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第38話 治療の効果


 休憩から数時間後。魔力回復ポーションの力もあり飯田の魔力はフル回復していた。ドラゴンも魔力がなければどうにもならないと理解していたのだろう。特に脅されたり急かされることはなかった。しかしその分じっとこちらを見てきて無言の圧力をかけてきたので居心地が悪いことこの上ない。



「準備いいか飯田」


「うん。今度こそクローネさんの病気を治すよ!」



 飯田には俺がやることを全ては教えていない。ただ先ほどと同じように奇跡の御手を使用してくれと言っただけだ。しかしその目に不安や不信は浮かんでおらず俺のことを信じているようだ。そこまで知りもしない俺のことをここまで信じられるのは流石聖女といったところか。


 2人でクローネの鱗に手を触れる。最初に飯田の手が輝きクローネの体を覆いその内部へと浸透していく。しかし先ほどと同じように途中でその光は止まってしまう。



「やっぱり私じゃこれ以上は」


「任せろ」



 続いて俺も奇跡の御手を発動。飯田の光を後ろから包みドラゴンの体の中、魔石へと押していく。スキルのレベル自体は飯田と同じだが、当然スキルを扱う技術では彼女の方が上だ。なので俺は背中を押し、細かい魔力の制御は彼女が行うこの形が一番いいだろう。



「頑張れキョウヤ!!」


「イイダさんあと少しです!」


「頼むぞお主ら!」



 俺と飯田2人分のスキルの力で徐々にだが魔力は魔石の中へと押し込まれていく。このまま行けば特に問題なく治療できそう、と思った瞬間急に魔石から魔力が出てきて奇跡の御手の光を押し返した。突如病状が進行した、のではない。俺の魔力切れだ。想像以上に魔力消費が多い。一度休んで回復したいところだが今手を緩めると押し込めた魔力がまた出てきて振出しに戻る。何故かそう理解出来た。

 どうすればいい? そう考えた瞬間まるで俺の思考を読んだかのようにアンが俺の腕を握った。



「キョウヤ私の魔力を使ってください。使えますよね精気吸収(エナジードレイン)


「アンには敵わないな。けれど……助かる!」



 手以外で精気吸収(エナジードレイン)を使うのは初めてだが、アンに握られた箇所がまるで熱を持ったかのように熱いのですんなり発動することが出来た。もしかしたらアンが気を利かせて火魔法で少し手の温度を高くしたのかもしれない。……そうに違いない。



「このまま押し込むぞ飯田!」


「了解、四宮君!!」


 

 一度は押し戻された奇跡の御手だが飯田と俺、そしてアンの魔力で再び押し込んでいく。そしてとうとうガン! というまるで硬い岩盤に当たったかのような音とともに魔石の中へ魔力を入れることに成功した。



「どうだ!? クローネは、クローネの病は治ったのか!?」


「ハァハァ……はい。なんとか……治り……ました」


「本当か! 本当なのか!?」


「本当……だ。噂通りなら……滅茶苦茶強い……ドラゴンになるんじゃないか」



 俺と飯田は息も絶え絶えでその場に座り込んだ。かなりキツイ。以前婆さんに魔力切れで気絶させられたが、気絶出来ない分今の方が辛い。

しかしその辛さも今のドラゴンの顔を見れば無駄ではなかったと思える。あれだけ冷たそうな表情をしていた彼女が今は涙を溢している。当然俺はまだ子供を持ったことはないから想像でしかないが、死にそうだった娘が助かったのだ。もしかしたら娘が産まれた瞬間よりも嬉しいのかもしれない。



「イイダもキョウヤも凄い! あんな凄いスキル使えるなんて!!」


「そうだね。四宮君にあんな力があったなんて」


「それに関しては約束通り頼むな」


「勿論。秘密、だよね」



 敢えてスキルの正確な能力までは教えないがおおよそはバレてしまっているだろう。まあ重く考えすぎても駄目だ。

 俺たちが達成感に浸っているともぞりとクローネが起きあがった。大きく口を開けてあくびをすると母親を見つけてその顔に鼻先をこすり付けた。



「クローネ! ああ……よかった。本当によかった」



 その後も暫く母親に甘えていたクローネだが俺たちの存在に気付くとそろりそろりとこちらに近寄って来た。そして最初に飯田に、続いて俺に頭をこすり付けて来た。やっていることは猫と同じだがなんせそのサイズは自動車並みだ。踏ん張りがきかずにその場に尻もちをついてしまった。



「なんとなく覚えているそうだ。お主ら二人の魔力が自分を治してくれたとな」


「ほんと? まだ痛いところとかない?」


「そうかそうかお腹が空いたか。ちょっと待ってろクローネ」



 あの状態がしばらく続いていたなら胃の中は空っぽだろう。ドラゴンは急いで洞窟の奥に行くと熊の足を引きずって戻って来た。見た目は人間の女性だが中身はあのドラゴンだ。姿かたちを変えたからと言って弱くなるわけではないらしい。



「ほら沢山食べるんだよ」



 熊の死体を目の前に置かれたクローネは大喜びで食べ始めた。ヒグマほどのサイズが瞬く間に胃袋へと消えていく。とんでもない食欲だ。その豪快な食べっぷりにフィーのお腹が大きくなった。



「おいしそう」


「後で沢山食わしてやるから取ったりするなよ」


「むう。フィー人のご飯とったりしないよ」


「涎が垂れてるぞ」



 慌てて涎をぬぐうフィー。その横でアンもお腹を撫でていた。グルメな彼女のことだ。どう料理したら熊肉が美味しくなるのか色々想像しているのだろう。



「そうだ。娘の病気を治してくれたのだ。なんでも言ってくれ。我の出来ることならなんでもするぞ」


「それなんだが少し待ってもらっていいか。先にエルフの里に戻って解決したことを伝えておきたい」


「そうだね。龍吾君も心配だし」



 既に長谷川は目を覚ましているだろうか。里に戻ったら再び暴れた長谷川と橋本たちの戦いで里に大きな被害が、なんてことになっていないといいんだが。



「ならば里まで転移で送ってやろう。安心しろ礼には含まん。サービスというやつだ」


「助かる。因みにここを出ていくのどれくらい時間がかかる?」


「そう時間はかからんな。不思議なことに長い間臥せっていたクローネもそれほど消耗しておらん。腹を満たせばすぐに動けるようになるだろう」


「わかった。じゃあ飛ばしてくれ」



 数日間はかかると思ったがそれならエルフ達も認めざるをえないだろう。俺たちがドラゴンを追い払ったことを。長谷川たちとも話はついている。まあ長谷川はごねるかもしれないが他のメンバーは全員俺たちの味方だ。無事星屑の杖も手に入れられそうだ。



「ありがとうございますキョウヤ、フィー。私のために色々と」


「言いっこなしだろ。王都じゃ俺のほうが色々教わったし、倒れた時はフィーと2人で助けてくれただろ」


「お互い様、アン! 助け合い大事ってトトさまも言ってた」


「お母さんの形見だもんね。もし龍吾君が何か言っても私たちに任せてね!」



 飯田が拳を握りしめて宣言すると同時に俺たちはエルフの里に転移した。



「面白い!」



「続きが気になる!」



そう思っていただけたら



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