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第42話 京也の弱点

お久しぶりです。

投稿が滞ってしまい申し訳ございません。

また1週間ごとに投稿できるように頑張ります。

「やぁ!!」


「ハァ!」



 フィーの拳による連撃をなんとか回避しながら棒を突き出し距離を取る。しかし手元に戻そうと引いた瞬間フィーも前に出て俺の懐に入り込んでくる。引き戻し切っていないから再びつくことは出来ない。そもそもこの距離は相手の間合いだ。一刻も早く離れなければ。鼻先ではフィーが右手を大きく振り上げ俺の顔目掛けて振り下ろそうとしている。



「ッシ!!」



 ここだ! そう考えて下から棒を跳ね上げ、狙うは拳を空けたことで隙が生じた脇腹。相手が怯んだ隙に下がって距離を取る。そう考えた直後俺の手に強い衝撃が来て棒が弾かれる。フィーが振り上げていた拳は俺の顔ではなく棒の軌道をずらすのに使われていた。


 お互いに攻撃の一手が無駄になったのは同じだがその結果が違う。俺は思わぬ反撃にあい態勢が崩れているがフィーは最初から予期していたのか右手を振り下ろした勢いも加えて左腕を唸らせている。



「グッ!!」



 当然その攻撃を避けられるはずもなく顔面にいいのをもらった俺はその場で倒れる……のをなんとか回避しバク転して、少し離れたところで立ち上がる。さてここから仕切り直し、とはいかない。先ほどまでの組み手は一本先取というルールだ。先ほどの一撃はこれ以上ないほどの一本だ。



「やった!! 勝った!!」



 フィーがピョンピョン跳ねながら喜ぶ。その無邪気な様子は見た目とのギャップもあり可愛らしい……とは俺は言えなかった。なんせここ数日毎日これを見させられているのだ。今俺とフィーがやっている組み手はフィーが素手、俺が2mほどの棒を使ってやっている。そして俺はこの組み手を初めてから連敗中だ。まだ一度も勝てていない。



「おかしな男じゃの。あれだけの剣と格闘術の腕前がありながら棒術はからしきとは。普通ある程度武術を修めたものは他の分野でも応用を利かせるものじゃが」



 アトゥが呆れたように呟く。彼女の言うことはよくわかる。例えばテニス部の人間に卓球をやらせてみると上手にプレイする。そうじゃなくても素人よりも格段に早くコツを掴むものだ。俺にはそれがない。現時点での俺の能力は



四宮京也 男 16歳 


ジョブ:なし


スキル:ラーニング レベル7

    :ライト レベル3 

    :癒しの風 レベル4

    :瞬発 レベル6

    :聖剣召喚クラウソラス レベル1

    :剛力 レベル7

    :剣術 レベル7

    :水魔法 レベル7

    :炎魔法 レベル5

    :風魔法 レベル5

    :精気吸収 (エナジードレイン)レベル4

    :素手 レベル7

    :身体操作 レベル7

   :土魔法 レベル3

   :纏魔導(スレイマジック) レベル3

   :鑑定魔法 レベル4



 この通りだ。先ほどアトゥが言った剣術や素手のスキルは両方ともラーニングで他人からコピーしたものだ。それにおいては俺はスキルレベルに相応しい強さを持っているだろう。しかし一度スキルの恩恵を受けられなくなれば一気に弱体化する。例えば剣士は剣を持っていなくても足さばきの動きをすることができるだろうが俺は出来ない。剣を手放した瞬間どう動けばいいのかわからなくなる。それでも身体操作や素手があるから無手になった瞬間素人同然になるわけではない。


 言うならば俺は答えを手に問題を解いているような状態なのだ。相手の動き、問題に対する答えは分かるがなぜその答えになるのかはわからない。だから問題は解けるがそれが応用問題になったり、回答を分解して別の問題に使うとなると途端に何もできなくなる。



 これはかなり不味いことだ。今まで、エルフの里に来るまではなんだかんだなんとかなっていた。ゴブリンの親玉も、ワイバーンも倒してきた。しかし妙な覚醒をした長谷川には1人では勝てなかっただろうし、アトゥには俺が100人いても敵うとは思えない。流石にアトゥレベルがわんさかいるとは思えないがこの二つの事例は思い上がっていた俺の鼻っ柱をへし折るのに十分だった。



 ラーニングという特別な力を授かり、その力で快適な異世界ライフを送って来てはいたが所詮こないだまで平和な日本の高校生だった俺だ。このままでは何かあればあっさり死んでしまう。だからといってラーニングで片っ端からスキルをコピーするのも根本的な解決にならない。そもそもこないだぶっ倒れたことからしてラーニングがまったくのノーリスクと考えるのは虫がいい話だ。いままでそれに思い至らなかったのは浮かれていたのか、唯一異世界で頼れる力を疑うのが怖かったからなのかはわからないが。


 とにかく力不足とラーニングに頼ることの危険性を理解した俺は基本から修行をしなおすことにしたのだがこれが想像以上に難しかった。なんせ剣をもつとどう動けばいいのかわかってしまう。しかし何故そう動くのが正解なのかはわからないのだ。つまり剣術の訓練は出来ない。


 同じ理由で素手もダメ。棍棒や斧は力自慢とお世辞にも言えない俺には不向き。よってまずは大けがをする危険も少ない棒術を使うことになった。棒術自体はアトゥが使えるようで彼女に教えてもらっている。最も彼女は棒術に限らず剣も槍も斧もなんでも使えるらしい。


 吸血鬼とかエルフとか長寿の生き物が生来の能力ではなく人間の技術を極限まで高めて無双するのは物語としては好きだが、実際やられると空恐ろしいものがあるな。その力が俺に向くことがないといいんだが。

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