第7話 不穏の前兆
「ゴブリンの常駐依頼を受けてきた。討伐証明の確認を頼む」
「かしこまりました。少々お待ちください」
魔の森から王都に戻ると殆ど日が落ちかけていた。こんな時間だから夜は真っ暗かと思ったが意外なことに王都では至る所に明かりが灯されていた。
受付のミリムにゴブリンたちの魔石が入っている革袋を渡す。袋を受け取ったミリムはギルドの奥に持って行く。そういえばどうやってゴブリンの魔石だと確認するのだろうか。宝石職人のように専用の役職の人間が常駐しているのか。
「ギルドには必ず鑑定士のジョブをもってるやつがいてな。そいつが1つ1つ確認してるんだ。だから誤魔化そうとなんて考えるなよ」
「その情報には感謝するが暇なのかあんたは? 試験官なんだろ」
「まあ試験官ってのは俺の数ある顔の1つよ」
いつの間にか近くに寄ってきていたギルバートが俺の心を読んだかのように疑問に答える。いや本当に読んだのかもしれない。読心とかそんなスキルがあってもおかしくない。
「ところで魔法スキルを覚えるにはどうすればいいんだ?」
「それなら魔導士ギルドに行ってみな。あんまりおすすめしないがな」
「なぜだ」
「あいつらゴリッゴリの選民思想だからな。ただの冒険者が行っても追い払われるぞ」
それは困ったな。王女のレーティアに頼むか? しかし今さら戻ってまた頼みをするというのは正直かっこ悪い。俺が魔術を見せてもらった宮廷魔導士の弟子って嘘を言うか? 実際に魔法は使えるわけだし。だがそれはバレた時に面倒くさいし直ぐにバレるだろう。
「キョウヤさん。魔石の鑑定が終わりました。ゴブリンが20にホブゴブリンが2ですね。もしかして森の奥に行きましたか? ホブゴブリンは外縁部にはあまり出てこないはずなんですが。それを2匹も狩ってくるなんて」
「いやそこまで奥には行ってない。それにそのホブは2匹一緒にいたんだ。運がよかったんだろう」
言ってからしまったと思う。俺の申告しているスキルでホブを2匹もどうやって倒したのか聞かれるかもしれん。まだホブの実力もよくわかってないからな。しかし予想に反して2人ともどうやって俺がホブを倒したのかは興味がないらしく寧ろホブが2匹で行動していていたことに違和感を覚えているようだ。
「なあキョウヤ。そのホブは2匹でいて手下のゴブリンを連れていたか?」
「ああ。なんか大声で命令していたな」
「それは……不味いかもしれんな」
ブツブツとなにか言いながらギルバートは受付の奥へと引っ込んでいった。どうしたんだ一体?ホブを倒したことは普通なのに2匹一緒にいるのが問題というのはどういうことだろうか。
「キョウヤさん。ホブゴブリンは普通群れに1匹なんです。群れに自分と同じホブがいるといつ反逆されるかわからないですから。けれどキョウヤさんが見たホブは2匹も一緒にいてゴブリンに指示を出していた、要するに群れを作っていたわけですね。これはつまりホブよりも凄く強い魔物が群れの長にいるということが考えられます」
「なるほど。そいつからしたら自分より弱いホブに反逆される心配もないから群れに複数匹いても平気と」
「はい。ホブを手下にするということはゴブリンの上位種、チャンピオンやジェネラルが考えられます。森の奥に大きな群れが出来てるかもしれません。ゴブリンはあっという間に数が増えますから。ゴブリンシャーマンと言うこともありえますがただのシャーマンはホブを2匹も部下に出来ません。その場合特別強いシャーマンということになります」
なるほどな。ゴブリンチャンピオンにゴブリンジェネラルね。この様子じゃゴブリンキングとかもいそうだ。それにしてもゴブリンシャーマンか。魔法を使うゴブリンなのか? 自分が使ってホブを倒したからわかるが魔法というのはかなり強力な力だ。使うまでに少し時間がかかるが優秀な前衛もしくは肉の盾があれば解決する問題だしな。
「おい坊主気が変わった。こいつを魔導士ギルドに持ってけ。話ぐらいは聞いてくれんだろ」
「なんだこれ。手紙か?」
ようやく奥から戻ってきたギルバートから手紙を受け取る。地球にあるものよりもゴワゴワしているが立派な紙だ。ちゃんと封蝋も押されている。
「紹介状みたいなもんだな。これ見せればあの婆も少しは優しくなんだろ」
「あんたそんなに偉い人だったのか、もっと胡麻すったほうがいいか?」
「今さら気持ち悪いことすんなよ」
「冗談だ。とりあえず明日の朝にでも行ってみる。今日はもう疲れた」
俺は懐に手紙をしまうと宿屋に向かった。夕食は宿で出ることになっている。地球のものと比べて不味すぎないといいがこの文明レベルではあんまり期待できんな。
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