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第48話 また落ちる

コスモの魔導書専門店内は、何もなかった奥の部屋を見てしまうとやはり雑多としていて、歩みを進める動線を見つけるのに一苦労だった。

 だから、宰吾は完全に油断していた。


「ぐぇええ!?」


 後方から聞こえた奇声に、アイザックは思わず振り向く。

 そこには、何もなかった。ただ、土埃か何かが舞い上がっている。


「サイゴが消えた……!?」


 無論、そんなことはない。宰吾は姿を消したのではなく、落ちただけなのである。

 宰吾は落ちた先で、梯子にぶつかって折れた両足の再生を待ちながら仄暗い周りを見渡す。おびただしい数の木箱と壺、そして本棚が所狭しと詰め込まれた――六畳くらいだろうか、倉庫のような部屋である。


「ああ、そこは床下収納だね。入口の建付けが悪くて扉部分を踏むと抜けてしまうんだ」


「……そういうのは先に言ってくれ……」


 コスモのあっけらかんとした言い方に苛立ちを覚えながら、宰吾は呟いた。そんな宰吾を見下ろして、手を差し伸べるコスモ。


「久しぶりに覗くな。中に何が入っているのかもちゃんと把握できてないよ、ははは」


 ははは、じゃねぇ。

 と思わず心の中で悪態をつき、差し伸べられたコスモの手を無視して、梯子を上がる。


「さて、私はまず手っ取り早く騎士団がどこまで情報を手に入れているか探りを入れてくるとしよう。その間に、二人は町中で手掛かりがないか探してきてくれないかな。二手に分かれた方が早いだろう?」


 宰吾とアイザックは、そう言い残して姿を消したコスモを案じながら、街中を歩いていた。騎士団の兵士たちがそこら中歩き回っているのに、捕らえられない理由は、コスモが去り際に渡してくれた魔具「幻惑の香」が効いているからだろう。


「しっかしすげぇなこのお香。香りに包まれてる人物の姿を察知しづらくさせる、だったか?」


 アイザックは宰吾が手に持つお香をまじまじと見ながら言う。その際、煙を吸い込みすぎたのか、勢いよくせき込んだ。


「おいおい大丈夫か? ……コスモの説明によれば、あくまでもその人物が目に入りづらくなるってだけで、見えなくなるわけじゃないんだろ? だったら、目立つ行動は避けときたい」


 宰吾は周りを警戒しながら歩く。


「……それにしてもこのお香、効果が出てるのかどうかイマイチ分かりにくくて嫌だな……自分が香りに包まれてるかどうかなんて分からないだろ……」


 宰吾の溜息に、アイザックは笑う。


「コスモの野郎、なんだか信用ならねぇが、あいつの魔具もとはな、がはは! ……そんで、まずはどこに行くんだ? リジェってやつがどこにいそうか心当たりはあるのかよ」


 アイザックは宰吾の背中を見ながら問うた。

 二、三秒、宰吾は黙りこくり、そしてゆっくりと口を開く。


「……いや、俺たちはまずルーナについて調べる」

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