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気がついたら蝶になってました  作者: 雪山
第一章 全ての始まり
6/10

策とはいえない策

お久しぶりです。まだ忙しい日が続いていますので更新頻度は遅いままです。すいません。

 調査を終えて衛兵団本部に戻ったミレーナ達は定例会議を行っていた。


「ナナ婆ことナナミスさん殺害事件について、ほとんどわかっていない。しかし私は明日からしばらくの間、私用でここを離れなければならない。私がいない間は副団長のミレーナの指示に従って調査を進めるように。ミレーナ、明日からよろしく頼む」

「わかりました。必ず犯人を捕まえます」


 ミレーナが答える。その声には強い意志が感じられた。多分ミレーナはナナ婆の娘なんだろう。ナナ婆の話からナナ婆の娘はきっと出世している。俺と話ができるという珍しいスキルといい、副団長という地位といい、間違いないだろう。


「期待しているよ。……ところでミレーナ、まだ肩に蝶が止まっているぞ」


 サリス団長に再度指摘される。じっとしていたが、やっぱり目立つんだろう。仕方がないけど。


「どうやら怪我をして飛べないみたいなので、面倒を見ようかと思っています。お気になさらず」

「……ならいいが。とにかく! よろしく頼むよ。では、解散!」


 サリス団長と他団員達が会議室から出ていく。皆が出ていくのを確認した俺達は、もう一度考えを整理するため、調査資料に改めて目を通す。


「ナナ婆が殺された時の話をしてもらっていい?」

「ああ。ナナ婆が店を閉めてしばらくたった後、外からクライズが慌てた様子で呼ぶ声がして、ナナ婆が店を開けた途端、腹を刺されて殺されたんだ」

「その後は?」

「その後は……普通に店を漁って帰っていった。人通りが全くなかったから目撃者もいなかったよ」

「うーん。どうしようか」


 資料を眺めながら考える。何かクライズに繋がるものか、クライズ周辺を調べる大義名分が欲しい。このままだと何もできない。


「そういえばクライズは少し前に薬を買いにきてたっけ。とりあえずその話を聞いてみたらどうだろう? ボロが出るかもしれない」

「……それしかないか」


 俺達はクライズの部屋に向かった。部屋の灯りがついているためクライズは中にいるだろう。ミレーナは扉を叩く。


「クライズいる? ちょっと聞きたいことがあるんだけど」

「はい。どうかしましたか?」


 しばらくして扉が開き、部屋の中から眠そうなクライズが出てきた。


「急にごめん。クライズは最近ナナ婆のお店に行ったって情報を得たんだけど、何買ったの?」

「確かに行きました。……それが何か事件に関係でも?」

「いや事件とはあまり関係ないんだけどね。ナナ婆の薬は有名って聞くけど身近に使用者がいなかったから話を聞いてみたくて」

「そういうことですか。俺が買ったのはポーションですがナナ婆のポーションはすごいですよ。先日親父が討伐依頼から重傷を負って帰ってきたんです。ポーションをかき集めて使ったんですが、全然治らなくて。最後の賭けで噂のナナ婆のポーションを買って使ってみたんです。そしたらみるみる傷が治っていったんですよ。……でも、もうそのポーションはないんですよね。残念だなぁ」

「……そうだね」


 クライズは本当に残念そうな顔をしていた。それを見てミレーナは感情を押し殺すのに必死そうだった。クライズが殺しておいて、何を残念がっている。俺は心の底からクライズを嫌悪していた。


「ミレーナ副団長? どうかしましたか?」

「いや! 大丈夫だよ」


 ミレーナの表情に疑問を持ったクライズの問いにミレーナは慌てて取り繕う。


「それならいいんですが。他に何か聞きたいことはありますか?」


 ミレーナは黙ってしまった。クライズはボロを出さなかったし、この会話の流れで鎌をかけることもできなかった。このままだと……


「くそ! 賭けだ! ミレーナ! クライズの父親にも話を聞きたいから家を訪ねていいかって聞いてみてくれ。もしクライズの家に入れれば、俺がクライズの家を調べることができる」


 俺の言葉にミレーナは黙って首を小さく縦に振る。


「ミレーナ副団長? 本当に大丈夫ですか?」

「大丈夫。ちょっと考え事してただけ。えっと、クライズの家に行ってもいい? クライズの父親にも話を聞いてみたい」

「いいですよ。ちょっと待っててください。……これが俺の家の住所です。親父はまだ家で休養してますので、いつでもいると思います」

「ありがとう。聞きたいことはこれで全部だから。お疲れ様」

「お疲れ様です。絶対犯人捕まえましょう!」

「うん」


 クライズの部屋の扉が閉まる。それと同時にミレーナは舌打ちをする。クライズの言葉は度々俺達の神経を逆撫でした。しかしミレーナが我慢してくれてよかった。これで何か証拠が見つかるかもしれない。


「ミレーナ、お疲れ様」

「うん。早速明日行ってみよう」


 クライズが簡単に家を訪ねることを許可したことに少し不安が残るが、次の日、俺達はクライズの家を訪ねた。

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