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第9話 最強のプランB

「“神殺し(ジャイアントキリング)作戦”……我々は本作戦をそう呼んでいる。その実行役を、不知くん――いや、ヒーローネーム・イモータルに頼みたい」


 護国寺は真剣な眼差しで、宰吾を見据える。宰吾はというと、まだこの話を呑み込みきれていない、という顔をしていた。


「……そもそも、なんですかそのイモータルって。一度も名乗ったことないんですけど」


「ああ、すまない。君はまだヒーローネームを持っていなかったようだったから、便宜上名付けさせてもらったよ。意味は『不滅』……安直すぎたかな?」


 まぁ別に名前なんてどうでもいいけど……。

 と、宰吾は頭を掻いた。


「作戦内容をもう少し詳しく話そう。ロキの話を聞いた限り、“神”という存在は我々――いや、他四つの異世界でも及ぶことができない圧倒的な……何ならかの力を持った者、らしい。現段階では何も分かっていないので、これを信じるしかないのが悔やまれるところだ」


 部屋の隅に置かれていたホワイトボードに、横並びに四つの丸印、そしてその上に星印を描き、護国寺は咳ばらいをした。


「だが、それは個々の世界を各々見た場合だ。我々含め五つの世界は、全く別の性質を持っている。もしかしたら、世界同士で手を組み、“神”に挑めば……勝算もあるかもしれない」


 そう言ったところで、ロキが口を挟んだ。


「それでも、微々たるものだけれどね」


 護国寺は一瞬、険しい顔をしたものの、希望に満ちた瞳の光は消え失せなかった。


「我々国防省、そしてトーキョー政府としても他の世界と交渉はしてみるつもりだが……いかんせん世界同士の問題だ。相当な時間が掛かるだろう。その間にも犠牲は出続ける……そこで、君には水面下で動いてほしいんだ」


 一体どういうことだろう。と、宰吾は首を捻る。


「……君には、四つの世界に赴いてもらい、その世界での最強の戦士を仲間に加え、最強のチームを作って、“神”に挑んでもらいたい」


 その言葉を聞き、宰吾の全身に鳥肌が立った。異世界を巡り、最強のメンバーを集める……。


「君の能力は、『不死身』だ。これから言うことはもしかしたら、反感を買うことかもしれ名が、君ならどんな環境下でも、どんな扱いを受けても、トライ&エラーを繰り返して、作戦を続行できるのではないかと、考えた」


 それはつまり、お前なら何度死んでも生き返るから大丈夫だろう、ということだ。

 俺を人間扱いするつもりないのか……? と宰吾は心の中で悪態をつく。


「……いや、でも、そんな簡単な話じゃないですよね」


 宰吾は圧倒されつつも、言う。


「俺一人なんかが、そんなトーキョー都民全員の命を預かるなんて……無理ですよ」


 そうだ。自分なんてせいぜい街で暴れる怪人を退治するのが関の山のストリートレベルのヒーローである。ジャスティスのようなヒーローの方がふさわしい。


「そのジャスティスも、異世界の爬虫類相手に瀕死状態だがね」


 ロキがタブレット機器を見せながら、そう口を開く。液晶には、厳重な医療措置がなされるジャスティスの姿があった。本来なら即死のところ、こうして生きている時点ですごいことではあるが……。


「君なら、こうなることもない。敵に勝つ必要はないんだ。君はとにかく生き延びて、最強の仲間を集めることに集中してもらいたい」


 護国寺の力強い言葉が宰吾の胸にのしかかる。


「それに、我々国防省やG.O.Tも犠牲者が一人でも減るよう全力で立ち回るし、“神”に勝つための交渉も進める。むしろそっちがメインのプランAだ。世界同士が正式に手を組めればそれ以上のことはない。……つまり、君だけに世界の命運を託すわけじゃないんだ」


 宰吾の肩に、護国寺はゆっくりと手を置いた。


「君には、最強のプランBを担ってほしい」


「最強の、プランB……って……」


 それでも、それでも重い。自分でいいのか。自分ではないといけないのか。

 宰吾の頭の中でぐるぐると思考が巡る。

 ジャスティスの敗北……シブヤで起きた出来事……今日起きた様々が、走馬灯の如く明滅する。


「……俺に、できるんでしょうか……」


 宰吾の力のない声が、静まり返った部屋に落ちた。

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