がついた。
“―今日は記念日―”?
里菜は目を見開いた。そして手に持っていた服をパラパラと落としてしまった。
「今日は・・・まさか・・・」里菜はガタガタと震えながら、つぶやいた。
今日の外食は、祖父・祖母。それにいとこの朱莉お姉ちゃんがいる。
それと――――――――
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ちょうど今、日が暮れたところだ。
もう、祖父・祖母、朱莉お姉ちゃんは家に来ている。
後、1人―――――。
家の外から、車の音がした。そして里菜の家の前で止まったようだ。
里菜は心臓がドクドク大きく揺れていた。
「ざっ・・・ざっ・・・」誰かが外から歩いてくる足音が聞こえた。
「あ、来たんじゃない?」朱莉お姉ちゃんが笑いながら言った。
「そうだね。会うのは何年ぶりじゃ?」祖父が言った。
「お父さん!最後に会ったのは、つい3ヶ月前ですよ!!」一美がつっこんだ。
そしてついに・・・
『ピンポーーーン』家のベルが鳴った。
一美はキャッキャ言いながらドアを開けた。
そこには、1人の男性が立っていた。
「孝也~~~~!!」一美が叫んだ。
孝也はニッコリ笑った。
背は、180cmの長身で、歳は32歳くらい。
黒いスーツを着ていて、どこかのケーキショップの紙袋と、舗装されたピンクの大きな箱を持っている。
「やあ。こんばんは。」孝也はもう一度笑った。
しかし里菜は、少しも笑わなかった。
孝也はどんな人物なのか―――――――――
里菜には思い出したくもない辛い思い出が頭の片隅にあったのだ。
そう・・・孝也は・・・・・・・・・・。
――続く――