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第47話 スーパーヒーローとは

「……概ね、了承した。だけど、ルーナの救出に関しては手伝えることなんてないよ。死んでしまった人間は生き返らない。少なくとも、この魔法の世界での原則だ。……キミがイレギュラーなだけで」


 コスモは、宰吾を指さして言った。

 宰吾は、元の世界でだって俺みたいなのはイレギュラーだ、と心の中で自嘲する。


「……分かりました。でも、何かできそうなことが見つかったら、そのときはお願いします」


 宰吾の言葉に、コスモは微笑んで、そして言った。


「ではまず、そのリジェという人物について聞かせてもらおうか」


 やっと話が進みだした、というように、アイザックも身を乗り出す。


「リジェは、俺と同じ世界からやってきたスーパーヒーローです。本来、俺をこっちの世界まで送り届けるためにスライムの森まで来ていたんですけど、そこで行方不明になってしまって」


 コスモはふむ、と膝を組んで話を聞く。


「スライムの森っていや、ウーズ森林のことか。あそこはスライムの群生地で有名だぜ。パーティに魔法使いがいればなんてことない森なんだが……何の知識もねぇ異世界人には酷なところかもな」


 アイザックが口を挟む。この辺りの地域に詳しいのは、探索の賜物だろうか。


「……酷い目にあったよ。それで、リジェの能力は俺に似ていて…………凄まじい回復力です。それと、耐久力も」


 コスモが眉をひそめ、まさか、と呟いた。空気が張り詰める。


「ええ、そのまさかです。あの手配書は、恐らくリジェのことで……」


「そりゃ面倒なことになったな。オルトレアドの騎士団はかなり手強いし、万一捕まったとなりゃあ、牢獄はかなり堅牢だって話だ」


 まるで経験者のように語るアイザックに、宰吾は眉をひそめる。そんな空気を悟ったのか、アイザックはこう付け加えた。


「……昔、雇い主がぶち込まれたことがあるってだけだよ」


「まぁ確かに、オルトレアドの騎士団はそれなりに手強い。そのリジェくんという彼がどれだけ手練れであっても、多勢に無勢では成す術もないだろうね」


 不安が一気に募る。もしも投獄されてしまったとして、自分たちに救出することなどできるのだろうか。


「私がいれば、まぁある程度はなんとかなると思うが……オルトレアドも強国の一つだ。――ひとり、魔王を倒した勇者にも肩を並べた剣聖レオンハルトが厄介だろう」


 剣聖。

 またもや異世界ファンタジーらしい言葉が出てきたな、と宰吾は腕を組む。


「そもそも本当にそのリジェくんは殺人を犯していないと言い切れるんだよね? ただでさえ指名手配犯を助けるってだけでも立派な反逆罪なのに、冤罪でもなかったら言い逃れる余地もないよ。私ならともかく、アイザックくんやサイゴくんは極刑を免れまい」


 それについては、自信があった。宰吾の中で、答えは出ている。


「リジェは、スーパーヒーローです。スーパーヒーローとは、己の正義に従って、人を助ける存在……例え異世界であっても、一般人を殺すなんてことはしないはずです。……もし、万が一、殺してしまっていたら…………そのときは、この国の法律に基づいて裁かれるべきです。ただ、残されたシェパ――仲間たちに、無事であることだけは伝えたい。それが俺の正義です」


 迷いのない宰吾の瞳が、真っ直ぐにコスモへと突き刺さる。己の正義を貫く。それがスーパーヒーローなのだ。


「己の正義、ね。面白い。じゃあつまり、とにかくリジェくんの生死を確認し、生きていれば冤罪かどうかの確認。――確認ばかりだね。冤罪なら救出、殺人鬼確定なら騎士団も突き出す、と」


「騎士団は“不死身の異世界人”という特性だけでも、異質と判断して処刑したがるだろう。騎士団より先にリジェくんを見つけ出すことが先決だ」


 コスモは立ち上がり、部屋の出口の扉へ向かう。

 宰吾とアイザックもそれに続いた。


「まずは情報収集といこうか」

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