第5話 初めての戦闘
城門を抜けて暫く進むと森が見えてきた。魔の森と呼ばれており内部には非常に多くの魔物が住んでいるらしい。特に中心部には町を滅ぼせるようなレベルの奴が生息してるらしいのだが殆ど外には出てこないので今のところは問題にはなっていない。じゃあなんでこんな森の近くに王都を作ったのかという話になるがどうやらここ数十年で出来た森らしい。これも魔王復活の影響だとか。
「外縁部にはゴブリンなどの弱い魔物しか出ないので初心者冒険者にも安心って話だが俺は初心者冒険者どころか初心者異世界人だからな。生き物解体とかやったことないぞ」
討伐証明になる魔石は種族ごとに場所が決まっている。大抵は体の中心近くか心臓にあるらしい。魔石を手際よく取れるのも優秀な冒険者の条件とのことだ。あまりに手こずるようならどこかで勉強したほうがいいだろう。いやそういえば字も読めるようにならないとな。文字が読めないのは不便すぎる。代筆に金がかかるならそれを勉強するのにはもっとかかるであろうことが予想できる。何をするにしても金か。
「よし周りには誰もいないな」
少し森の中に入り誰もいないことを確認する。これからやることは出来れば見られたくないのだ。尤も恐らく危惧したようなことにはならないだろうが。
「長谷川はこんな感じだったか。来いクラウソラス!!」
しかし数秒待ってもあの時のように俺の手に光が集まることはなかった。薄々予想できたことではあるがやはり無理か。ステータス上では聖剣召喚クラウソラスという表記は暗くなっている。ゲームなどではこういう状態のアイテムやスキルは使えない。どうやらこの世界でもそうらしい。理由として考えられるのは真の使い手である長谷川がいるから、もしくは聖剣というだけあってジョブに勇者がないといけないとかか。使用に条件があるスキルが存在するというのは注意が必要だな。うっかりコピーしてしまうと枠を無駄に一個消すことになる。
「ゴウッ! グブルグレ!!」
「ギャウ!!」
俺がそんな考察を続けていると森の少し奥から醜い声が聞こえた。これは会話をしているのか? そっと覗いてみるとそこには緑色の肌と小汚い身なりをしている小鬼2匹がいた。
「あれがゴブリンか。漫画とかに出てくるのと一緒だ。ここまで色々似ているとこっちの世界から地球にいったやつがいるのかもしれないな」
しばしゴブリンを観察しているとスンスンと匂いを嗅ぐようなしぐさをしたあと一匹が俺が隠れている茂みを指さした。バレたか? 森で暮らしているなら鼻や耳がいいことを考えておくべきだったな。
「ファイアーボール!」
「ゲウゥゥ!!」
咄嗟に火の玉を放つイメージをしながら火魔法を使う。すると突き出した手から俺がイメージしたものより少し大きな火球が飛び出て俺を指さしたゴブリンを包んだ。もう一匹はそれを見ると仲間を置いて一目散にげ出す。
「逃がすか! フンッ!!」
足元にあった石を拾いゴブリンの頭めがけて投げると石は想像以上の速さで飛び胴体にドンッという鈍い音と共にあたった。剛力レベル5の投石を受けたゴブリンはもんどりうって倒れこむ。しかしまだ死んではいないのか必死に立ち上がろうと藻掻いている。
「すまんな死んでくれ」
急いで近寄ると先ほど買ったばかりの剣を心臓に突き刺す。一瞬痙攣するとすぐにゴブリンは動かなくなった。あんまり強くなかったのは助かったな。しかしファイアーボールなんてつい言ってしまったが本当にそれで魔法が使えるとは。スキルの使い方はラーニングで覚えた時点でなんとなく理解できるのだがそれでも実際に火の玉が出ると感動する。
「さて初めての解体と行きますか」
道具屋の親父に教わったことを思い出しながらゴブリンの体にナイフを入れていく。幸いそこまで苦労することなく魔石は見つかった。真っ黒で大きさはビー玉くらい。より魔力が強くなる程大きく、透明になっていくのだがゴブリンは最下級の魔物とあってこんなもんか。続いて俺が魔法で焼いたほうも解体を行う。
「ん? こっちのほうが少し大きいな。同じ種族でも魔石の大きさとかは変わるのか」
俺に気づいたゴブリンの方がもう一匹より強かったのか? まあ同種族でも個体差があるのは人間を考えれば当然か。ゴブリンは見た目が同じにしか見えないから考えつかなかった。しかし一日の宿代を稼ぐためにはこいつらを50匹か。もらった金を預けるためとはいえもっと高額の依頼を受けれるようにならないと金は減るばかりだな。
「初日だし無理せず頑張るか」
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