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第33話 トーキョーにて

 トーキョー某所。

 そこは、内部の人間でも一部の者しか立ち入りを許されていない。


「あの、僕がこんなところに入って大丈夫なんですか……?」


 シェパが借りてきた猫――もとい犬のように縮こまりながら、アリーに話しかける。


「大丈夫大丈夫、もうシェパくんは立派な中枢の人間だから」


 そんなさっぱりとした笑顔で言われても……、とシェパは尚更気まずくなった。

とは言え、この場にはシェパとアリーの二人きりだから、シェパにとっては目の前の刺激的な女性に対する緊張感さえ克服すれば特段緊張するような状況ではない。

二人きり、と言っても目の前にある透明のアクリル板の向こうには、昏睡状態の地上最強ヒーロー・ジャスティスが白いシーツに包まれて横になっているのだが。


「不意打ちとは言え、まさかあのジャスティスがここまでやられるなんてね」


 腕を組みながら、アリーは溜息を吐く。組んだ腕のせいで強調されたブラウス越しの胸元が目に入り、咄嗟にシェパは目を逸らした。


「そういうの慣れてるから、罪悪感なんかいらないよ?」


 思考を読まれたことに驚いて、ビクッと体を反らせたシェパは、顔を赤くして言った。


「改めて、思考を読まれるってなんだかすごい能力ですよね。僕の能力に比べたらチート級っていうか……」


「そんなこと言ったら、そこで眠ってる“怪物”はどうなっちゃうんだろうね? それに、宰吾くんも。それに、戦えない私より戦えるキミの方がよっぽどすごいって」


 そう言われて、シェパは黙りこくってしまった。

 未だ意識が戻らないジャスティスを見て、シェパは溜息を吐く。


「……ジャスティスさんがいたら、リジェは行方不明にならずに済んだんでしょうか……」


 シェパは両手の拳をぎゅっと握り込む。


「どうだろうね、そればっかりは分からないな。ジャスティスも万能じゃないし」


「で、でも、神殺し(ジャイアントキリング)作戦が不知さんじゃなくジャスティスに任されていたら……って、アリーさんも考えたことないですか?」


 アリーは、ジャスティスの眠っている顔を眺めて、言う。


「たらればの話をしたって仕方ないよ。それにジャスティスは異世界の生き物にこんな風にされたんだから、こうならない宰吾くんの方が適任だと判断した上の人たちは正しいと思うよ」


 沈黙。

 アクリル板の向こうで、ジャスティスが静かに呼吸している。


「さて、本題」


 アリーは両手をぽん、と合わせて切り替える。


「いよいよ戦争が始まるみたいなんだ」


 シェパの動きが止まった。ついに来たか、と生唾を呑み込む。


「今朝放った偵察用の無人ドローンが、一昨日私たちが行ってきた森の方からの進軍を確認したみたい。長距離レーダーによる確認だから、確実なものじゃないけどね」


「あの森の方……!?」


 シェパは一歩、前のめりになりながらアリーに聞く。


「そう。リジェくんが行方不明になった森。今、迎撃部隊を編成しているみたいなんだけど、さて、どうかな? シェパくんも戦場に行く?」


 シェパは、身震いした。

 またとない機会。リジェを、探しに行けるかもしれない。


「もちろん、トーキョーに敵を招き入れないように迎撃するのがメインの任務だけど、その最中にリジェくんを見つけることも――」


「行きます」


 シェパの鋭い眼光が、アリーを貫く。


「即決だね~? ほとんど何も考えずに決めたでしょ?」


「心が読めるなら、分かるでしょう? 僕の気持ち」


 ゾクりとアリーの全身に鳥肌が立つ。


「……うん、痛いほど、分かるよ」


「リジェとはずっと一緒に戦ってきたんです。必ず、助け出します」


 アリーはこくりと頷き、「じゃあ」と振り向く。


「早速、上に掛け合ってみるから。おいで?」


 アリーに促され、シェパは部屋の扉へと向かった。

 そのとき、犬並みの危険察知能力が働いた気がして、ジャスティスの方を振り向く。


「なんか、今……ちょっとだけ動いたような……?」


 まぁいいか、とシェパはアリーに続いて部屋を後にした。

 ジャスティスは、白いシーツに包まれて横になっている。

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