第四話
それから数日、俺たちはひたすら戦術と実践を繰り返した。ミザリー先生の授業そのものはわかりやすく、魔法を使えるようになる者も現れた。ちなみに、西宮も魔法を使えるようになり始めた。使える属性はまだ一つだけだが、そのうち複数属性つかえるようになる・・・かもしれないらしい。できればすべて使えばいいのだが、それは高望みかもしれない。俺?俺はまだ一度も魔法つかえてないですよ?火も水も、草も。なんだったら時空間魔法っぽい魔法も使えてない。ミザリー先生からは、特殊な魔法のため覚えるのに時間がかかるのかもしれないとのこと。
「実践訓練開始!」
騎士団長の掛け声で、張野が目の前の騎士と戦闘を始める。持っているのは・・・西宮と一緒の長剣だな。剣道やってたって言ってたし、最初は刀的な武器かと思ったが、残念ながらこの世界に刀の概念はないらしい。以前召喚された勇者がそういったものを伝えていても良いものだが・・・残念ながら、この世界には伝わらなかったようだ。まあ、俺たちもたかが学生の身分で刀の作り方など知らないため伝えられないのだがな。
張野の戦いは、見ていて全く理解ができなかった。人と戦った経験など、中学のテニスが最後だ。あんな近接でばかすか攻撃する競技は・・・体育の授業の柔道ぐらいか?受け身がうまいって先生にぶん投げられて内臓飛び出そうになってトラウマだったなぁ・・・それはいいか。張野だが、どうやら看破の能力で相手の動きを見切っているらしい。聞いた話だと、対面した人間の考えをある程度読み取れるらしい。今まで見たことのない真剣な目で戦っている姿に、ついつい息をのんでしまう。
「流石だな。勇者の中で一番近接戦闘が強いって言われてたけど、本当らしいな」
「騎士団長が言ってたやつか。俺らあんな真剣な張野初めて見たよな」
「それな」
「お前も、早く時空間魔法つかえるようになれば、もしかしたら最強!強えぇ!って言われるかもよ?」
「別に言われたいわけじゃないけど、あんまその辺り触れんでくれ。まだ使えない現状に若干心が折れそうなんだよ。俺だって、早く魔法使えるようになりたいんだよ」
そんな話をしていると、張野の戦闘は終わっていた。長剣が騎士の首元に当てられ、騎士が武器を落としていた。まじで、現職の騎士を倒すとかどんな戦闘能力してんだよ・・・それを見て、俺たち以外の召喚された勇者たちはギラギラとした視線を向けていた。同じく近接で戦おうとしている奴らが、俺だってできるんだ的な考えをしているんだろうな。しょうもない。
「大木君、張野君とかかわりの深いあなたに聞きたいんだけど、なんであんなに強いの?」
「え?さあ?俺も知らない。なんであんなに強いんだろうな」
西宮と話していた俺に、宮野さんが話しかけてきた。召喚される前は関わりがなかったが、最近になって少しだけ話すようになってきた。というか、この人話せば結構面白い人だった。着眼点が素晴らしい。この人も俺と同じ近接と魔法の両方を使って戦おうという考えらしいがその能力が素晴らしい。俺と同じで魔法そのものが能力なのだが、なんとなんと、男のロマン『重力魔法』だった。うらやましい!俺も重力魔法とか使ってみたい!
「西宮君も知らないの?」
「うぅ~ん、俺と張野は高校からの付き合いだから、剣道で全国大会出るくらいには強いってのは知ってるけど、あいつに関してはそれ以上に能力のおかげだろ。基礎的な強さに相手の攻撃先読みできるって、普通に最強枠じゃね?」
「え!?何?あいつ剣道で全国行ってんの?知らなかったんだけど!?」
「大木君は二人とは大学で?」
「そうそう。最初は西宮と少し関わりを持って、その後一緒にいた張野とも・・・って感じ。やっぱ知らないことも多いよな」
宮野さんとそう話しているうちに、ほかの近接組の戦闘も終わる。ほとんどは騎士の人に勝てなかったが、何名かは勝利している。しかし・・・不自然な動きが多いためおそらく能力で何かしらバフをつけてるんだろうな。
「そうそう西宮さん」
「何?」
「重力魔法、使えそう?」
「まだね。ただ、なんとなく魔力を感じ取れるようにはなったわ。西宮君なら見えるんじゃない?」
「どれどれ・・・おお!やっぱ特殊な魔法は魔力の色も見え方も特殊なんだな!宮野さんの体の周りを紫色の魔力が包んでる感じだな」
「やっぱり、魔力を纏うことはできるんだけど・・・これ以上ができないのよ。魔法の発動はイメージの世界。何かこう、イメージある?」
「重力魔法って言ったら、やっぱ重くするとかか?相手の体の上から魔力で重さを足す的な?」
「なるほど・・・今度やってみるわ」
とは言いつつ、俺もイメージはできていても使える魔法はとてつもなくショボい。正直、ここまでくると何かしら切っ掛けがないと発動しないとかありそうだし・・・あれか?漫画でよくある、何か覚醒イベント的なのがあるのか?それか、ただ単純に能力の練度が足りないのか・・・
「次、魔法の発射訓練だ!」
呼ばれた西宮は支給された杖を使って魔法を放つ。この世界では魔法を使うのに詠唱のようなものは必要ないらしい。イメージし、魔力を流し、魔方陣を展開。その後、魔法が発射される。魔方陣か・・・今度俺たちが召喚された魔方陣見させてもらえないかな?もしかしたら、あの魔方陣を軸に元の世界に帰れたりは・・・出来たらいいけど、そんな簡単なわけないか。
「は!」
西宮の杖から放たれた火の弾は一直線に的へと進んでいく。ほかのやつらの魔法はヘロヘロと進んだり、そもそも的へ当たらなかったり。あんなにきれいに当たるのは、おそらく魔力視の能力のおかげだろう。魔法を、魔力の流れに乗せることがうまく飛ばすコツらしく、その魔力の流れを見れる西宮なら、誰よりも魔法を放つのがうまいのは明らかだ。うらやましい。
「俺も・・・せい!」
ぽこんっ!と、とても小さい透明なさいころのようなものが掌の上に現れる。俺が使える空間魔法・・・現状これだけ。まじで、ナニコレ?これ投げて戦うの?時空間魔法は空間を固めて物理で殴るのがメインなんですか?魔法とは?
「大木君の時空間魔法がそれ?」
「今のところ出せるのがこれだけ。できればもっといろいろ、なんかこう、テレポートとかできればいいんだけど・・・」
「疲れた~」
俺の方に寄りかかってきた張野を受け止める。さっきの戦いで相当体力を使ったのだろうか、ぐったりしていた。ゆっくりと椅子に座らせると、そのままいびきをかいて眠ってしまう。すげぇ、こんな一瞬で眠れるなんて国民的アニメのの〇太君ぐらいだろ?何か、能力を使うことでも体力を使うのか?そこらへんも要検証だな。
「・・・でも、大木君は魔法を発動させることはできてるんでしょ?私みたいに、そもそも発動できていないよりはいいんじゃない?」
「それもそう、か?」
あとは、この小さいさいころを何個か出せる。ただ、出すたびに体力を使っている感覚がする。一つ出すと、階段を5~7段分ぐらい上ったような、なんとも言えない消耗だ。ただ、大量に出してしまうと、息が上がっていき体力を使い切るとさいころも空気に溶け込むように消滅する。
「疲れた~」
「おつかれ。誰よりも魔法うまかったな」
「まーな。正直、体力の消耗がひどいけど、魔法つかえるのって楽しいぞ?どんどんできることが増えてる感覚だな。楽しい」
そのまま、今日の訓練は終わる。俺と宮野さんは、その魔法の特殊性からミザリー先生から呼ばれていた。二人で教室に残ると、先生からいろいろ確認を取られる。俺は、今できるさいころ召喚を大量にした。体力がなくなり、消滅する寸前まで出し続けると、教室の床がさいころで埋まった。結構疲れた~。
「これが時空間魔法・・・ですか?」
「らしいです。今はこれを出すことしかできないんですけど、どうですか?」
「どう、と言われましても・・・まだわかりかねます。過去の勇者や、確認されている最新の空間魔法はもっとこう、使い勝手が良いと言われていまして・・・」
言葉を選んでいるようだが、まとめてしまえば『過去の人に比べてパッとしないね。今のところどうしようもないよ!』って感じか。泣きそう。
「私は・・・そもそも魔法を発動できていません」
「重力魔法ですか。こちらは、そうですね。近い能力を過去の勇者が持っていたようなので確認してみるといいですよ。使えれば、相当いろんな場面で応用が利きますから」
「そうですか・・・頑張ってみます」
そのまま、魔法を使えるようになるかどうかひたすら訓練をして、晩飯を食べに行く。宮野さんとも結構話す言葉が増えてきて、最近は4人で行動することが多い。たまに訓練のない日があるのだが、その日は俺が図書室に誘っている。結構集中していろんなことを読み解いてくれるため、俺だけだと時間がかかる場面が減る。
「さてと、一応みんなに確認取りたいんだけど、宮野さんどう思う?」
「いいと思うぞ?適度に周りを観察してるし、聞いてる限りだとやっぱり元の世界に帰りたいっぽいし。この国のことも不審に思ってる。このまえ大木が言ってた国ぐるみの誘拐って言葉に賛同してたよ」
「俺も~。あの人、若干堅苦しいけど嘘はついてないし、まじめそうだし。あと、重力魔法はロマン~」
ベットにダイブした張野はそういっている。こいつがそういうのなら正しいのだろう。嘘を見抜けるって相当強い。特に、誰も信用できないこの場ではなおの事。
「あとは・・・この事、説明するのどうしたもんか」
俺は、四つのさいころを召喚する。たださいころ状の四角しか出せないといったな。あれは嘘だ。各さいころを頂点とし、その間を線でつなぐ。そうすることによって半透明の板ができる。これは、ガラスのように向こう側が見え、さらに踏んでも割れない。そのため、足早や荷物置きに使えるのではないかと考えている。さらに、一度出してしまえば体力の消耗はなく、基本的に維持できる。長方形にして引き延ばし、張野を板の上に乗せると、そのまま持ち上げることができた。ゆっくり上下させると、揺れが気持ちよかったのかそのまま眠ってしまった。こいつ・・・
パッと板を消滅させると、張野はそのまま地面に叩きつけられる。鼻を摩って立ち上がると、ベットに倒れ込んだ。この魔法に何かしらの呼び名をつけたいよな。
「面を生み出す魔法ってことか?」
「そういうこと。この面は、そうだな。プレートで良いだろ。プレートはここにあるさいころ・・・これもなんか名前つけるか。キューブで良いか?キューブを頂点にして大きさを好きに設定できるし、自由に移動させられる。ほれ、台形にひし形。一つ取り除いて三角形に一つ増やして五角形。体力が続く限りいくらでもキューブは出せるし、操作には体力を使わない。ロマンだねぇ」
「なんか、使いこなしてない?」
「いや、空間はできてるけど、時空は使えてないだろ?それに、空間魔法っていえば『ストレージ』的な魔法とか、テレポートとかだろ?」
「それもそうか。頑張れ!」
あとは・・・宮野さんも今後一緒に元の世界に戻るための行動に参加してほしい。頭いいし、重力魔法がどれぐらい使えるかによるけど、相当有力な魔法だ。空間に時空、重力を思いのままに出来れば、そのうちタイムスリップとかできそう。夢のまた夢なんだけどね。
「そういう訳で、どう?宮野さん誘う?」
「いいと思うよ」
「俺も~」
満場一致で招待することになった。が、この誘いに乗るか乗らないかは宮野さん次第だが、どうなることか。明日の朝食の時間で聞いてみるか。
「あと、俺のプレート、こんなこともできるんだよ」
スゥっとプレートがキューブごと透明になる。そのまま俺の意思で動かすと、魔力が見えている西宮は大きな声をあげて驚いた。
「うぉああ!何やってんだ馬鹿野郎!」
「ダイジョブダイジョブ。透明化させてる間は物理的な干渉はしなさそうだから」
「お前これ、俺の体に重なってる途中で透明化解除したらあれだろ!?体がバッツン分離するとかそういうのだろ!物騒なことすんなよ!」
「あ~、あれか。空間切断みたいな技になるのかもな。試したことないけど」
「でもこれ、プレートって面にしかできないのか?あと四つキューブ出して立方体にしたりは?」
「・・・」
俺は無言で四つのキューブを追加で作り、プレートに追加する。その結果、西宮が言ったみたいに立方体ができた。なんていうか、より空間っぽい魔法の使い方が出来そうな大きな立方体が。これもプレートみたいに大きさは自由。直方体もできるし、三角錐とかもできる。それを見た西宮は俺の後頭部をはたいてきた。いや、なんていうか俺の想像力不足ですんません。
「ん?あ、これすげぇ!」
大きな立方体をそのまま透明にしたり拡張したり、少し遊んでいると面白い発見があった。拡張すればするほど魔力を使うらしく体力が消耗するが、立方体の中にある物体を感知することができた。空間把握が可能になっている、らしい。ただ、今の体力だと今俺たちがいる部屋の大きさと同じぐらいにすると、すぐに体力がなくなっておよそ5分と立たずに魔法が切れてしまう。これ、もっと体力つけるべきか?
「なんか、お前の魔法今のところ微妙だな」
「おだまり!そのうち絶対使える魔法にしてやるからな!」
まだ空間を把握するぐらいだし、大きさも時間もあまり持たないが、多分、伸びしろはある。そんなことを思いつつ俺は張野をベットから降ろし、西宮と俺の並びでベットを使う。あれから、俺たちは同じ部屋で寝るのだが、ベットの使用はローテーションで使用している。が、なぜか朝になると全員ベットに入り、なんだったら張野が俺たちにのしかかっている。そのたびに降ろすのだが、気が付くと俺がベットから降ろされていた時もある。
翌日、朝食を食べている途中で俺は宮野さんに元の世界に戻ろうとするって話を伝えた。周りに聞かれないようにこっそり伝えると、ぜひ、と賛同してくれた。ちなみに、その時俺の時空間魔法の練度を話すと悔しそうにしていた。魔法が使えないと思っていた同志が、実は結構使えるようになっているとしって悔しいのだろう。まあ、ここはそのうちできるようになるだろ。
「それにしても、三人が一緒に行動してたのは、あんまりその思惑がばれないようにするためだったのね?」
「そうそう。宮野さんとかは結構口が堅そうだし、張野が大丈夫そうって言ってたから。決めてはそこだけど」
「張野君の能力ね。便利ね~」
使えるキッチン道具を見つけた主婦みたいな反応。できれば、少し手伝ってもらいたいこともある。その旨を伝えると、乗り気になってくれた。今日は訓練がないため、ミザリー先生の所へ行くと何やら書類をまとめていた。ちらりと見ると、メインの戦力となる勇者の戦力のまとめだった。結構ちゃんと見てるんだな。
「ミザリー先生、俺たちが呼ばれた召喚陣?っていえばいいんですか?それ、見させてもらえません?」
「なぜですか?」
きりっとした視線で見られる。この人、若干目つき悪いから怖いんだよなぁ。俺はどちらかと言えば綺麗系よりかわいい系のほうが好みだし。
「別の世界から人を呼び出す魔方陣なんて、どう見ても時空間魔法に関わりがありそうで。まだ小さな四角しか出せない俺が、もっとみんなのために何かできないかな~と」
「私も、元の世界だと重力と時間は切っても切り離せないものでした。その観点から、何かわからないかと思いまして」
「なるほど。本来であれば国家機密なので見せることはできないのですが、あなた達の魔法は確かに特殊ですし、使えれば有力でしょう。わかりました。少し待っていてください。確認を取ってきて、許可が出ればご案内します」
「「ありがとうございます」」
ミザリー先生の部屋から出て、少し待っている。先生が戻ってくるのは少し時間がかかるだろうな~と思っていると、宮野さんからにらまれた。
「大木君、嘘つくの上手ね」
「そう?」
「そうでしょ?何が小さな四角しか出せない~なの?あんな、どう見ても空間魔法!って感じの魔法を使っておきながら・・・」
「もしかして、魔法つかえないって伝えてたの怒ってる?」
「私・・・まだ魔法つかえないから・・・」
うつ向いてしまった。いや、素直にこんなに魔法つかえるって教えるには信用できないからな。もし変に魔法を使えるって教えて使いつぶされたらと考えると恐ろしい。しかも、時空間魔法は使い手が今まで存在していないらしいし、空間魔法の時点でも使用者は少ない。
「ま、重力魔法もきっとその内使えるようになるでしょ」
「そうなればいいわね~」
「お待たせしたわね。許可が下りたからついてきて」
ミザリー先生についていくと、俺たちは最初に召喚された部屋に連れられた。中央にはとんでもなくでかい魔方陣があり、確かにこの広さなら50人近い人間を収容できるけど・・・なぜか無性にイライラする。この魔方陣がなければ、俺たちはこんな世界に呼ばれていなかったのだからそう思うのも仕方ないかもな。まだ読みかけの漫画も、遊ぶ約束してたほかのクラスのサークルの友達も、全部おいてきてしまった。家族も、友人も。何もかもを置いてきた。
「これが・・・」
「複雑だけど、これ・・・プログラムに近い気がする」
「プログラム?ゲームとかの?」
「ああ。俺、友達がそういうのやってて、少し手伝うために勉強してた時期もあるんだよ。資格も持ってるし」
「そうなの!?なんていうか、勉強とか苦手そうだなって勝手に思ってたわ」
「苦手だけど、好きなことに関しては別だよ。それよりこの魔方陣、ノートに写せそう?」
「難しいけどやってみるわ」
もくもくと模写していく中で俺は魔方陣の中身を読み解いていく。内容は・・・読み取れない。この世界の言語は勝手に翻訳されて読めるはずなのに読めないのは、おそらくこの魔方陣が人間の言語で書かれていないからなのだろう。説明では、かつての龍族が残した遺物って感じだったし、龍の言語なのだろう。ただ、所々見たことのある文字が書かれている。日本語ではないが、これは・・・ローマ字だな。『TENI』とか、『YUSYA』とか。なんでローマ字?と思うが、勇者以外に偶発的にこの世界に来た人がいてもおかしくない。あれだ、神のミスでとか、偶然とか。よくわからないが、読み解ける部分を読み解き、その間にある言葉を予想する。
「大木君どう?何かわかった?」
「あんまり。模写は?」
「できたわ。なんか所々、ローマ字入ってない?」
「それな。まあ、解読はもっと時間かけて行うか」
ミザリー先生に感謝を伝え、俺たちは部屋に戻る。流石に男子部屋に宮野さんを呼ぶわけにもいかず、一応何かあったら伝えてくれと入っておいたものの、やっぱりスマホ的な通信機器がないのは不便だよな。連絡とりたいけど、聞いた限りそういった道具もないらしいし。
「てなわけで、着実にこの国から逃げ出す準備を整えよう。できれば、魔物との戦闘中でごたごたすると思うし、その時にどさくさに紛れて逃げましょう。俺もそれまでに地理とか収納ができるように魔法調節するから、みんなも頑張ってな」
「うい~。俺は水魔法が使えるようになるのと、魔力視のオンオフの訓練だな」
「俺も、看破のオンオフ訓練する~」
そろそろ、覚悟を決めるべきか。正直見ず知らずの土地で立った4人とかめっちゃ怖いけど頑張るしかない。あとは、道中で俺の時空間魔法を昇華させて元の世界に帰れるようになるのと、できれば勇者召喚の魔方陣の解読。龍族とやらがいたら話を聞きたい。半分以上の言語がおそらくこの龍族の言語のため、俺たちだけで解読するのは骨が折れるだろうからな。
「何事もなくいければいいな~」
「フラグか?やめろよな」
張野の背中を踏みながら西宮がそういうが、本当に何事もなければいい。祈るしかないのが心もとないな~。